「1891」 新刊のご案内『世界連鎖暴落はなぜ再発したか』(祥伝社)のご案内です。海外の金融メディアは軒並み、「黒田は弾切れ」(Kuroda's Bazooka is out of ammunition)と言い始めています。2016年3月2日
 副島隆彦を囲む会の中田安彦です。
海外の金融メディアは先月下旬から一斉に「黒田のマイナス金利は失敗した。あいつはもう弾切れだ」という論調に転換しています。昨年の米連銀(FRB)の金利上げの直後にドカンと来るのではなく、年明けから大きな暴落とそれに呼応する上げを繰り返しています。

 今回、去年10月末に発売された『再発する世界連鎖暴落――貧困に沈む日本 (Econo-Globalists 18) 』の増補改訂版として、年明けの連鎖暴落の背景をフォローした形で、『世界連鎖暴落はなぜ再発したか』が発売されました。こういう金融本の増補改訂版というのも珍しい企画ですが、最近の情報をフォローしたい読者の方やまだ前の本を読んでいない人向けに発刊されました。



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 まえがきと目次 それから参考までに、最近の金融メディアが黒田日銀総裁をどのように扱っているか、英字新聞の画像を貼り付けます。

(貼り付け始め)
 
 まえがき      副島隆彦 


 今年に入って、いきなりの株価暴落である。

 2016年の年明けから、日経平均株価は暴落を開始した。1月21日には終値で1万6017円の安値をつけた。先物の夜間取引では、1万6000円台を割って、1万5780円が出た。そして2月12日、1万4874円の年初来(ねんしよらい)最安値をつけた。ついに来た、という感じだ。

1月4日の大発会(新年の取引開始の日)から、急激に3000円も下げたのである。NY(ニユーヨーク)ダウも日本と同様に、年明けから暴落を続けている。それにつられて世界の先進諸国も新興国も、株価の暴落が相次いだ。
2015年の8月24日の暴落(一番底(ぞこ))、9月29日の暴落(二番底)があった。このあと一瞬、2万円に戻した(12月1日)。だが、ふたたび下落が起きた。今回の暴落は2015年の暴落に続くものである。まさしく、私が前著『再発する世界連鎖暴落』(2015年11月、祥伝社)で書いたとおり、文字どおり「世界連鎖暴落が再発した」のである。

新聞やテレビのニューズは、この事態に慌(あわ)てて「中国経済の先行き懸念」とか「原油価格の下落」とかの理由(原因)をつけて、「世界同時株安」と報道した。私、副島隆彦が前著の書名に打ち込んだ「世界連鎖暴落」の別名が「世界同時株安(かぶやす)」である。中には見出し(ヘッドライン)に「世界株安連鎖(ヽヽ)」とつける記事もあった(笑)。以下のとおりである。

(引用開始)

  「 世界株安連鎖、日経平均は一時900円超安 」

 週明け1月24日の東京市場では、日経平均は前日比で一時900円超安と株安が進行。中国経済の減速をきっかけとした世界景気への懸念が広がり、前週末の欧米株の大幅下落を受け、主力株への売りが継続した。また、日中の株安を受けてドル/円も約1カ月半ぶりに一時120円台に突入し、下値を探る展開となった。
(ロイター 2016年1月24日)

(引用終わり)

 この本は、私が前著で説明した株、為替、債券(国債)などの世界的な大変動を分析したうえで、最新情勢とこれからの動きを新たに予測するものである。なぜ世界連鎖暴落は再発したのか。その真実を暴き出す。だから前著を緊急に改訂して、株価や為替相場、債券の金利などの数値を直近のものに更新した。図表やグラフも一新した。

 2月9日に、日本の長期金利(10年もの日本国債の利回り)はマイナス0・035%を記録した。史上初の「マイナス金利」が出現して、市場に動揺が広がった。が、黒田日銀総裁は、金利を〝氷づけ〟(超低金利状態)にして日本国債を守りたいのだ。

 このあと株、為替、国債の値段が持ち直したかに見えても、また「世界連鎖暴落」が起きる。1月21日の暴落のあと、日経平均は値を戻して1万7000円台を回復した。が、2月3日に、また559円下げた。日本株は1万7000円台の攻防が続くだろう。前述したように、1万6000円を先物で一瞬、割った。だから「アベノミクス」は大失敗して終わってゆく。

 それでも安倍政権としては、7月の衆参同時選挙に向けて、株高を無理やり演出、画策するであろう。だが、世界的な動きである「連鎖する株暴落」がこれからも続くのである。断続的に続く。さあ、そしてそれからどうなるか、だ。

 私は、2年前には『官製(かんせい)相場(そうば)の暴落が始まる』(2014年11月、祥伝社)を書いた人間だ。政府が自(みずか)ら率先して法律違反の相場操縦(マーケツト・マニピユレーシヨン)(そうばそうじゅう)で、官製相場(かんせいそうば)を仕組んでいる。その〝主役〟は、GPIF(ジーピーアイエフ)(年金積立金管理運用(うんよう)独立行政法人)と、共済年金とゆうちょ・かんぽ資金と日銀ETF(イーティエフ)の「5頭のクジラ」である。
「官製(かんせい)相場」は流行語になった。そこら中で皆が使った。「官製相場なんだってね」と。

 あの本で、私は次のように書いた。

「官製株バブルで投資家や経営者たちを浮かれ騒がせておいて、消費税の追加増税のあと、2015年に日本株が暴落する。ニューヨークでも株式の暴落が起きる。無理やりつくったNYダウ平均株価1万7000ドル台は、1万5000ドル台まで落ちるだろう」

 このように書いた。まさしくこのとおりになった。そしてこのあと起きたのは、まさしく「世界連鎖暴落の再発」であった。

 年明けの2016年1月5日に、日本の財界人が勢ぞろいした新年祝賀会で、「今年は選挙もある。株は2万3000円になる。エイエイオー」と、皆で気勢を上げた。ところが、まさしくこの日から中国の株崩れが起きて、「世界連鎖暴落」が始まった。私の予測を批判したり否定したりできる人間は、もういなくなった。あんなに強気だった者たちが、今はダンマリを決め込んで、自分の値下がりした株を抱えてブルブル震えている。……今さら、「ホントに暴落が来ましたね」とは、とても言えない。自分に対して恥である。

 アベノミクス礼賛(らいさん)で、「安倍首相よ、もっと株価を上げてくれよー。2万500円(ヽヽヽヽ)どころか2万5000円(ヽヽヽヽヽ)にしてくれよー」と、夢と願望で縋(すが)りついていた個人投資家たちは、青ざめている。投資の含み損を握り締めオロオロしている。私が「気をつけなさいよ、またハシゴを外(はず)されますよ」書いたとおりではないか。こういう時は、周(まわ)りは冷たく、「だから言わんこっちゃない」とか、「ほら見たことか」とか、「だから言っただろう」と言う。これらの日本語がピッタリだ。

               副島隆彦(そえじまたかひこ)


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    目次

 まえがき
1章「世界連鎖暴落」はまだまだ続く
●金融危機の先に戦争が待っている
●〝ボラティリティ相場〟とは何か
●私が投資家たちに言ったこと

2章 守り抜け個人資産! 最新・金融予測
 これからの株の動き
・GPIFの損失(評価損)は20兆円
・〝どん底値〟で拾いなさい
 円・ドル相場はどうなるか
・米(ドル)、欧(ユーロ)、日(円)の〝固定相場〟の秘密
 金(きん)のこれからの値段
・1オンス(約31グラム)=1150ドルの攻防が続いた
 これからはダイヤモンドで資産保全せよ
・バブル期の日本人が持ち込んだダイヤモンドが、外国に流出している

3章 〝年金バクチ〟に失敗したGPIFの秘密
●バクチに向かない役人が株に手を出して失敗を重ねる
●世界は「中国発の恐慌」に青ざめた
●「針のむしろ」に乗るイエレンFRB議長
●2015年9月2日、私は「GPIFの2000億円投入」を予測した
●日本株を2000億円分買った「4頭のクジラ」たち
●やはり年金の半分が吹き飛ぶだろう
●GPIFは、まだまだ日本株を買い上げる気だ
●日本郵政グループ3社の株式はどうなったか
●あのNTT株の暴落を思い出せ

副島隆彦の特別インタビュー
 現役ファンド・マネージャー2人が語る
「リーマン・ショック直前と似てきた」
●株式市場に逆襲されたGPIF
●深刻な内部対立が始まった
●GPIF運用委員会のトップと敵対する人物とは
●マーケットでの運用経験がない「最高投資責任者」
●政府の内部でも「対立」が発生した
●ロボット・トレーディングが市場を破壊する
●HFTの「フラッシュ・クラッシュ」は、こうして起きる
●第二のリーマン・ショック、そして大きな戦争(ラージ・ウオー)へ

4章 そして世界は新たなる恐慌前夜を迎える
●5頭目のクジラ、日銀が株と国債を買い支える
●空売りをする個人投資家たち
●トヨタの株価で日本経済の全体像が分かる
●ネット・バブル企業の錬金術vs.実需でモノをつくって日本を支える会社
●なぜアップルの時価総額と売上げは喰い違うのか
●民間から米政府に回った「毒」がはじける
●世界大恐慌の震源地はコンピュータによる長高速度取引だ
●「中国が米国債を売ったらしい」というツイート

5章 統制経済の時代と貧困に沈む日本
●アメリカの累積債務問題で、ベイナー下院議長は泣いた
●もう「Q(キユー)E(イー)4」は許されない
●先進諸国の余剰品が新興国を強くする
●なぜ誰も「日本は貧乏になっている」と言わないのか
●金(きん)の値決めで手を組んだイギリスと中国
●いよいよ金融抑圧(ファイナンシャル・サプレッション)が始まった

(貼り付け終わり)

 中田安彦です。 さて、黒田マイナス金利の本質は、国債金利をマイナスにしてでも、長期金利の上昇を防ぐ、国債価格を維持するという意味で、「国債管理政策」であるということをこの本や掲示板で副島先生は書いています。

 副島隆彦が「焦土作戦(しょうどさくせん、スコーチド・アース )といっているのは、黒田をはじめとする日銀の指導層やおそらく財務省も含めて「国民のことなど知らん。国債を守ることが国家を守ることだ」ということです。

 黒田総裁が山本五十六だとすると、黒田は安倍晋三=東條英機に「2年や3年なら大暴れしてご覧に入れます」と言ったのでしょう。実際、アベノミクスの敗戦は本格的に去年の日銀の「追加措置」が不発に終わったあたりから始まりました。マイナス金利の不発は、おそらく私の勝手な理解では「レイテの敗戦」に相当するものだと思う。そうなると、日銀が大日本帝国だとすると、あとは本土防衛、国体護持ということになってくる。そのためのマイナス金利じゃないか、ということです。

 それを金融抑圧(ファイナンシャル・リプレッションとかサプレッション)というのであって、この言葉は数年前に欧米の金融メディアでよく聞かれました。ところが知らない間にアベノミクスの出現で忘れられてしましたが、ここにマイナス金利とともに復活、ということです。

 マイナス金利に効果がないということは黒田もよく知っているはず。にも関わらずそれをやるということはやはり金融抑圧であるということなんです。

 最近の金融メディアはフィナンシャル・タイムズが特に顕著ですが、もはや「ヘリコプター・マネー」の導入を真顔で論じ始めています。これはヘッジファンドマネジャーのレイ・ダリオ(ブリッジウォーター)が言い始めたことです。
 
参考:【コラム】デフレの悪魔払いもまだなのに米利上げ?-ギルバート - Bloomberg http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NUGNHXSYF01U01.html

 FTのマーティン・ウルフが、「ヘリコプターマネーの日が来るのも遠くないかも」というコラムを先週の水曜日に書きました。ダリオの言葉として、「マイナス金利は無いよりましだが、だからといってそれで預金者や貯蓄者に設備投資をファイナンスさせる資産の購入に走らせることなんてできっこないよ」と言ったと紹介して同意しています。

 マイナス金利になると住宅ローンが借りやすくなると日銀は宣伝していますが、家を買わない一般市民のことは考えていない、わけです。(週刊誌によると黒田はさいきん家を買ったそうですが)いずれにしても金融政策の無力さが露呈している、というわけです。結局、財政政策しかないが、財政当局が動かないなら、中央銀行がヘリコプターマネーをやるしかないじゃないか、というのがウルフのコラムの主旨です。財政出動を促す論調はEconomistも展開しており、これがIMF主流派の意思でしょう。

参考:Helicopter drops might not be far away - FT.com http://on.ft.com/21gEzwF

 最近の黒田総裁は海外メディアではこんな扱いです。これはウォーストリートジャーナルです。これがヘッジファンドの円高投資戦略を助長しているんだろうと思います。最初の記事は「黒田バズーカ弾切れかも」という見出しで、もう一つは「日銀がマイナス金利(ネガティヴ・レイト・ポリシー)に対するネガティブな反応に困惑」という見出しです。ふたつ目の見出しは完全に日銀を馬鹿にしています。


 

黒田総裁は思わず国会に呼ばれた時に、「アベノミクスの根幹である金融緩和政策には意味がなかった」と喋ってしまっています。以下の記事は日刊ゲンダイの紙面ですが、同じ内容はブルームバーグの英語版でも報じられていました。



 黒田日銀総裁の「ブーゲンビル」(山本五十六が撃墜され死んだとされる戦場)はいつなのでしょうか、注視していきたいと思います。

中田安彦拝

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