「1964」 橋下徹・元大阪市長がアメリカで講演した件、それから売国官僚・高見澤将林(たかみざわのぶしげ)について 2017年4月2日
 アルルの男・ヒロシです。今日は2017年4月2日です。

 日本国内の政局、安倍政権が崩壊するかどうかはまだわかりません。現在の状況としては、森友学園の籠池泰典(かごいけやすのり)理事長が、国会で3月23日に証人喚問を受けて、その後、安倍昭恵の秘書をしていた、経済産業省出身のノンキャリアの谷査恵子(たにさえこ)という官僚が、籠池からの学校建設に関わる問い合わせ取次いだ事が明らかになっています。政権と自民党側は、籠池が証人喚問で話したことが、虚偽であるとして刑事告発に動く姿勢を見せつつ、同時に大阪府が森友学園の経営する幼稚園と保育園が補助金を不正受給していたのではないかと疑って調査を行っています。

 海外のメディアも森友学園事件について、繰り返し報じていますが、安倍政権のモットーは「戦後レジームからの脱却」ということなので、国際社会からの懸念を気にしていないのではないか。


ウォール・ストリート・ジャーナルの社説(3月31日)

 現在のところ、安倍政権が崩壊しそうだという雰囲気ではない。安倍首相夫人である昭恵が、証人喚問あるいは参考人招致などの国会の場に出てくることなく、フェイスブックでの活動報告も控えて、マスコミから逃げ回っている。昨日、1日に安倍晋三と山梨の別荘付近の中華料理屋で食事を秘書官とともに取ったそうだが、何らかの説明をするという動きがあるかもしれない。

 森友問題は、国会では衆参の予算委員会の場で主に追及されてきたこともあり、本予算が3月下旬に成立したことで、野党側は追及する場を失いつつある。野党はすでに共謀罪の法案の審議入りがいつかに目が向き始めています。

 森友問題に関連しては、今後、この問題に関連し、安倍昭恵夫人がグループの学校の名誉校長を努めていた、加計学園グループの大学の獣医学部の設置について、首相周辺が便宜を図ったかということが焦点になるでしょう。加計学園という学校法人の理事長は、加計孝太郎(かけこうたろう)という人物で、安倍晋三との長年のゴルフ仲間です。野党は、加計学園の問題についても何度も取り上げていますが、今のところ決定的に安倍政権に打撃になっていません。

 安倍首相の秘蔵っ子とされる稲田朋美防衛大臣は、戦闘行為が記録されていた、自衛隊の南スーダン派遣部隊の「日報」を防衛省・自衛隊が隠蔽してきたことや、森友学園の顧問弁護士をやっていたことが問題になって窮地に追い込まれましたが、日報問題について、特別防衛監察という内部調査を行うことで、その調査が行われている中では防衛大臣の座に居座るつもりです。

 森友学園問題は、かつての2000年代の第一次安倍政権であれば、閣僚辞任が相次ぎ、内閣がすぐに吹っ飛ぶレベルの政治スキャンダルだったと思いますが、今の安倍政権は、衆参ともに自公で改憲勢力の3分の2を維持しているので強い。安倍政権が実施した「政治主導」と称して、官僚の人事権を一気に掌握してしまっているので、官僚も安倍政権の言いなりになっています。

 安倍政権はなぜ崩壊しないのか、ということを考えてみたいと思います。結論から言うと、「小選挙区制の導入に最大の問題があった」ということだと思います。要するに小沢一郎が始めた1990年代の政治改革の毒が回ってきたということだと思います。小選挙区制度では、公認を受ける候補者が一つの選挙区で一人しかいないので、自然と公認権を握る党本部の権力が強くなります。中選挙区制のもとでは、複数の候補者が当選するので、一つの選挙区に、別々の派閥の自民党の候補が立候補し、競争関係にありました。そこに野党が絡んで選挙が行われていたわけです。

 小沢一郎だけではないのですが、小選挙区制の導入で、日本もアメリカやイギリスのように二大政党制が政権交代を繰り返すことで、日本の政治が近代化されるという議論は1990年から2009年の民主党政権交代まで結構根強くありました。与野党とともに、海外に調査団を送り、二大政党制の定着を研究しました。

 ところが、2009年の政権交代を経て登場した民主党政権は、官僚機構の徹底的なサボタージュと、民主党の未熟さ、加えて東日本大震災のあとの政治混乱によって分裂してしまいました。そもそも二大政党制を唱えた小沢一郎のグループが率先して民主党を割ったりもした。第三勢力として維新の会が出てきました。

 二大政党制の先進国のはずのイギリスに於いても、「保守党一強体制」が確立しています。労働党も第三勢力の自由党も停滞しています。アメリカも二大政党制を壊す独立派のトランプ政権が誕生しています。

 ここまで来ると、二大政党制がすばらしいという議論が最近では全く聞かれなくなり、中選挙区制の時には、自民党が派閥政治を通じて牽制しあっていた時代の方が良かったという声が聞かれるようになった。

 「派閥」というのは政治家を丁寧に育てる教育システムであり、選挙の風に乗って勢いで当選するような「なんとかチルドレン」のような新人議員が跋扈して、政治の質を下げないようにするというしくみでした。かつての中選挙区制では、自民党が常に政権を維持するので、野党は万年野党の存在になってしまいますが、それは野党にとっては与党になれないというマイナス面がありますが、国民生活全体でみると、どこの馬の骨かわからない新人議員を大量に誕生させることもなく、派閥というフィルターを通じて育成されてきた政治家が政治を担うことになるので良い面もある。

 私は小沢一郎が目指した「政権交代可能な二大政党制」というものが、その本家である欧米諸国で崩壊しつつあることを踏まえて考えると、これは1990年の冷戦崩壊後のある時期に生まれた熱病のようなものだった、アメリカの民主党から促された政治構造改革であったと考えます。

 日本の政治というのは、結局は「部族政治」が馴染むのであり、酋長たちが話し合いで決めるのが基本だったのに、無理に大統領制に近い内閣制度を作り出す、小選挙区制を導入したことがマイナス面になったと思います。それを無理に二大政党制に変えようとしたので、政治制度が壊れてしまっている。小沢一郎はそろそろ自らの政治革命の失敗について批判的に総括するべきだと思います。小沢が思っていたほど、日本人は賢くないし、近代人でもない。二大政党制という机上の空論を祭り上げたことに問題がありました。

 小選挙区制では、公認候補、つまり、選挙区の支部長を選ぶ権限は派閥ではなくて党本部にあるので、新人議員は必然的に、党本部・総裁に逆らえなくなる。党本部を握っているのが、安倍晋三であり、萩生田光一であり、いまやその勢力に乗っかって逆らわないのが二階俊博幹事長です。

 安倍政権が長続きしているのは、菅義偉のような安倍政権の過ちを決して認めない官房長官が守っているということもありますし、同時に小選挙区制で既得権者になった民進党が制度に安住していることもありますが、基本的には小選挙区制という制度が生み出した政治の仕組みの変化です。

 そのような中で、もともと大阪自民党府議が作ったグループである大阪維新の会や、小池百合子の都民ファーストの会のような第三勢力がこれからの選挙で一定の勢力を得るでしょう。公明党もますます安倍政権に考え方が近い、それこそマイケル・グリーン詣でを繰り返してきた若手の弁護士や金融業界出身の政治家が次々に出てきている。公明党は創価学会の信者とは益々分裂を見せているようです。

 更に民進党も、もともと極左と見られていた辻元清美議員のような勢力が中道左派勢力のようにみえるほど、中心を右側にシフトしていて、民進党の中には日本会議や保守的な傾向を通じて、「隠れ安倍政権支持派」としか思えない政治家が残っている。蓮舫・野田佳彦体制が、非執行部派の前原誠司や細野豪志のグループ、元小沢系の松野頼久グループなどに分かれている。まとまるにしても「保守二大政党制」を唱えているグループが主導権を握っていくだろうと思います。

 小選挙区制を続けていく動機は自民党だけではなく、野党第一党の民進党にもある。今の選挙制度では小選挙区で落選しても比例代表で復活できるので、ある程度の議席は民進党は確保できるからです。国民の幸せのためには日本という国の風土に合った、酋長政治を踏まえた制度に戻すべきでしょう。実は戦前にも中選挙区から小選挙区になった時期があり、やがて中選挙区に戻されました。戦前の二大政党制時代でも,今の民主党とキャラが似ている立憲民政党が1930年の総選挙に圧勝し,政権崩壊後の1932年の総選挙で大敗することがありました。その後、中選挙区に戻っていますが、ところがその時は、時すでに遅しで、日本の軍国主義は食い止められなかった。

維新の会で大阪市長をやっていた橋下徹は、現在は日本維新の会の顧問として会と付かず離れずの立場にあるが、最近、マイケル・グリーンが日本部長をやっているCSIS(戦略国際問題研究所)で1時間弱の講演をやっていました。私は生中継で見ていました。グリーン自身が「安保マフィアの会合へようこそ」と挨拶で語っていることにもびっくりしましたが、橋下徹が日本語で講演をしたことです。これまで、政治家がCSISに呼ばれる場合には、官僚や側近が事前に英語原稿を準備して、講演は英語で行い、質疑応答だけは日本語で通訳付きで行うということが通例でした。形の上では与党ではない維新がそういう官僚の力を借りられないということなのでしょうが、驚きました。



 橋下徹は、講演で次のように主張している。共同通信の報道。

(貼り付け開始)
 
橋下徹前大阪市長「米は日本に外圧を」「尖閣に血流す覚悟なし」 米で〝気炎〟森友騒動にもクギ
共同通信:2017.3.28

 日本維新の会の法律政策顧問を務める橋下徹前大阪市長は27日、日米同盟について「日本も米国のために血を流すような国にならないことには信頼関係は強固にならない」と述べ、国民の意識改革のために「米国に強力な外圧を掛けてもらいたい」と訴えた。ワシントンの講演で語った。

 橋下氏は「日本の自衛力、軍事力はお粗末だ」と指摘。トランプ米大統領が「『在日米軍撤退もあり得る』と言ってくれれば、軍事力がどういうことか認識できる」と持論を展開した。

 2月の日米首脳会談で、中国が領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島について米軍の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象と確認したことについても「国民は尖閣の重要性を認識していない。(衝突が起きた時に)島のために血を流す覚悟はない」として「茶番劇的なところがある」と皮肉った。

 日本の与野党が大阪市の学校法人「森友学園」への国有地払い下げ問題で攻防を激化させていることに触れ「北朝鮮でミサイルが発射されるかもしれない非常に危機的な状況の中で、わずか数億円の国有地売買を巡って国会が大騒ぎになっている」と語った(ワシントン共同)

 (貼り付け終わり)

 橋下徹の発言は、安倍晋三政権の次にどのような政治が日本において出現するかという、ある種の絶望的な予想をする点で、最近売り出し中のタカ派(本人は「リアリスト」と自称)の国際政治学者の三浦瑠璃の発言とともに注目しなければならないと思っています。橋下は、戦後の日本人のアメリカに対する考え方の変遷を取り上げた上で、「日本人が自分の国は自分で守る覚悟はない」という分析をし、「日本人の意識改革をもたらすために、アメリカに強力な外圧を掛けてほしい」と言った。この発言はこれらの新保守勢力(ネオコン)派が対米自立を唱えつつ、安全保障面に於いてはタカ派を目指す(それを彼らはリアリストと呼んでいる)という点において、実は石原慎太郎や田母神俊雄のような旧世代の思想を衣替えしたに過ぎないものです。日本では良い意味での国際協調派がいなくなり、安倍政権のような幼稚な対米従属派や、橋下徹市長のような新世代の「リアリスト」という対中強硬派が、結局はアメリカの防衛力に依存してタカ派の発言を繰り返しているということでは変わりがない。

 官僚機構の方も、しっかりとアメリカの政権の変化に「従属」しようとしていることがわかってきました。そのことがよく分かるのは、核兵器禁止条約をめぐる安倍政権の国連軍縮退大使の行動です。

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核禁止条約交渉、日本は不参加=「国際社会の分断深める」と軍縮大使-国連
時事通信:2017年3月28日

 【ニューヨーク時事】高見沢将林軍縮会議代表部大使は27日、ニューヨークの国連本部で同日始まった核兵器を法的に禁止する条約の交渉会議で演説し、条約交渉について「国際社会の分断を一層深め、核兵器のない世界を遠ざける」と指摘した。その上で、「現状では交渉会議に建設的かつ誠実に参加することは困難だ」と交渉不参加を表明した。

 岸田文雄外相も28日の閣議後会見で「今後この交渉には参加しないことにした」と説明。安全保障で米国の「核の傘」に頼る一方、唯一の被爆国として核廃絶を訴えてきた日本は条約交渉への参加を見送った。

 27日午前の交渉会議は、オーストリアやコスタリカなどの代表が核兵器の非人道性や条約締結の必要性などを訴えた。これに対し、米英仏中ロなど全核保有国と、米国の同盟国の大半は欠席。さらに、ヘイリー米国連大使が約20カ国の国連大使らと共に条約に反対する声明を読み上げ、核保有国と非保有国との対立を鮮明にした。声明発表に日本は同席しなかった。
 高見沢大使は演説で、今回の条約交渉は「北朝鮮の脅威など、現実の安全保障問題の解決に結び付くとは思えない」と指摘。また、核保有国の協力の下で、廃絶につなげるプロセスが「担保されていない」と問題視した。
 被爆者を代表して参加した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)事務局次長の藤森俊希さん(72)=長野県茅野市=は記者団に対し、日本が交渉参加は困難としたことに「全く賛同できない。非常に残念だ」と反発した。(2017/03/28-11:38)

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 日本政府が去年までのスタンスを翻して、核兵器禁止条約に不参加したのは、何のことはない、アメリカの方針が「核兵器増強」に変わったからだ。

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トランプ氏、核戦力増強を表明 「各国の先頭に」
2017/2/24 11:44 (2017/2/24 11:54更新)
日本経済新聞 電子版

 【ワシントン=川合智之】トランプ米大統領は23日、米国の核戦力増強に積極的な姿勢を示した。ロイター通信のインタビューで「どの国も核を持たないのが理想だが、核保有国があるなら我々は先頭にいたい」と表明。北朝鮮が進める核・ミサイル開発などの脅威の解決策については「(中国が)望めば簡単にできる」と指摘し、北朝鮮に圧力をかけるよう中国に促した。

 トランプ氏の発言はオバマ前大統領ら冷戦終結後の歴代米政権が努力してきた核軍縮からの政策転換の兆しとみられる。(以下略)

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 国連軍縮大使の高見澤将林(たかみざわのぶしげ)。これは言うまでもなく鳩山政権時代に、政権に対するサボタージュをウィキリークスにすっぱ抜かれて、その論功行賞で、安倍政権では官房副長官補に出世した人物です。対米従属派の官僚筆頭で、そんな人物が国連軍縮大使をやっている。これが今の実態です。どうすることもできない。



 安倍首相は4月中も次々と外交予定を途切れないように入れています。下旬にはロシアのプーチン大統領と会談します。どうせ北方領土についての進展は全く見られないでしょうし、月内の日米の経済協議でも日本側が来日する、マイク・ペンス副大統領やウィルバー・ロス商務長官に、麻生太郎がヘラヘラして要求を受け入れるのでしょう。

4月以降に、森友事件や加計学園問題のような新事実が出てきて、アッキード事件が進展するかは今のところ分かりませんが、「二大政党制」という幻想を捨てない限り、日本の政治は良くはならないでしょう。また、安倍政権が倒れても、菅義偉官房長官や麻生太郎副総理が取って代わるだけでしょう。最善の結果で岸田文雄外相が次の総理になることです。野党が政権交代することはのぞむべきではありません。野党にも日本会議や安倍政権にシンパシーを感じている勢力は存在するからです。

 森友学園問題は、政治家として口実として保守思想を利用しているに過ぎない権力者に対して、その保守思想を真っ向から信じてしまった、学園理事長を周りの政治家がおだててはやしたて、それが利用価値がなくなると、つまり政治家としての自分の立場がまずくなると、切り捨てたという話でしょう。その意味では、青年将校を切り捨てた226事件の統制派将校に安倍晋三はよく似ています。安倍晋三にぶら下がることで利益を得られることが重要なのであって、思想を信じているかということは関係ない、ということがこの問題で明らかになったと思います。

 今のところ安倍政権が倒れるという意味での決定的な情報は出てきていないし、官邸はメディアの情報をしっかりコントロールしているし、野党の民進党も共産党も追及が腰砕けに終わっていますし、韓国のように安倍政権に対する大々的な抗議デモは起きていません。安倍政権が盤石なのは、国会において3分の2を押さえているからで、これは第一次政権のときと大きく異なります。

 仮に与野党伯仲している国会では、安倍政権の次に取って代わろうという政治家が出てきて、党内で政局を起こし、それに野党も呼応するという自浄作用が働きましたが、小選挙区制が定着し、チルドレンばかりの新人議員が与党の賛成票を占めるようになれば、「上の言うことには決して逆らえない」という構図になっていくのは当然です。そのようにして、質の低い自民党議員が量産され、一方の野党は四分五裂状態で負け続けるということが続くと、野党から立候補しようとする人もでてこなくなるし、野党といっても維新のような安倍政権・自民党の顔色をうかがいつづける翼賛勢力ばかりが残るでしょう。 結局のところ、今回も安倍首相は逃げ切るのではないかと嫌な気分になります。



アルルの男・ヒロシ拝

 

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