「1733」 『サピエンス全史』について話します(第3回・全3回) 2018年3月31日
 副島隆彦です。今日は2018年3月31日です。

 それ以前の知識でいうと、これは最初の9ページに書いてあるけれど、135億年前に、これはビッグバン理論ですね、宇宙が始まった。膨張を今も続けている、ばか理論ですけども一応こういうことになっていて、そこで物質とエネルギーがあらわれたということになる。時間までがここであらわれたとか、とんでもない偉そうなことを言いますから、本当にふざけたやつらでね。だから理論物理学者、宇宙物理学者たちの、副島隆彦はいんちき理論だとわかっていますけども、一応これが世界の学者たちの共通理解なんです。


ビッグバン理論

 そしてこれは私も認める。45億年前に地球という惑星ができたんです。月もほとんど一緒にできたんだと思う。ただ、月が外から飛んできて、地球がそれを捕まえたというばかな説を言う人たちもいます。でも、同じ時期にぐるぐる回って、太陽の周りでちりやごみが固まって、つまり物質ですけど、固まって引力の力で球体をつくっていくわけです。それが宇宙の中の重力の力か外側からの大きな力で、それぞれ、銀河、ギャラクシーの中のさらに太陽系(Solar System)みたいなものをつくってるわけですね。それが45億年前ということになる。これは私も賛成している。46億年前と言う人もいる。


太陽系

 38億年前に、生命体、有機体が発生したと。それが生物というものの始まりなんですね。その前は無機物だけなんです。岩とか水とか、いわゆる物質だけだったんだけど、生命体が発生したと。これもみんなが覚えなきゃいけないことなんですけどね。

 この有機体の発生、つまり生物、生命体の発生に関して副島隆彦はソビエト型の生物学の理論をとっていて、コアセルベート(coacervate)というのがつくられた。それがトロフィム・ルイセンコ(Trofim Lysenko、1898-1976年)、アレクサンドル・オパーリン(Alexander Oparin、1894-1980年)派の、要するに唯物論(materialism)ですね。


ルイセンコ


オパーリン

 マテリアリズム型の思想で、海の底で雷みたいな電流が起きて、渦があって海流が流れているところが渦巻き現象を起こして、結び目みたいになったんです。私たちが裁縫をしていると、すぐ糸が絡まって結んじゃったらもうほどけなくなるんです。ああいう結び目みたいなところに電気エネルギーがかかって、そこでたんぱく質が生まれた。それがコアセルベートといって、そこから生命体が生まれた説なんです。これが唯物論、マテリアリズム。つまり魂、霊魂を認めない思想です。だからあの世もありません。これは物質主義なんです。マテリアリズムの思想からいくとルイセンコ、オパーリン説なんですよ。私もそっちが正しいと思う。

 それに対して、反共産主義のヨーロッパやアメリカの学者たちは、地球外から生命が来た説を今でも平気で言っています。生命体は地球外からもたらされたものだと。これに関してはそれぞれ何の根拠もないですから、説明のしようもないけど意地を張って言っているだけです。

 そこの中間に、メンデルの法則というのをつくった。グレゴール・ヨハン・メンデル(Gregor Johann Mendel、1822-1884年)という学者がいた。この人はオーストリア帝国のブリュンで司祭をしていました。メンデルの法則から遺伝子の学問ができて、今はジーン(gene)という、遺伝子というもので、ジェネティクス(Genetics)という遺伝学という学問になったんです。


メンデル

 そしてやがてそれが、ジーンという遺伝子というものを物質的に観察することで、1954~1955年にジェイムズ・ワトソン(James Watson、1928年-)とフランシス・クリック(Francis Crick、1916-2004年)という男が2人で、DNAのダブルフェリックスという、二重らせん構造(DNA double helix)というのを発見したんですね。


ジェイムズ・ワトソン(左)とフランシス・クリック

 そしてやがてそれが、ヒューマン・ジェノム(human genome)というけど、ヒトゲノムの解明で全ての遺伝子が、60億個か何か知らないけど、全部コンピュータで解明されたという時代で、お金さえ払えば1人の人間は2~3週間でその人のヒューマン・ジェノム、ヒトゲノムを全部解読したものをくれるんだそうです。

 ただ、これで何かが解決したかというと、あんまりそういうことはないんだな。さらにまた奥が深いというか次の次元も出現するんです。それは物質の研究も一緒。マターの研究というのがノーベル化学賞をもらうんですよ。
 
 遺伝子で病気がわかるというのは、ノーベル医学生理学賞というものです。メディシン(Medicine)とバイオロジー(Biology)。バイオロジーは遺伝子生物学、生命とは何か、ライフ(life)といいます。ライフについての最先端の成果を発見した人が、ノーベル医学生理学賞。それに対して、マター(matter、物質)について一番進んだ研究をした人がノーベル化学賞、ケミストリー(Chemistry)。そして空間とも訳す宇宙(space、スペース)。宇宙全体についての研究で業績があった人がノーベル物理学賞なんです。フィジックス(Physics)というんです。この三つなんですよ。途中はまざったりするんだけど、みんなこの三つを理解すればいいんだけどね。

 例えば、中村修二(1954年-)たちはノーベル化学賞かなって自分たちは思っていたら、ノーベル物理学賞をもらったんです。あとは、南部陽一郎()たちもノーベル物理学賞ですからね。やっていることは数学者なんだけど、物質の成り立ちというか宇宙の成り立ちの両方をやったんです。でも結局、答えは出ていません。ひも理論、string theory(弦理論)というのをつくったということで、素粒子論を壊しつつあるんです。素粒子というのは細かい物質ですから、量子力学の量子と同じことです。クオンタムとプライマリーエレメント(primary element)といいますが、素粒子は同じことです。そこでまた闘いになるんですけど。


中村修二

 そういうことで歴史がこっち側のほうにどんどん新しくなってくると、細かいことももっとあるんだけど、もう今は言いません。狩猟採集民という言い方があって、ハンティングアンドギャザリング・ピープル(hunting and gathering people)というんだけど、狩猟採集民が農耕民(農業民)にいつ変わっていったかという話もずっとしています。それはあちこち山の中をうろついたり、草原のところをうろついたりして食べ物を見つけて回るわけです。

 オーストラリアのアボリジニは完全に狩猟採集民です。ミツバチのハチミツを見つけたり、地面の中に穴を掘って中から食べ物を見つけたりするんですね。あるいはコヨーテみたいなやつを、ディンゴとかいう犬みたいに飼っていかれた犬とかを連れていますね。原住民はね。

 犬というのは本当はオオカミなんです。何代かかけ戻していくと犬は必ずオオカミに戻るそうです。オオカミの裏切り者のことを犬と言うんです。人間に餌をもらってワンワンほえて、人間と一緒にいたほうが楽しいもんだから。そしてオオカミに襲いかかっていったんです。オオカミからしてみたらこのやろうという感じで、犬なんか食い殺してやるという感じになるけど、オオカミはオオカミで餌がないもんだから、1週間、10日、餌も食べられないところで。タイガの森とかをさまよっていて、人間が飼っている羊や牛に襲いかかるに決まっているんですよ。そしたらそれを飼っている牧畜民が怒るに決まっているわけで。

 私が1年ぐらい前にテレビを見ていてびっくりしたのは、ヨーロッパオオカミというのがまだ何百頭か、2000頭ぐらいいるんだそうです。それは絶滅危惧種ですから保護しなきゃいけないんですね。それに対して、フランスの南部のほうだと思うけど、シェパードという羊飼いがまだいるんです。何千人かいるらしい。羊飼いたちが飼っている羊がオオカミに襲われましたと訴えている。一体どっちを保護したらいいんですかというおかしな問題が出現して、シェパードたちは怒っているわけです。自分たちで銃で撃ち殺しに行ったりするんだけど、政府がオオカミを殺してくれという陳情をやっているわけ。おかしいんですよ、その様子が。どっちが絶滅危惧種なのかわかんなくなっちゃって、やっぱりシェパードというのは昔は当たり前にたくさんいたんだろうけど、今はもう職業自体が絶滅危惧人間たちなんです。イタリア、スペインならまだしも、フランスにいるというんだから。おもしろいことで。

 ですから、話せば切りがないけど、ハラリの『サピエンス全史』で、次回私は古代帝国が生まれる紀元前3000年からの話に問題を移していきます。なぜなら彼らは、農業革命を起こして人間が定着して、農業で小麦をつくることで苦労をし始めたわけですよ。一生懸命草取りをしなきゃいかんとか、害虫が来るのを防がなきゃいかんとか、一生懸命働くようになって奴隷みたいになっていったと。その前の狩猟採集段階だったらあちこち移動して楽しかったっていうわけですよ。腐敗菌、ばい菌や感染菌がなかったというわけです。

 これは、モンゴルのウランバートルにいたときにその話を聞いた。モンゴル人は今でも、草原の中の馬や羊を飼うところに入っていきたいんだと言うんです。これはサウジアラビアの王族の人たちもベドウィンですから、砂漠の中に入って行きたいんだって、ラクダを連れてね。ものすごくそこに憧れるんだそうです。

 自分の馬を持っていて、ウランバートルの都市で暮らしているやつらも、年に10日とか、馬乗りに来るんだそうです。ばい菌がないって言いました。都市の汚いばい菌が草原にはないんだと。それは本当だと思う。ただし、どう考えても定住民のほうが楽なんですよ。栽培農業で、そこで働いてさえいれば不安がないわけ。なぜなら、狩猟採集民は飢えて死ぬ可能性が非常に高いんです。いろいろ危ないんです。子供を連れてずるずる移動ができないから、ニューギニアの原住民は体が弱った女の人を、後ろからまさかりで一撃で殺すんだって。なぜなら足手まといだから。何人もたくさん殺したよって威張っているのがいたっていうから。原住民と一緒に暮らしている人類学者がいて、彼らがずっと記録をとっている。そうしないと数十人の部族が成り立たないからです。人食いはもうないんだと思うけど、殺して埋めて、移動していくわけです。

 子供も移動に耐えられないといけないから、あんまり子供が産めないようになっていて、飢饉とか飢餓とかまでを予測して、4~5年に一遍しか産めないような遺伝子の操作があるんだそうです。年がら年中子供を妊娠するようになったのは農耕社会になって安定してからだ。そしたら今度は途端に支配階級というのが生まれて、人のものを取り上げて楽して豚みたいに太っていく支配階級と、奴隷みたいになっていく層が出現すると。そしてしばらくしたら帝国というのが出現していくんです。帝国と貨幣と宗教が下巻のテーマになっているんです。

 もうあんまり話はないけど、紀元後1500年ぐらいからを近代といいます。ヨーロッパ人が船の力で、バスコ・ダ・ガマ(Vasco da Gama、1460-1524年)なんかが1510年ぐらい、1480年ぐらいにインドのゴアにまで到達するんです。1522年にマゼラン(Ferdinand Magellan、1480-1521年)のマガリャンイス、世界一周で、マゼランはフィリピンのあたりで原住民に食べられて死んじゃったけど、1隻だけ戻ってきたんです。それが1522年でしょう。あのころから船の恐ろしい運搬力があるから、船の時代が来ると。ヨーロッパ近代というのが世界を支配した500年なんです。これも日本人は理解したほうがいい。たった500年なんです。ヨーロッパ白人たちが世界を制圧して、やがて植民地主義、やがて帝国主義をつくって、属国群を支配管理していった。


バスコ・ダ・ガマ


マゼラン

 ただその100年前、1400年ちょうどに鄭和(ていわ、1371-1434年)の艦隊というのがあって、明の永楽帝(えいらくてい、1360-1424年)という皇帝がお金をいっぱい出して、鄭和という宦官、官僚に大船団をつくらせて、ずっとマラッカ海峡のほうからインド洋を行って、マダガスカル島まで行ったという。ということは途中、ペルシャ湾の中には入らなかったと思うけど、あの辺をずっと移動してるんです。小さな船は何百隻で、2000隻ぐらいで移動したと。途中の王国で立ち寄ってはたくさんお恵みの財産を与えながら、けんかを仲裁したりして、帝国の意思を示したんです。ちょうど1400年ぐらい6回ぐらいやったというけど。鄭和という人は中国人だけど、イスラム教徒だったというんですよ。イスラム教の力というのがもう1400年にはものすごい力で、世界中に来ていたんです。だからインド商人やイスラム商人たちとのつき合いをしているわけです。


鄭和の大航海

 ところが決定的な違いは、ヨーロッパ人は無知だと、自分は知らないんだと、無知だということを知っていたというんですよ。だから、知りたいという欲望で近代というのをつくっていった。それに対して鄭和たちはそのことを何にも考えなかった。自分とは何者かということを考えないで、ただ目の前の現実で生きていただけなんだ。これがモダン(Modern)、近代というものを持ったヨーロッパと、それ以外の世界の決定的な差だと、そうだと思う。

 サイエンス(science)、スシャンスというのは、最初は、コペルニクス(Nicolaus Copernicus、1473-1543年)とかティコ・ブラーエ(Tycho Brahe、1546-1601年)とかお坊様たちから始まったんですけど。ところがどうも、天体観測をやると地球が太陽の周りを回っているようだとわかってきてしまったんです。しかし80年後なんです、ガリレオがそれをはっきり提案して、裁判にかけられたのは。それじゃあ何でぐるぐる回っていると下に落ちないんだと、地球の下にみんなが落ちないんだ、答えてみろと言われたら、ガリレオも答えられなかったと。それを、数百年後に答えを出すでしょうと言ったんです。わからないことをわからないと言う精神のことを、近代サイエンスというんです。

 ガリレオ(Galileo Galilei、1564-1642年)やスピノザ(Baruch De Spinoza、1632-1677年)たちはレンズ磨き職人なんです。最高級な性能のレンズをつくれるとそれが望遠鏡とかになるわけで、今のハイテクエンジニアなんです。だからお坊様でなくても、修道院の坊主でなくても、都市の中でそういう知識人階級が存在したと。その初めのころの人たちなんです。ヨーロッパ近代というのもが1500年ぐらいから世界中を支配して、今もそれが続いていると。しかしそれもだんだん衰えが見えているということです。次の帝国と古代文明の細かい話は、次回します。

(終わり)

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