「1909」 『ウイルスが変えた世界の構造』(副島隆彦・佐藤優著、日本文芸社)が発売される 2020年12月16日
 SNSI・副島隆彦の学問道場の古村治彦(ふるむらはるひこ)です。
今日は2020年12月16日です。


ウイルスが変えた世界の構造

 副島隆彦先生と佐藤優氏の対談『ウイルスが変えた世界の構造』が、2020年12月19日に発売です。対談本は本作で6冊目となります。本書は「第1部 パンデミックで変わった世界-近代500年の終わりと内向の時代」と「第2部 アメリカの「国教」ユニテリアンとは何か-世界帝国を支えた宗教思想の秘密」に分かれています。

 副島先生があとがきで書いているように、第2部の「アメリカの「国教」ユニテリアンとは何か-世界帝国を支えた宗教思想の秘密」から先に読むと、この部分がユニテリアニズムだけではなく、宗教の在り方まで踏み込んでの対談になっていることが分かります。お坊さん(聖職者)が威張らない、いない宗教、人々の生きる上での悩み、生きづらさを肯定して「それでいいのだ」と受け入れてくれるということは宗教の普遍性なのだと私は合貯めて認識しました。

 私が一番重要だと考えるのは、210ページからの「佐藤さんが創価学会の池田大作名誉会長の跡継ぎになるのが良い」という発言、そして、創価学会とクエーカーやバプティストの共通点に言及している部分です。佐藤氏は敬虔なクリスチャンなのに、在家の仏教信者団体の代表になるなんて突拍子もない話だと思う人もいると思いますが、大きく宗教という枠組みでとらえると、副島先生の発言の真意が理解できます。

 まず、佐藤優氏 の「まえがき」を載せて、それから、目次と副島先生による「あとがき」を掲載します。

(貼り付けはじめ)

     「 まえがき 」

 バイデン政権下、米中緊張が一層強まる

                 佐藤優(作家・元外務省主任分析官)

 副島隆彦氏との共著は、これで6冊目になる。
 2020年は、歴史に残る年だった。この節目の年に副島氏と日本と世界の現状と近未来予測について、徹底的に議論することができた。

 政治情勢や国際関係の評価について、2人の評価が異なる部分があるが、その人の持つ情報、人生経験によって、同じ出来事が異なって見えることがあるので、この点については知的異種格闘技として楽しんでいただきたい。

 本書を読むにあたって押さえておいていただきたいのが時間概念だ。物事を観察し、理解する上で時間概念が死活的に重要である。副島氏も私も欧米的な時間概念で物事を見ている。なぜならそれがグローバル・スタンダード(世界基準)だからだ。
 ギリシア語では、2つの時間概念が存在する。第1は、流れる時間を表すクロノスだ。英語のタイムになる。第2は、ある出来事が起きる前と後では、歴史に断絶が生じるという意味の時間を示すカイロスだ。英語だとタイミングに相当する。
 
 日本にとって、2020年は3つの意味でカイロスだった。
 第1はコロナ禍だ。コロナ禍により、グローバリゼーションに歯止めがかかり、国家の壁が再び大きな意味を持つようになった。ステイホームで、経済が停滞した。リモートワークが導入されたが、その結果、成果主義が強まった。また、リモートワークができない職種に従事する人々の負担も増加した。教育でも一斉休校やリモート化によって、学校間の格差が拡大した。

 コロナ禍によって、国家間、地域間、階層間、ジェンダー間の格差が拡大した。この傾向は今後も続く。特に構造的に弱い立場に置かれた人が、社会的底辺に追いやられ、這い上がれなくなった。

 第2は、アメリカ大統領選挙で民主党のバイデン候補が当選したことだ。
 この対談は1年以上準備して行なったものだ。当初、われわれはトランプ氏が大統領に再選されるものと考えていた。しかし、コロナ禍によって状況が変わった。

 開票が終了し、バイデン氏が当選したとの公式結果が出てもトランプ大統領が不正が行なわれたと主張し、任期が終了した2021年1月20日以降もホワイトハウスに籠城するという見方をする人がいるが、その可能性は極めて低い。

 大統領任期を過ぎればトランプ氏はただの人になる。トランプ氏が権力の座に居続けようとすると、ホワイトハウスを、同氏を支持する人々と反対する人々が取り囲み、流血の危険が生じる。大統領警護部隊(シークレットサービス)や大統領の指揮命令下にあるコロンビア特別州の州兵が、違法行為となるリスクを冒してトランプ氏を防衛することは考えられない。

 トランプ氏は頭が良いので、そのような事態になる前にホワイトハウスから出て行く。米国の政府機構は権力の移行を淡々と行なうことになると思う。
 バイデン氏が大統領に就任しても米国内政の混乱は収まらない。トランプ氏を熱烈に支持した人々はバイデン大統領の正統性を認めない。さらに民主党支持者に関してもトランプ氏という共通の敵を失った後、団結が難しくなる。

 なぜなら民主党がアイデンティティーの政治を追求しているからだ。黒人、ヒスパニック、ジェンダー、エスニック・グループなど、自らが帰属する集団のアイデンティティーを最優先する人々が団結するのは至難の業だ。米国の社会的分断はさらに加速すると思う。外交に関して、米国と中国、北朝鮮との関係は、現在よりも緊張するであろう。民主党は、自由や民主主義という、人権といった価値観を軸に外交を展開する。

 トランプ大統領の場合、価値観よりも、自らの権力基盤を強化するための取引(ディール)を重視する。この例が、トランプ氏と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との3度の首脳会談だ。その結果、朝鮮半島での武力衝突を回避することはできたが、北朝鮮の核保有を米国が事実上、容認することになった。また、米国は北朝鮮の新型弾道ミサイル開発を阻止することもできなかった。

 バイデン氏は、トランプ政権よりも強硬な態度を北朝鮮に対して取ることは間違いない。北朝鮮も対米対決姿勢を強めるであろう。
 トランプ政権時代の対中国経済制裁は、バイデン政権になっても継続される。さらに中国におけるウイグル人への人権抑圧、非公認のキリスト教会に対する弾圧について、人権を重視する立場から、米国は中国に対する批判を一層強めるであろう。
 7月24日に在ヒューストン中国総領事館が閉鎖された際の米高級紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』の社説が情勢分析の上で参考になる。

  〈1つ懸念されるのは、中国政府が米国の新たな姿勢をトランプ大統領による選挙戦略の1つだ
として切り捨てる恐れがあることだ。/それは過ちになるだろう。例えば、民主党は米国の対イ
ラン措置を厳しく批判しているものの、トランプ政権が中国政府を攻撃しても、それを支持した
り、黙認したりする姿勢を示している。この新たな姿勢は、ブルーカラーの有権者から産業界
  および安全保障分野のエリートに至るまで
の層の間で、中国があまりにも長い間、罪を逃れ過ぎているとのコンセンサスが生まれつつある
ことを反映している。ジョー・バイデン氏が次の大統領になったとしても、その政権は、
  西太平洋の緊張した状況と、米国内における中国の影響力を標的として進められている多数の
  スパイ防止活動や刑事捜査を受け継ぐことになる〉
        (7月27日付『ウォール・ストリート・ジャーナル』日本語版)

 新型コロナウイルスによる感染症が中国の武漢から拡大していたことによって、米国の一般国民の対中感情が悪化した。それが政治問題と結びつき、中国を懲罰するタイミングに至ったとのコンセンサスが米社会で形成されている。バイデン政権下、米中緊張が一層強まる。日本との同盟関係を重視するという米国の基本的姿勢に変化はない。ただし、慰安婦問題や徴用工問題に関して、韓国のロビー活動に対する米政府の姿勢に変化が生じる可能性がある。

 ロシアとの関係についても、バイデン政権がウクライナ問題やベラルーシ問題を巡ってプーチン政権と緊張を高めるであろう。その結果、北方領土交渉の環境が悪化する可能性がある。もっとも米国は、トランプ大統領により生じたコロナ対策の混乱を収拾するのに今後2年間は集中し、日ロ関係に介入する余裕はないと思う。

 この時間を最大限に活用して、菅義偉首相がロシアのプーチン大統領と鋭意交渉を進めれば、北方領土問題解決の突破口が開けるかもしれないと私は考えている。

 第3は、8月末に安倍晋三首相が健康上の理由で突然辞意を表明し、菅義偉官房長官が首相に就任したことだ。菅氏は、安倍氏と比較すると、イデオロギー色が稀薄だ。プラグマティックな観点から生産性向上を志向することになろう。

 新自由主義的な規制緩和政策を菅政権が採択し、格差が拡大し、社会の分断が高まる可能性がある。さらに司法権、立法権に対する行政権の優位性が高まり、民主主義が機能不全に陥る可能性がある。
 
 以上の3点が現下日本の大きな問題であるという点については、副島氏も同じ認識と思う。ただし、個別の出来事に関する分析と未来予測はかなり異なる。読者にはこの差異を楽しんで欲しい。

 本書では、イエス・キリストの神性を認めないユニテリアンという教派について多くの頁が割かれている。ユニテリアンを理解することが国際政治の本質を掴む上で重要だという点で、副島氏と私の認識は完全に一致している。

 本書を上梓するに日本文芸社の水波康副編集長とグラマラス・ヒッピーズの山根裕之氏にたいへんにお世話になりました。

 白熱し、時には極論の応酬になった対談を見事に書籍にまとめあげることは、至難の業だったと思います。腹を割って話すだけでなく、腹の底にある宗教や信念体系にまで踏み込んだ議論をしてくださった副島氏にも敬意を表します。どうもありがとうございます。また、このチームで仕事をしたいです。

   2020年11月16日、曙橋(東京都新宿区)の書庫にて  佐藤優

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 「 ウイルスが変えた世界の構造 」 もくじ

 まえがき バイデン政権下、米中緊張が一層強まる 佐藤優  1

第1部 パンデミックで変わった世界 近代500年の終わりと内向の時代

アメリカに勝利した中国の全体主義 16
「アメリカの世紀の終わり」を発信した中国官営メディア 16
「自粛」という形で大政翼賛運動をやった日本 21
ショック・ドクトリンで脅された世界の民衆 27
カミュの小説『ペスト』から「神義論」を考える 32
ウイルスはどこからやってきたのか34
石正麗亡命説の真実 34
新型コロナウイルスの人工、人造説 40
余裕がなかったヨーロッパの対応 44
アフターコロナで世界はどう変わるか 49
コロナ後の金融危機と日本の政局55
菅義偉内閣はどうなるか 55
河井夫妻逮捕の裏側 62
日本共産党は赤旗を捨てよ 76
裏金作りの温床となる怪しい国際機関 81
北朝鮮情勢とアメリカのディープ・ステイト88
『愛の不時着』で描かれた『三丁目の夕日』の世界 88
北朝鮮と統一教会の濃厚な関係 95
チュチェ思想における初期マルクスの影響 99
ボルトンが暴いたトランプ政権の内幕 103
アンティファを操るのは誰か 114
アメリカ大統領選とアメリカ政治の行方125
アメリカ没落後の基軸通貨はどうなるか 125
飽きられ始めたトランプの「下品力」 137
トランプを支えるサザンバプテストたち 143
ヒラリー派は現在のリンカーンナイト 150

第2部 アメリカの「国教」 ユニテリアンとは何か 世界帝国を支えた宗教思想の秘密

アメリカを作ったユニテリアンたち154
CIA職員に多いユニテリアン 154
ユニテリアンは教派横断的に存在する 164
長老派と会衆派から成る合同改革教会 169
アメリカ独立戦争に金を出したカルヴァン派 175
世界宗教というのは全て体制側にある 180
イギリスが日本の天皇を「神」にさせた 184
クエーカーは良心的兵役義務拒否の思想の原型 188
クエーカーから人類の最先端のテーマが現れた 191
自己防衛も否定するメノナイト 197
非暴力、不服従の思想の凄さ 202
〝坊主〟を作らなかったアナバプテストとクエーカー 206
現代のあらゆる思想の源流となったユニテリアン212
牧師から演説家となったエマーソン 212
マルクス主義もユニテリアンから生まれた 220
福澤諭吉もユニテリアンだった 226
フリーメイソンとユニテリアン 230
ユニテリアンの発想で世界を理解する237
内村鑑三の無教会主義の問題点 237
内村鑑三の背後にはアメリカ帝国がいた 241
社会主義と分裂した内村鑑三 246
AIにもつながるユニテリアンの発想 254
コロナ禍の時代には神学的な思考実験が重要になる 261

あとがき 悪による支配こそ人類の原理、ではない  副島隆彦 264

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      あとがき    副島隆彦

 「 悪による支配こそ人類の原理、ではない 」       

 この対談本で6冊目になる。本書の第2部の、私と佐藤優氏の宗教についての部分をこそ先に読んでほしい。

 佐藤優氏は、2020年9月16日の菅義偉政権誕生で、自民党と公明党(創価学会)をつなぐ最高顧問のような立場に登った。宗教家(信仰を持つ人)として今や高い境地に達している佐藤優氏こそは、創価学会の次の教主になるべき人だ、と私は本書で彼に説いた。仏教とキリスト教では宗派がちがう、は理由にならない。本書を真剣に読めばその理由が分かる。

 宗教(信仰)とは、人間の魂を救済(サルヴェイション)することである。生きることの苦しみを真剣に受け止めて今の自分の生を肯定することである。そのための道をしっかりと指し示すことができる人が指導者である。

 それに対して私は、ますます偉人、西郷隆盛に似てきた小沢一郎を支持し続け、言論人としては冷や飯喰いのままだ。アメリカ帝国の支配から出来る限り脱出して、日本国の独立自尊(これも偉人 福澤諭吉先生のコトバ)を意地でも追求する立場だ。

 生き方上手は私が取る道ではない。竹中平蔵のような浅ましい策士が、時の顕職に登ることが何ほどのことだろう。あと10年ぐらいで私たちの生も終わる。

 歴史に例を捜すと。五代将軍綱吉(つなよし)の側用人(そばようにん)として権勢を振るった柳沢吉保(やなぎさわよしやす)に、見出されて悪知恵の儒官となった荻生徂徠(おぎうそらい)だ。徂徠は、政治学者の丸山眞男(まるやままさお)が書いた『日本政治思想史研究』(東京大学出版会、1952年刊)によって、日本のマキアヴェッリ だと評価された。

 マキアヴェッリは、その『君主論』“Il Principe(イル・プリンチペ), 1513”(刊行は1532年)によって、冷酷な現実主義を政治思想に持ち込んだことで、〝近代政治学の祖〟と呼ばれる。君主(統治者)は、民衆に愛されるよりも、恐れられる方がいい。即ち政治は、悪が支配してこそ自然である、という思想の元祖である。

 今では、ちょっと知能の有る人ならこのことを知っている。「支配権(権力者)は民衆に愛されるよりも恐れられる方がいい」と。
 この世を実際に支配するのは悪であって善ではないという思想だ。民衆に嫌われる悪人政治家ほど実力を持つ、という近代政治学の原理がこのとき出現した(1513年)。佐藤優は、本書P32で、このことをキリスト教神学の「神義論(しんぎろん)」でそれとなく教える。神がこの世界の全てを作ったはずなのに、悪(魔)の発生には関わらない、無関係であるという詭弁(きべん)、に読み代えた。キリスト教神学とはこういう議論をすることらしい。

 マキアヴェッリは、若くして天才の頭脳をしていたので、フィレンツェ国の高官を務めた。ところが、共和政が倒れた(1512年)。このあと、失職したマキアヴェッリが、何故、「悪こそが人民統治(ガヴァメント)の技術である」と、『君主論』で書いたか。

 共和国フィレンツェは当時世界一の繁栄した大都市だった。パリもロンドンもウィーンもまだ田舎(いなか)都市だった。共和政とは、君主(国王)の存在を許さない国家体制のことだ。共和政から、のちに民主政も派生した。

 マキアヴェッリは、支配権を取り戻したメディチ家にすり寄って、何とか顕職に有りつこうと猟官運動をした。

 フィレンツェは共和国からトスカーナ公国という小さな大公(アーチデューク)国に転落した。それでもメディチ家の大公(国王)は、同時代のガリレオが火刑(焚刑、ふんけい)にカトリック教会から処せられそうになったのを、なんとか救い出して守ったから偉いことは偉い。

 卑屈で卑しくなったマキアヴェッリが、己の就職活動用に書いたのが『君主論』である。

 このことは今のヨーロッパ知識人によく知られている。日本にこの事実を伝えたのは、ガリガリの現実保守の歴史学者である塩野七生(しおのななみ)女史だ。彼女が、『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』(新潮社、1970年刊)を書いて教えてくれた。「残虐な支配者であることこそが、有るべき人民統治者だ」をチェーザレ・ボルジアの元をマキアヴェッリ自らが訪ねて目撃した。

 チェーザレ(小カエサルの意味)の実の父親は、(叔父ということにしていた)教皇グレゴリウス7世だ。この頃もローマ教皇たちは腐敗していて隠し子を作った(重大な戒律違反)。この極悪人の父教皇の威を借りて、一時期(しかしたったの10年)、北イタリアで次々と都市領主たちを殺害して覇を唱えたのがチェーザレ・ボルジアだ。

 為政者(権力者、大企業経営者も含む)は、国民と従業員に酷薄であればあるほど権力を維持できる、という考えをチェーザレ・ボルジアが体現した。

「菅首相に、入れ知恵しているのは竹中平蔵である」とすぐにメディアで報じられた。表に出る悪の権化の竹中平蔵(荻生徂徠)と、それとは異なり身を隠す善の姿の佐藤優の二重重ねで、今の日本の政治は動く。国民にはいよいよ厳しい。

 ただし。チェーザレ・ボルジアは、父教皇が死んだら、後ろ盾を失い憎しみを買って、スペインの山中(ナヴァラ国)まで追いかけられて殺された(31歳)。このマキアヴェッリの、「悪こそ人類の原理である」を、己の金科玉条にすることに、人生経験の中でたどり着いた者たちは、ここまで知った上で、悪の技術を実践するがいい。

 マキアヴェッリより少し前の〝壮麗なる(マグニフィーセント Magnificent 壮大な、気高い、すばらしい )ロレンツォ〟(ロレンツォ・イル・マニフィコ。1449─1492)のとき、共和国フィレンツェは、都市自治の人類の理想の頂点を築いた。ロレンツォ・デ・メディチは、民衆に真に愛された。このロレンツォが、13歳の時からミケランジェロの育ての親である。ミケランジェロは、復活した共和政のソデリーニ政権でフィレンツェの城壁の防衛責任者となった(1527年)。そして教皇軍・神聖ローマ皇帝国と戦って敗北してローマに逃げのびた(1530年)。

 このことを私たち日本の知識人層に真に教えてくれたのは、碩学・羽仁五郎(はにごろう)である。彼の『ミケルアンヂェロ』(岩波新書、1939年刊)と『都市の論理』(勁草書房、1968年刊)である。今なお人類最高の芸術家はミケランジェロである。

 羽仁五郎と比べたら、日本のマキアヴェッリである、荻生徂徠を持ち上げた丸山眞男と、その先生の南原繁(なんばらしげる)は、ワル(悪)の碩学(せきがく)である。丸山は戦後岩波左翼の主座(しゅざ)の地位にまで登って、私たちの世代までも幻惑し欺(あざむ)いた。
 事実は、南原繁(戦後は東大総長という顕職)は、内務省警保局(けいほきょく)特高(とっこう)警察の系統である。この事実が最近ようやく露呈しつつある。
それに対して、羽仁五郎は、講座派(こうざは)歴史学の志を貫いて、『ミケルアンヂェロ』を出版して、北京まで逃げたが特高警察に捕まった。

 私は今これらのことを大きく理解し描くことが出来る。真実を大きく見抜く。
 これが出来ないなら、外務の行政官(官僚)として、民衆への悪を、若くして手づかみで実践して来た佐藤優氏と、渡り合うことはできない。私は、悪の側に身を売らない。私は、変人、狂人、世捨て人となってひとり山に籠る方を選ぶ。時代の顕職(けんしょく)など何するものぞ。

 どうせ、わずか10年、20年のことではないか。牛と豚と羊はメーメー鳴きながら、愚かにも全員マスクをしたまま(傍点 ```````)屠殺場(とさつば。今は食肉加工場 )に送られる。そして、また戦争に連れてゆかれる。この哀れなる国民を茫然(ぼうぜん)と眺めて、隠遁者を気取るしか他にすることがない。人助けと、民衆救済はどうせ出来ない。それよりは、己れひとりを助けて山中(ただし崖下に海が広がる)に閑居する。海から朝日が出る。私は太陽神(サン・ゴッド)を崇拝する。

 再び日本文芸社 水波康副編集長と、グラマラス・ヒッピーズの山根裕之君の手をわずらわせた。記して感謝します。本書の書名は、「佐藤優と副島隆彦の宗教問答(あるいは対話)にしなさい。その方が超然として、本が売れますよ」と、私は執拗に粘ったが、ダメでした。勝手にしなさい。

                2020年10月    副島隆彦

(貼り付け終わり)


ウイルスが変えた世界の構造

(終わり)

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