量子力学の基本となる考えは、質量を持つ電子の振る舞いが、波として記述されることだ。これを受け入れるのは、私は別に問題はなかった。この波を表す方程式が、所謂シュレーディンガー方程式と呼ばれるものだ。しかし、大学の講義で、先生が黒板に書かれたその式は、2階の偏微分方程式だった。私は学部2年生になりたてで、微分方程式を習い始めたばかりだった。これを理解するのは辛かった。さらに面食らったのは、電子のエネルギーを表す物理量として、ハミルトニアン(ハミルトン関数): H という記号が、何の前触れもなく、方程式の中にいきなり登場したことだった。