しかし、近代物理学ではそうはいかないのだ。解析力学を事前に十分に理解しないと、近代物理学の大成果である、量子力学と統計力学(statistical mechanics)は理解出来なくなっている。この解析力学の最終結論として導かれるのが、ハミルトニアン(ハミルトン関数): H と、ハミルトン・ヤコビの偏微分方程式という数式である。
何故だろうか?と、私は今回、20年振り位に原島の「力学Ⅱ」を本棚の奥から取り出し開いてみた。すると、最初にハミルトン関数: H = T + U が説明された後で、ラグランジュ関数: L = T - U が登場し、その後にまたハミルトン関数: H の説明に移るといった、ごちゃごちゃした記載がされていた。おそらくは、量子力学につなげるため、ハミルトン関数: H の説明を、一旦、先に持って来たのだろう。
しかし学生の頃の私は、原島の本を読みながら思った。「ハミルトン関数で全部説明が付くなら、ラグランジュ関数: L なんか、後からわざわざ持ち出す必要ないじゃん。無駄な説明するよなあ」と。今考えると、あまりにも不遜な、恐ろしい思い上がりだった。こんな無茶な、独りよがりの思い込みに陥るのが、素人の独学者の情け無い処だ。無論ではあるが、西村先生が書かれるように、ラグランジュ関数: Lを理解せずに、ハミルトン関数: Hを理解することは出来ない。やはり、原島の本をもってしても、解析力学を初心者がすんなり理解出来るとは、言えないように思う。