「1935」 古村治彦(ふるむらはるひこ)の最新刊『悪魔のサイバー戦争を始めるバイデン政権』が発売 2021年5月19日
※今日のぼやき広報ページ「1932」番、「1929」番には副島先生が加筆修正をしています。画面右側の番号を押してお読みください⇒

 SNSI・副島隆彦の学問道場研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)です。今日は2021年5月19日です。
 今回は「今日のぼやき」広報ページで私の新著の宣伝をします。古村治彦の最新刊『悪魔のサイバー戦争を始めるバイデン政権』(秀和システム刊)が2021年5月29日に発売です。私にとっては3冊目の、そして久しぶりの単著です。

悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

 最新刊『悪魔のサイバー戦争を始めるバイデン政権』の内容について少しご紹介します。ここから言葉を改めます。

 この本で私の言いたいことは、バイデン政権でアメリカは中国とロシアに対して戦争を仕掛ける準備を行うということだ。その戦争は旧来のミサイルとか戦闘機を使った戦争ではなく、サイバー戦争だ、そのために「新・軍産複合体(Neo Military-Industry Complex)」作りが進められているということを証拠付きで明らかにした。

そのキーパーソンがミッシェル・フロノイ元国防次官であり、フロノイが、バイデンの側近で元国務長官アントニー・ブリンケン国務長官が一緒に設立したウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社(WestExec Advisors)である。

 その他にもダヴォス会議(世界経済フォーラム、WEF)で進められている「グレイト・リセット(Great Reset)」とバイデン政権の関係、アメリカ国内におけるポピュリズムの勃興、アメリカ国内の分裂について幅広く分析を行った。詳しくは是非本書を読んでいただきたい。

以下にまえがき、目次、あとがきを貼り付けます。参考にして、是非手に取ってお読みください。

(貼り付けはじめ)

   まえがき

 ジョー・バイデン政権は「4年越しで成立したヒラリー・クリントン政権であり、第3次オバマ政権」である。そして、「サイバー戦争を推進する」ための政権だ。これは少しも大げさな話ではない。誰でもアクセスできるマスメディアの報道や情報を分析すればこういう結論になる。

 アメリカ国民は2016年の大統領選挙で、海外での戦争を引き起こすことになったであろう、危険なヒラリー・クリントン政権誕生を阻止するという素晴らしい決断を下した。しかし、4年後の2020年、バイデン政権が誕生してしまった。バイデン政権は、発足直後から、好戦的で危険な姿勢を見せている。

何故(なぜ)このような危険な姿勢を示しているのか。その理由は極めてシンプルでかつ明確だ。バイデンはお飾りに過ぎず、この政権は実質的にはヒラリー政権であるからだ。だから、4年遅れで世界全体が戦争に向かっているのだ。

 バイデン政権で外交政策の舵取りを行う、アントニー・ブリンケン国務長官は、2021年3月3日、国務長官就任後の初めての演説で、中国を「今世紀における地政学上の最大の試練 the biggest geopolitical test of this century 」と呼び、同盟諸国との連携を強化して、中国と対峙すると述べた。

米国側のアントニー・ブリンケン国務長官とジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官、中国側の楊潔篪(ようけっち)中国共産党外交担当政治局員と王毅(おうき)外交担当国務委員兼外交部長(外相)による外交関係のトップ会談が3月18日にアメリカ・アラスカ州アンカレッジで開催された。この会談は非難合戦となった。

 ブリンケンは「ルールに基づいた秩序に取り替わるのは勝者が独り占めする世界であり、はるかに暴力的で不安定な世界であろう。米国は新疆(しんきょう)、香港、台湾、米国に対するサイバー攻撃、同盟国に対する経済的強圧など、中国の行動に対する我々の深い懸念について話し合うだろう」と中国側を非難した。

一方、楊潔篪は「米国の人権は最低水準だ。米国では黒人が虐殺されている。米国が世界で民主主義を押し広めるのを止めるべきだ。米国にいる多くの人が米国の民主主義をほとんど信頼していない」とやり返した。中国側は売られた喧嘩ということで仕方なく立ち向かっている。中国メディアではバイデン政権の好戦的な姿勢について戸惑いを交えながら報道している。

 アメリカ国内でアジア系の人々に対する、人種差別を理由とする暴力事件が多発している。アジア系の人々に対する差別感情と憎悪感情の激化は、新型コロナウイルスが中国発であるとされていることに加えて、バイデン政権の攻撃的な対中姿勢が影響している。太平洋戦争開戦前から戦時中にかけて、アメリカ国内で発生した日系人に対する差別や暴力と同様の状況になっている。アメリカ国内は戦争前のような状況だ。


 ロシアに対してはバイデン自身がかなり攻撃的な姿勢を見せた。
2021年1月26日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領との大統領就任後初めての電話会談で、バイデンはロシアによるアメリカ国内の選挙介入について言及し、「国益を守るために断固とした対応を取る用意がある」と発言した。

 また、2021年3月17日のABCテレビとのインタヴューの中で、「ロシアのプーチン大統領は人殺しだと思うか」と質問され、「そう思う」と答えた。ロシア側は反発したが、バイデンはこの発言について謝罪も撤回もしていない。

 トランプ大統領時代には、トランプ大統領の発言を微に入り細に入り報道し、徹底的に批判してきたメディアもバイデンの「プーチンは人殺し」発言についてはまったく批判していない。プーチンが殺人者であるかどうか確たる証拠もなく、そもそも裁判での有罪判決も受けていない人物、しかも一国の大統領を殺人者と呼ぶというのは、外交儀礼から見て、大変無礼な話だ。

相手を「交渉相手」や「連携相手」としてではなく、「敵」と認識していなければこういうことは言えない。アメリカの主要マスメディアも、中国とロシアを「敵」認定し、その流れに沿う発言や行動ならば、無条件で報道する。その結果、アメリカ国民の中に、そうした報道に踊らされて、中国とロシアに対して敵愾心(てきがいしん)を燃やす者たちが出てきている。

 バイデン政権は、中国とロシアに対して、このように攻撃的な姿勢を取っている。2016年の大統領選挙直後から、「トランプ大統領が大統領になれば世界で戦争が起きる」「世界大戦勃発の危機だ」などと煽(あお)っていた日米の有識者たちは、2020年の大統領選挙でバイデンを応援したが、バイデン政権のこの好戦的な姿勢について押し黙ったままだ。

トランプ政権での4年間で、世界大戦も起きず、アメリカが外国に兵隊を出すということもなかった。トランプ大統領は「アイソレイショニズム」を掲げ、アメリカ軍が関わる大きな戦争は起きなかった。トランプは公約を守った。そのトランプ大統領を追い出してみたら、戦争がやってくる、それに日本が巻き込まれるということを、バイデンを応援した人々は望んでいたのか。バカバカしくて、言う言葉もない。

 バイデン政権の危険はすでに予言されたものであった。2015年3月、私の先生である副島隆彦が『日本に恐ろしい大きな戦争(ラージ・ウォー)が迫り来る』(講談社)という本を出した。2015年3月の時点ではまだドナルド・トランプは大統領選挙に出馬会見をしていない。この時期、共和党側には有力な候補がおらず、「2016年の大統領選挙では民主党のヒラリー・クリントンが当選して、女性初の大統領となる」というのが大方の見方であった。

『日本に恐ろしい大きな戦争(ラージ・ウォー)が迫り来る』で副島隆彦は、ヒラリー大統領誕生で、アメリカは大規模な軍事行動を起こし、戦争が起きるだろうという予測を立てていた。トランプ大統領当選というアメリカ国民の英断で、その危険は回避された。しかし、残念ながら、2020年にジョー・バイデンが大統領に当選してしまった。そしてこれは、「4年越しのヒラリー政権」の誕生である。世界の流れが再び戦争に向かって進んでいるということになる。

 私は世界が戦争に向かっていると書いたが、すでに全世界は戦争状態にある。
世界中で、新型コロナウイルス感染拡大防止ということで、生活が大きく制限されている。日本国内で官民を挙げて「新型コロナウイルス感染拡大との戦い」という大義名分を掲げ、「これまでの生活を変えましょう、新生活様式(ニュー・ノーマル)を採用しましょう」ということで、マスクをしての外出、夜の外食ができない状況、イヴェントの開催中止や縮小が1年以上も続いている。新たにネオンサインなどの消灯も始まったが、戦時中の灯火管制そのものだ。

 麻生太郎財務大臣兼副総理は、今年の3月に記者たちに対して、「いつまでマスクをしな
くちゃいけないんだ」と逆質問したことが話題になった。自分が政権の枢要を占めているのに、何と能天気で無責任な発言だと呆れる一方、「いつまでマスクをしなくてはいけないんだ」というのは非常に素直かつ正直な感想である。

私たち一般国民もまた同じだ。太平洋戦争中の有名なスローガンに「欲しがりません勝つまでは」という言葉があるが、そのような我慢を強いられている。しかし、私たちは、同時にこの我慢を自ら進んで、幾分かは喜んで受け入れている部分がある。

 2020年1月頃から日本でも新型コロナウイルス感染拡大のニュースが出始めた。中国の武漢では大変な状況だということから、やがて横浜港に停泊するクルーズ船内での感染拡大というニュースが連日報道されるようになった。そうしているうちに日本国内でも感染者が出始め、マスクが手に入らない状況となった。この時期、世界保健機関(WHO)や一部の専門家たちは、「マスクは感染防止のためには有効ではない」ということを盛んに述べていた。

 その後、マスクが何とか手に入るようになると、マスクは飛沫防止のためには効果があるということになった。人が密集していればマスクをするのは良いだろうが、人が多くない時間帯に散歩をしたり、ジョギングをしたり、そんな時でもマスクをしなければ、すれ違う人たちから非難の目で見られたり、マスクをしない理由を詰問されたりする光景は異常である。

私たちはいつの間にか、自分たちから進んで、何の疑問を感じることなく、不便な生活を自分から選び取るように仕向けられている。私は自分自身の行動を顧(かえり)みて愕然(がくぜん)としている。ここまで個人の生活を自らで圧迫できるのかと情けなくなっている。そして、このような状況は大変恐ろしいものだと考えている。

 1941年からの太平洋戦争では、日本でも生活が統制され、一般国民は苦しい生活を強いられた。女性がスカートをはき、パーマをかけた髪で街を歩くと、「非国民」「贅沢は敵だ」と愛国婦人会の女性たちが糾弾した。現在の自粛警察が飲食店に嫌がらせしたり、マスクをしていない人間に対して糾弾したりすることと同じだ。「ぜいたくは敵だ」「欲しがりません勝つまでは」という戦時中のメンタリティと同じだ。

 現在の新型コロナウイルス感染拡大対策での生活の制限は、大きな戦争の準備段階であり、やがて大きな戦争が来た時の生活の制限のための訓練であると私は考えている。

 それでは大きな戦争とは何か。ずばりそれは、アメリカと中国・ロシアの戦争ということになる。そこまで行きつくにはいくつも段階を経なければならないが、すでにその方向に進んでいる。テレビを見てもアメリカからのニュースは連日、アメリカが中国を非難する内容のものばかりだ。アメリカと中国・ロシアの激突の可能性が高まっている。アメリカは太平洋を挟んで中国・ロシアと対峙している。その間に地理的に、また国際関係の点で、日本が存在している。

 アメリカと中露両国がいきなり軍隊を動員していきなり全面的な衝突が起きるということはない。さらに言えば、大規模な軍隊同士が直接ぶつかる、そのような「時代遅れout-of-date(アウト・オブ・デイト) 」の戦争が起きる可能性は低い。戦争が起きるのは、新しい場所、具体的には宇宙やサイバー空間である。

 人間を大量に殺傷し、建造物などを大規模に破壊する武器を大量破壊兵器 Weapons of
Mass Destruction[ウエポンズ・オブ・マス・デストラクション] (WMD)と呼ぶ。細かく言えば、ABC兵器とも言う。Aは核兵器Atomic Bombs 、Bは生物兵器 Biological Weapons 、Cは化学兵器 Chemical Weapons を指す。

人類は大量破壊兵器の使用と拡散を制限しようとしてきた。ある国がこれらの兵器を実際に使用すれば、非人道的な行為として大変な非難を浴び、厳しい制裁を科されることになるだろう。これらの兵器を持っていたとしても、現実的に戦争で使うことは難しい。

 これからの戦争で使われる大量破壊兵器は、これまでと同じく、ABC兵器となるだろうが、その中身が変わる。Aは宇宙で使われる兵器 aerospace weapons 、Bは生物兵器のまま、Cはサイバー空間で使われる兵器 cyber weapons ということになるだろうと私は考えている。
技術革新が進み、宇宙空間とサイバー空間での戦争、サイバー戦争 cyber warfare(サイバー・ウォーフェア)ということになるだろう。

 具体的には、AIを使った偽情報拡散、敵国政府機関のコンピュータをハッキングしての情報窃取、民間やインフラの機能不全や機能停止を引き起こす不正操作などが行われる。また、ドローン drone による偵察、監視、爆撃もすでに行われている。

2020年7月、2021年4月にそれぞれ別のイランの核開発関連施設が大規模火災と停電に見舞われたが、これは外部からのサイバー攻撃によるものだったとイラン政府は発表している。このように、サイバー攻撃は大きな物理的な被害をもたらすことができるようになっている。通常兵器では不可能かつ多大な犠牲を必要とする攻撃がいとも簡単にできてしまう。SFの中の夢物語が現実のものとなりつつある。

 アメリカ軍も中国人民解放軍もすでに宇宙軍とサイバー軍を創設している。また、本書の第1章で詳しく述べるが、ビッグ・テックと呼ばれる情報技術分野の超巨大企業とアメリカ政府、特に国防総省は結びつきを強め、「新・軍産複合体 Neo Military-Industry Complex 」が形成されつつある。そして、バイデン政権の中枢を占める人物たちがこの新・軍産複合体作りを進めてきている。

 それでは、これから本書の内容について章ごとに簡単に紹介していきたい。

 本書の第1章と第2章では、バイデン政権の顔ぶれの分析を行う。第1章ではバイデン政権で外交、国家安全保障分野を担う人物たちを取り上げている。本章に出てくる人物たちの多くはヒラリー・クリントンとの関係が深いヒラリー派である。この人物たちがビッグ・テックと呼ばれる情報産業の超巨大企業とアメリカ政府・アメリカ軍との関係の橋渡し役をしていることを中心に分析している。

 第2章では、バイデン政権の中でヒラリーと距離がある人物たちについて分析している。新型コロナウイルスと気候変動への対応を契機として、アメリカ国内を「リセット」する動きについて詳述している。

 第3章では、アメリカの2大政党、共和党と民主党について分析している。具体的には、
それぞれ内部にエスタブリッシュメント派とそれに対抗するポピュリズム派が存在している。それぞれが内部でどのように対立しているかについて分析している。

 第4章ではアメリカ全体の分裂について取り上げている。アメリカの著名な知識人たちの業績をもとに、アメリカ国内の分裂について考察する。

 あとがきでは、アメリカの民主政治体制と資本主義に対する不信感の増大とその危険性、
さらにこれからの日本の取るべき行動について私なりの答えを提示した。

 ジョー・バイデン政権について、日本ではあまり分析的な記事や書籍が出ていない。本書を読んでいただく皆さんに有益な情報と分析だと思っていただけたら、これにすぐる喜びはない。

   2021年4月 古村治彦 

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まえがき 1
第1章 バイデン政権は4年越しで成立した「ヒラリー政権」である 19

●ジョー・バイデン、カマラ・ハリスとヒラリーの深い関係 21
●「人道的介入主義派」と「ネオコン派」について 27
●バイデンの最側近アントニー・ブリンケンが国務長官に抜擢 31
●オバマ政権の若手外交専門家ジェイク・サリヴァンが国家安全保障問題担当大統領補佐官に 36
●国務省高官人事はバランス重視となっている 42
●「凶暴な外交官」ヴィクトリア・ヌーランドが国務次官に起用される 44
●バイデン政権の「核コア」となる人物たちが民間時代に関わった3つの組織 48
●キーパーソンは政権に入らなかったミッシェル・フロノイ元国防次官 52
●「AI技術利用」で中国に負けるな、そのために官民を挙げて総動員だ、という報告書を出したグーグル元CEOエリック・シュミット 61
●ウエストエグゼク・アドヴァイザーズを通じて新・軍産複合体づくり 67
●カート・キャンベル起用は「中国封じ込め」の「クアッド」戦略のため 70
●中国の「真珠の首飾り」戦略はインドを包囲する 74
●「スパイマスター」アヴリル・ヘインズもウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社出身 78
●新・軍産複合体を形成し戦争体制に向かうバイデン政権 83

第2章 ヒラリーとは距離がある「第3次オバマ政権」の人々は「リセット」を目指す85

●「第3次オバマ政権」の色合いもあるバイデン政権 86
●バイデン政権で「降格」人事を受け入れたケリー、ライス、パワー 89
●「環境問題の皇帝(ツァーリ) 」と呼ばれているジョン・ケリー 91
●ジョン・ケリーは「グレイト・リセット」の推進を主張している 95
●「グレイト・リセット」の危険性を指摘する 101
●「国内政策会議」という聞き慣れない組織 112
●スーザン・ライスとジョン・ケリーの関係 113
●スーザン・ライスの輝かしい経歴に傷がつき、国務長官の芽が消え去ったベンガジ事件 115
●スーザン・ライスが動画配信サーヴィス「ネットフリックス」社の取締役就任 120
●スーザン・ライスはオバマ政権でのエボラ出血熱対応経験を持つ 125
●サマンサ・パワーはヒラリーを「化け物」と呼んで大問題になった過去を持つ 130
●米国国際開発庁(USAID)という「民主化」の尖兵 134
●運輸長官として環境問題にも対応するピート・ブティジェッジ 137
●新型コロナウイルス対策と気候変動問題対応を大義名分にしてのグレイト・リセット 141

第3章 民主党、共和党の既成2大政党内部は エスタブリッシュメント 対 急進派(ポピュリズム)に分裂143

●2大政党制とポピュリズム 144
●史上最高得票数で当選しながら不人気にあえぐバイデン新大統領 151
●共和党支持者の中で人気が健在のトランプ前大統領 156
●民主、共和両党に共通する内部分裂―― エスタブリッシュメント派 対 急進派(ポピュリズム派) 159
●連邦議会共和党指導部、特にミッチ・マコーネルに対する苛(いら)立ちが激しくなっている 164
●保守派を代表する政治家と呼ばれるリズ・チェイニーはディック・チェイニーの娘 169
●トランプ攻撃の急先鋒となったリズ・チェイニーへの反発 175
●バーニー・サンダースを「発見」した若者たち 180
●民主党全国委員会による選挙不正のために支持者の不信感が高まる 184
●アレクサンドリア・オカシオ = コルテス当選は全米を驚かせた 186
●農務長官をめぐる人事や最低賃金をめぐる民主党内の攻防 191
●民主、共和両党の急進派の伸びは人々の怒り、ポピュリズムによるものである 194

第4章 トランプがアメリカの分断を生み出したのではない、アメリカの分断がトランプを生み出したのだ 197

●アメリカ人にとって最も大事なことは「統一( union )」である 199
●アメリカが3つに分裂するという最先端の考え 207
●トランプ旋風の先駆けだったパット・ブキャナンの「アメリカ・ファースト!」 214
●「アメリカ・ファースト!」の適切な日本語訳は「アメリカ国民の生活が第一」だ 223
●「第2次南北戦争」か、それとも「永久戦争」か 225
●チャールズ・マレーによるトランプ出現の的確な分析 226
●マレーの言説は多くの激しい批判を受けてきたが皆が言えないことを言ってきた 232
●アメリカの格差を取り上げ注目を集めたロバート・パットナム 235
●サミュエル・ハンチントンは晩年アメリカの変質と分裂を愁うれえていた 240
●アメリカの分断とポピュリズムが生み出したドナルド・トランプ大統領 246

あとがき 250

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   あとがき

 民主政治体制(デモクラシー)と資本主義(キャピタリズム)に対する懸念と不信感が世界規模で拡大している。
 私は、日本とアメリカで学び生活をしてきたが、民主政治体制と資本主義に対して疑念を持つことはこれまでなかった。当たり前にあり、かつ素晴らしいものであり、完璧な制度ではないにしても、他の政治体制や経済体制よりははるかに素晴らしいもの、という認識であった。本書を読んでくださった多くの皆さんも同じだと思う。

 まえがきで取り上げたが、米中の外交トップ会談の席上、中国共産党外交担当政治局員の楊潔篪(ようけっち)はアメリカ側に対して、「米国の人権は最低水準だ。米国では黒人が虐殺されている。米国が世界で民主主義を押し広めるのを止めるべきだ。米国にいる多くの人が米国の民主主義をほとんど信頼していない」と述べた。
 駐日本中国大使館は2021年4月2日にツイッター上で、アメリカに対して「国外で民主を喧伝(けんでん)し、国内で人権を蹂躙(じゅうりん)し、米国の分断はここでも顕著だ」とも書いている。

 アメリカ国内では、2020年の大統領選挙で、不正選挙 electoral fraud が行われたの
で、その結果を認めない、受け入れないという人の数は多い。選挙は民主政治体制の根幹であるが、それに対する信頼感が消え去れば、民主政治体制が崩壊する。また、アメリカをはじめとする先進諸国では格差の拡大によって、資本主義に対する不信感も高まっている。アメリカの若い人々、ミレニアル世代で社会主義的政策を支持する割合が高まっている。こうした中で、アメリカ国内の分断はより深刻化している。

 2021年1月に発足したジョー・バイデン政権について、日本では突っ込んだ分析がなされていない。目の前の、日本国内の新型コロナウイルス感染拡大対策と東京オリンピック・パラリンピックにばかり人々の関心が集まっている。それはそれで仕方がないことだ。しかし、アメリカの動きは、日本の行動にも影響を与える。バイデン政権がどのような政権なのかということを知ることは、日本がこれから進む方向や取るべき行動について考える際に、必要不可欠である。

 本書の前半部で書いた通り、バイデン政権は「4年越しのヒラリー政権」「第3次オバマ
政権」である。中露との対決姿勢を鮮明にし、衝突も辞さない構えである。それに中国の周辺に存在する日本を含む同盟諸国を巻き込もうとしている。アメリカ単独で中国と対峙する力は持っていない。アメリカの衰退は明らかになっている。

 この状況において日本はどう行動すべきか。選択肢はほぼない。なぜなら、日本はアメリカの属国 tributary state であって、アメリカの命令通りに行動しなければならないからだ。アメリカが中国封じ込めに周辺の同盟諸国を動員するということになれば、日本は中国との対決の先兵として使われる。米軍が中国軍と直接接触するということは大変なことで、それは最終段階のことである。その前の段階として日本とインドがまず接触(衝突)させられる。

 日本は中国との衝突の衝撃や損害をできるだけ小さくしなければならない。属国などはどうせ使い捨てだ。中国と本気になって衝突して、アメリカが後詰(ごず)めで助けに来てくれるとは限らない。それどころか、調子に乗って二階に上ったらはしごを外されて降りられなくなった、その間に米中が日本を悪者ということにして手打ちということが起きることも考えられる。

『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策Ⅰ・Ⅱ』(スティーヴン・M・ウォルトとの共著、副島隆彦訳、講談社、2007年)で、シカゴ大学教授のジョン・J・ミアシャイマー John J Mearsheimer(1947年―  73歳)は、自著の『大国政治の秘密 The Tragedy of Great Power Politics 』(奥山真司訳、五月書房、2007年)の中で、既存の国際関係を変化させるような新興大国の勃興が起きた際の他国の取るであろう複数の戦略「バランシング balancing 」「バンドワゴニング bandwagoning 」「バック・パッシング buck-passing 」について説明している。

 バランシングとは、台頭しつつある大国と対峙し、その伸長を抑止する戦略である。そのためには直接的な衝突も辞さない態度を取る。また、自国以外にも脅威を感じている国々を糾合(きゅうごう)することもある。
バンドワゴニングとは、台頭している大国に追随する戦略であるが、この戦略はあまり選択されない。それは追随することになった大国に生殺与奪の権を握られてしまうからだ。現在の日本の属国としての惨(みじ)めな姿を見ればそのことが実感できる。
バック・パッシング(うしろに球を送る)とは、台頭する大国に対して、アメリカは自分が直接対峙することなく、他国に対応させることである。

 現在、アメリカが行おうとしているのは、バック・パッシングだ。日本という属国でありながら、世界第3位の経済力を誇る、使い勝手の良い国である日本に、中国との直接的な衝突は任せるという態度だ。ミアシャイマーは「脅威を受けた側の国は、ほとんどの場合、バランシング(直接均衡)よりもバック・パッシング(責任転嫁)を好む。戦費の支払いを逃れることができるからである」(187ページ)と書いている。アメリカは、日本に負担を強いることで、自分たちに火の粉がかからないように巧妙に立ち回っている。

 アメリカから負担を押しつけられるならば、日本はアメリカに服従する姿勢を派手に見せながら、裏で中国とつながっておくべきだ。これを「面従腹背(めんじゅうふくはい)」と言い表すことができる。
 大相撲で八百長スキャンダルが起きたが、八百長を仕組んでおくことである。「ここで適当にぶつかりますんで、うまくかわして後は流れで双方が怪我(被害)が少ないようにしましょう」ということを中国と企んでおく。「アジア人のためのアジア」「アジア人どうし戦わず」が理想だが、どうしてもぶつからねばならないとなれば裏でつながっておくということが重要だ。

 米中どちらに賭けるかという賭博だと考えるならば、どちらにも賭けておく、それで掛け金の損失を少しでも少なくする。一種の悪賢さが必要だ。世間の評判が悪い自民党幹事長である二階俊博(にかいとしひろ)氏は、中国とのチャンネルを維持する役割を果たしていると思う。だから、日本国内のアメリカの息のかかったマスコミにバッシングをされている。

 本来、日本は米中どちらにも自分を高く「売りつける」ことができる位置にある。
より行動の自由があれば、中国に対しては「アメリカにつくぞ」という姿勢を見せて、アメリカに対しては「中国につくぞ」という姿勢を見せて、より良い条件を引き出すことも可能だ。しかし、悲しいかな、日本は敗戦国であり、アメリカの属国である。そのことを変えることは至難の業だ。だからある程度までアメリカにお付き合いをしなければならないが、裏では中国ともつながっておく。

 そのためにまず現状を認識しておくことだ。「日本は世界に冠たる大国で、アメリカと対
等の同盟関係にあって、日米関係は世界で最重要の同盟だ」などという美辞麗句に惑わされて、調子に乗ってはいけない。「日本が勇ましさを出す時は必ず失敗する」くらいの認識で慎重に行動する。また、「敗戦国ですから、一度皆さんにご迷惑をかけた身ですから謹慎しておきます(軍事行動はしません)」という論理も使える。
 アメリカはそのような論理はもう許してくれないが、それでもこの論理を捨てずに主張することで周辺諸国との協調を図ることができる。
 あまり景気の良い話にならないのは残念であるが、戦争に向かう流れの中で、日本はできるだけ被害や損失を少なくするということを真剣に考えねばならない。

 最後に。本書執筆にあたり、そのきっかけを下さった、師である副島隆彦先生に感謝します。出版を引き受け、先導してくださった秀和システムの小笠原豊樹氏にも心からの感謝を申し上げます。ありがとうございます。

     2021年4月    
古村治彦

(貼り付け終わり)


悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

(終わり)

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