「1581」 『BIS(ビーアイエス)国際決済銀行 隠された歴史』(アダム・レボー著、副島隆彦監訳、古村治彦訳、成甲書房、2016年)が発売になります。古村治彦記 2016年1月21日
 SNSI・副島隆彦を囲む会研究員の古村治彦です。今日は2016年1月21日です。

 今回は、2016年1月22日に発売となります、『BIS(ビーアイエス)国際決済銀行 隠された歴史』(アダム・レボー著、副島隆彦監訳、古村治彦訳、成甲書房、2016年)を皆様にご紹介いたします。





 私にとりまして、今回の本は、『バーナード・マドフ事件』以来、2冊目のアダム・レボーの著書の翻訳となります。アダム・レボーは、調査ジャーナリストとして欧米で高い評価を得ています。また、前作の『バーナード・マドフ事件』は大きな反響をいただきました。

 今回、アダム・レボーがテーマとして選んだのが、国際決済銀行(Bank for International Settlements、BIS)です。国際決済銀行、BISと言われても、一般の私たちにはピンときません。「名前は聞いたことがあるけど、どんな銀行なのか知らない」という方がほとんどだと思います。


国際決済銀行本部

 国際決済銀行は1930年に創設された国際機関であり、各国の中央銀行総裁たちが集まって様々な議題について話し合う場所であり、各国の中央銀行の取引の仲介を行う銀行で、「中央銀行総裁たちのクラブ」「中央銀行のための銀行」と呼ばれています。

 この地味な国際決済銀行が実は現代史において大変重要な存在であったというのが今回のレボーの発見です。それは、戦前から戦時中のナチスの登場と台頭、そして戦後のヨーロッパ統一に向けたプロセスの裏にはBISの存在があった、というものです。レボーは、粘り強い取材で、BISの姿を詳細に描き出しています。


主要な登場人物であるヒャルマー・シャハト(右)と共に歩くアドルフ・ヒットラー


ヨーロッパ統合の基礎を築いたアレクサンドル・ラムファルシー

 500ページを超える大部になりましたが、読み応えのある内容の本になっております。お読みいただけましたら幸いです。宜しくお願い申し上げます。

 ここからは、副島隆彦先生による監訳者まえがき、目次、訳者あとがきを掲載します。

(貼り付けはじめ)

●監訳者まえがき

 この度、「欧米の金融専門家たちの多くが読んでいる」と評判の高い大作『BIS国際決済銀行 隠された歴史』が邦訳され、出版されることになった。

 著者アダム・レボーの前作『バーナード・マドフ事件 アメリカ巨大金融詐欺の全容』(2010年、成甲書房)に引き続き、今回も私の弟子の古村治彦君が正確に、かつ丁寧に読みやすく翻訳した。それを私が細部まで徹底的に監修した。本書は古村君にとって六冊目の翻訳書となる。

 著者アダム・レボー(Adam LeBor)の著書の邦訳は、『ヒトラーの秘密銀行 いかにしてスイスはナチ大虐殺から利益を得たのか』(鈴木孝男訳、KKベストセラーズ、一九九八年)、『バーナード・マドフ事件』に続いて三冊目となる。レボーの著書はいつも私たちに新鮮な驚きと発見を与えてくれる。本書も前作に勝るとも劣らない力作となっており、日本の読書界に大きな衝撃をもって迎えられるだろう。

 本書の白眉は何と言っても、これまで日本ではあまり知られなかった国際決済銀行(Bank for International Settlements)の創設から現在までの歴史の全貌を明らかにしたことだ。著者アダム・レボーは、ドイツの第一次世界大戦後の賠償金支払いのために創設された国際決済銀行(BIS)が、その創設の目的から外れ、いかにナチス・ドイツの戦争遂行と、ドイツの戦後復興、そして欧州統合において重要な役割を果たしてきたかを余すところなく描いている。

 加えて、私が注目したいのは、このBISが、私がこれまでつとに指摘してきた、世界官僚同盟(World Bureaucratic Union)の中心的な役割を果たす重要な機関であるという点だ。著者アダム・レボーは本書の「はじめに」で次のように書いている。この部分はBISの本質をずばりと衝いている。

 中央銀行の総裁たちは、自分たちのことを金融の分野における「高僧(priest)」だと思い込んでいる。また彼らは、自分たちを通貨に関する秘密の儀式を執り行い、金融に関する祈祷を行う「高級テクノクラート(technocrats)」だと考えている。こうした仕事は、ほんの少数のエリートにしか扱えないものなのだと、高僧である各国の中央銀行の総裁たちは本気で考えているようだ。(本書26ページ)

 また、アダム・レボーは、政策協力(もしくは政策協調)という用語をこの本の中で数多く使っている。政策協力は、英語ではpolicy coordinationと言うが、これは簡単に言えば、「世界各国で同じ政策を行う」ということである。この世界統一政府にまで突き進む動きを進めているのが、私が「ひとりひとりは顔ナシ君たち」と呼ぶ、世界各国の官僚たちなのである。この世界各国の官僚たちが集まって、政策協力について話し合い、決定する場がBISである。

 官僚やテクノクラートたちは、誰よりも頭が良い自分たちが考え出した政策を、世界を管理するために世界中で実行したいのである。レボーが言うとおり、彼らは「お坊様」階級であり、自分たちのことをずば抜けて頭が良いと考えている。そして、自分たちの頭の良さを使って、人々を管理してあげることが良いことなのだと本気で考えている。しかし、彼ら官僚は民主的な選挙によって選ばれた政治指導者ではない。彼らの内側は秘密のベールに覆われている。そんな人間たちが私たちを管理している。

 たとえば、BISには、バーゼル銀行監督委員会(Basel Committee on Banking Supervision)という下部組織がある。ここで、世界各国の民間銀行が国際業務を行うには自己資本率が8%なければならないとする、例の悪名高い「BIS規制」が決定されたのである。これも政策調整の一種であり、世界官僚同盟の銀行管理の一種となっている。

 BIS規制には何の法的強制力もない。各国の法律による取り決めもない。それなのにBIS規制に従わない銀行は国際業務から締め出される。実質的な強制力を伴った取り決めなのである。日本の各銀行は、1990年代に入って、この自己資本率八%を達成するために「貸し渋り」や「貸しはがし」を行う羽目になった。それで日本は決定的な〝金融大不況〟に陥った。このようにして、BISとそこに集まるテクノクラートたちは、国際金融や銀行業務の面から世界管理を進めている。

 しかし、他面から見ると、国際金融や財政の分野における「偉いお坊様」である中央銀行総裁というのは辛い立場にある。各国の政府は自国の逼迫した財政を賄うために背に腹は代えられずに、金融緩和でジャブジャブとマネー(通貨量)を市場に流して、結果として激しいインフレを引き起こす。この圧力に対して、BISの高僧たちは何とか対抗をする。が、なかなかに大変なようだ。

 黒田東彦・日銀総裁は、先進主要国の中央銀行総裁たちと安倍晋三首相との間で股割きの苦悩を味わっている。2015年3月10日付、日経新聞は、「銀行、(さらに)国債保有(をする)なら資本増強を」という記事を掲載した。これは、バーゼル委員会が、金利上昇リスクを抱える資産を保有する民間銀行は、それに対応するために新たに自己資本を積み増ししなくてはならない、というBIS規制案を出した。英独が賛成し、日米は反対しており、協議は難航しそうだ。

 さらには、2015年3月27日付、朝日新聞は、「安倍首相と黒田総裁の間に吹くすきま風」と題する記事を掲載した。この記事の内容は、2015年2月12日に行われた経済再生諮問会議の席上で、黒田総裁が、自分が出席したバーゼル銀行監督委員会での議論の中で、「日本国債はリスク資産になりうる」という意見が出たことを紹介した。この黒田総裁の発言は「議事録から削除された」という。

 アベノミクスの「三本の矢」の一本であった金融緩和について、バーゼル委員会は「危険だ」と判断し、それをお仲間である黒田日銀総裁を通じて、日本に伝えたことになる。

 黒田日銀総裁にしてみれば、バーゼル委員会での主張の方が真っ当であり、もともと〝物価の番人〟である中央銀行が、物価上昇のために、リスク資産となった国債を政府からどんどん買い上げて、紙幣を無制限に市場にジャブジャブ流す政策は危険であり、間違っていると考えているに違いない。将来に禍根を残す。昭和恐慌(昭和5〜8年、1930〜1933年)の痛い轍を踏むことになる。

 ところが、2015年5月29日付、ロイター通信は、「(日本は)物価目標必達で断固たる姿勢、リスク看過できない=黒田日銀総裁」という記事を掲載した。この記事は、前日28日に黒田総裁がBISの年次総会で講演を行い、そこで「日本は2016年前半に物価目標2%を達成するが、それに対するリスクは看過できない。それでも目標達成のためには追加の緩和も行う」と発言した、というものだ。その後、日銀によるさらなる金融緩和は行われていない。黒田総裁は、安倍首相に〝面従腹背〟の態度で臨むと決めたようだ。

 BISのあるスイス第三の都市バーゼルで、各国中央銀行総裁たちは、「日本が行っている異次元の金融緩和、非伝統的な手法は間違っているのではないか」と話し合っているに違いない。しかし自国に戻れば政治家たちの圧力を受ける。

 今なお、国際金融や財政における中央銀行総裁たちの国際的なネットワークである世界金融官僚同盟の力は絶大だ。スイスのバーゼルにあるBISがその中心地(震源地)であることを本書は描ききっている。

                             2015年12月
                             副島隆彦

=====

●目次

監訳者まえがき

はじめに

第Ⅰ部 資本こそ全て

第1章 バンカーたちの夢の銀行
世界大戦の賠償問題
魔術師ヒャルマー・シャハト
国際決済銀行の構想

第2章 バーゼルに生まれた秘密クラブ
BISをめぐるドイツとアメリカ人脈
ついに誕生したBIS

第3章 各国の国益に翻弄される国際銀行
BISを利用すると決めたドイツ
アメリカ政府の不参加とナチスの台頭
ウォール街の思惑

第4章 ナチスに利用されるBIS
変質していくBIS
暗雲たれこめるヨーロッパ
ナチス・ドイツの略奪ビジネス
スペイン内戦の余波

第5章 ナチス・ドイツの侵略に加担したBIS
チェコ全略奪とBISの官僚主義
金塊であれば何でも受け入れるBIS

第6章 ヒトラーのために働くアメリカ人銀行家
ヨーロッパで暗躍するアメリカ人たち
侵された中立性

第7章 戦争で儲けるウォール街
情報戦に巻き込まれた総裁マッキトリック
第二次世界大戦とウォール街

第8章 生き残りを懸けて手を握る
監視された有力財界人
訪れた解散の危機
戦後を見据えた動き

第Ⅱ部 ドイツ連邦という帝国

第9章 米国から欧州へ──連帯せよ、さもなくば滅びるのみ
ヨーロッパ再建に向けた動き
新たな役割を見つけたBIS

第10章 何もかも許される
アーリア化の清算が進まないドイツ
ナチスが立てた戦後計画
免罪された戦争犯罪人たち

第11章 ドイツは不死鳥のごとく蘇る
ヨーロッパ統合への道
統合はドイツのために
統合の裏で暗躍するアメリカ

第12章 机上の殺人者たちの台頭
ドル危機と防衛策
過去を抹消した銀行家ブレッシング
国際金融で機能するBIS

第13章 そびえ立つバーゼルの塔
ユダヤ人老銀行家の死
バーゼルのタワー建設
メキシコ債務危機とBIS規制
統合に向けた経済的な動き

第Ⅲ部 金融溶解

第14章 第二の塔
ナチスが構想したヨーロッパ統合
単一通貨ユーロに向けて
BISを利用しようとするアメリカ

第15章 全てを見通す目
グローバライゼーションとBISの伸張
BIS傘下となった欧州中央銀行
中央銀行総裁たちの同族意識

第16章 傷ついた要塞
国際金融界の怪物の誕生
金に回帰する世界とBIS
進むべき道を求めて

献辞
訳者あとがき
参考資料

=====

●訳者あとがき

 本書『BIS国際決済銀行 隠された歴史』は、Tower of Basel : The Shadowy History of the Secret Bank That Runs the World (New York : Public Affairs, 2013)の全訳である。

 著者であるアダム・レボー(Adam LeBor)には、これまで二冊の邦訳書があり、これで三冊目となる。私は前回の『バーナード・マドフ事件 アメリカ巨大金融詐欺の全容』(成甲書房、2010年)に続いて翻訳を担当した。アダム・レボーの作品を翻訳することは、翻訳家として新たな発見に溢れる喜びと楽しみの多い作業であった。

 レボーは今回、これまで実態が明らかにされてこなかった、スイスのバーゼルにある国際決済銀行(Bank for International Settlements, BIS)に挑んだ。そして、レボーはいつも通りの粘り強い取材と、遠慮のない筆遣いで国際決済銀行(BIS)の歴史と実態を明らかにした。

 国際決済銀行については、私を含め読者の皆さん方にとっても、新聞で名前は見たことがあるが、何をしているかよく分からない存在ではないだろうか。

 BISは、元々は第一次世界大戦後の敗戦国ドイツの賠償金支払いを円滑に進める機関として、1930年にスイスのバーゼルに設置された国際機関である。BISは、世界各国の中央銀行が保有する金を預かり、その信用の上に、資金の決済を円滑に行うための「中央銀行のための中央銀行」としての役割を持つ。各国の中央銀行総裁たちが集まって政策について協議するための「中央銀行総裁たちのためのクラブ」という役割を果たすものとなった。この二つの役割は現在も変わらない。

 本の訳出作業中、以下の記事が出た。その内容は、イングランド銀行が、第二次大戦中にナチス・ドイツが侵攻したチェコスロバキアが保有していた金を売却することに協力したというものであった。本書第五章「ドイツの侵略に加担したBIS」の中で、アダム・レボーは「チェコスロバキア金事件」として、この事件を詳しく取り上げている。この事件こそはBISの性質をよく表している。まずは以下の新聞記事を読んでいただきたい。

「英中央銀、ナチスの金塊売却協力 公開歴史文書で判明」【ロンドン共同】
 英中央銀行のイングランド銀行が1939年、ナチス・ドイツがチェコスロバキア中央銀行から略奪した金塊を売却するのに協力していたことが、イングランド銀行が公開した歴史文書で明らかになった。31日付の英各紙が報じた。英紙フィナンシャル・タイムズによると、金塊は現在の価値で7億ポンド(約1000億円)超に相当し、同紙は「中央銀行の歴史上、最悪の出来事の一つ」と評している。歴史文書はイングランド銀行により1950年にまとめられたが、30日に公開するまで明らかにしていなかった。      (共同通信2013年7月31日)

 1938年3月にナチス・ドイツはチェコスロバキアに侵攻し、スデーデン地方を併合した。当時、チェコスロバキア中央銀行は、保有する金を国外、具体的にはイングランド銀行に預けていた。保有する金の安全を守るためであった。そのため、チェコスロバキア国内には金がほとんど残っていなかった。そこで、ナチス・ドイツはチェコスロバキア中央銀行に対して、イングランド銀行に預けてある金を引き渡すように要求した。

 当時のイングランド銀行総裁はモンタギュー・ノーマンで、BIS創設のアイディアを思いついた人物であった。そして、当時のBIS総裁はオランダ人のヨハン・ウィレム・ベイエンであった。彼らは、「BISは政治から中立である」、「手続きや書類に不備が見つからない場合は依頼を実行する」という原則を振りかざし、チェコスロバキア中央銀行が、イングランド銀行にあるBIS名義の口座(この口座はさらに内部で各国中央銀行名義の口座に分かれていた)に保有していた金23.1トンを、同じくBIS名義の口座内にあるドイツ帝国銀行名義の口座に移動させたのだ。

 一言でいえば、BISはチェコスロバキア中央銀行が持っていた金、チェコスロバキア国民の資産であった金をナチス・ドイツに引き渡してしまったのだ。ドイツはこの方式で、侵攻したヨーロッパ各国の金を略奪し、それをBISに送り保管してもらった。このように、BISは戦時中、ナチス・ドイツに便宜を図っていた。このことをレボーが白日の下に曝した。イングランド銀行が記事にある発表をしたのも、本書の出版があったからではないかと私は考えている(本書の原書版が出版されたのは2013年5月28日である)。

 このチェコスロバキア金事件以外にも、BISは歴史的に見て、ドイツに対して様々な便宜を図ってきた。第一次世界大戦後のドイツの賠償金支払い問題の解決から始まり、戦時中のドイツに対する便宜供与、そして、戦後はドイツの経済復興とヨーロッパ統合をBISは推進した。BISは、戦後ドイツの経済復興のために、欧州決済同盟(EPU)の創設、そして欧州統一通貨ユーロ(Euro)の誕生の際に深く関わった。こうした欧州統合を推進する様々なプロジェクトは、BISのテクノクラートたち、具体的にはパー・ヤコブセンやアレクサンドル・ラムファルシーの活躍があってこそ成功したのだ。レボーはこのことも本書の中で描き切っている。

 私は本書の訳出作業を進めながら、良くも悪くもヨーロッパの現代史は、ドイツをどのように扱うかの、「ドイツ問題」をどう解決するかに費やされてきたと考えるようになった。そう考えると、創設以来、ドイツとの深いかかわりを持つBISが、ヨーロッパ現代史で重要な役割を果たしてきたことに合点がいく。

 アダム・レボーが書いているように、BISは極度の秘密主義であるから、その姿はこれまで私たちには見えてこなかった。しかし、「その隠された歴史」が本書で明らかになることで、その一部が白日の下に曝されることになった。本書はまさに画期的であり、これまでのヨーロッパ現代史理解に一石を投じる問題作だ。
  
                             20115年12月
                             古村治彦

(貼り付け終わり)

 是非、手に取ってお読みください。宜しくお願い申し上げます。





※ブログ「古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ」にも紹介文を掲載しています。お読みいただければ幸いです。宜しくお願い申し上げます。アドレスは以下の通りです。↓

http://suinikki.blog.jp/


(終わり)

copyright(c) 2000-2009 SNSI (Soejima National Strategy Institute) All Rights Reserved.