「1411」副島隆彦新刊金融本『帝国の逆襲―金とドル 最後の戦い Empire Strikes Back, Again.』(祥伝社)が発売されました。今年前半から中盤の主な金融ニュース(TPP、シェールガス、金価格の急落についても)を副島隆彦独自視点で分析しています。2013年11月16日
 副島隆彦を囲む会の中田安彦です。今日は2013年11月16日です。孫崎享先生と副島隆彦先生の対談DVDについては現在編集中です。

 今回は、すでに書店で発売中の副島隆彦経済金融本の最新刊である『帝国の逆襲―金とドル 最後の戦い Empire Strikes Back, Again.』(祥伝社)の内容を簡単にお知らせします。



 なんだかスターウォーズみたいな題名です。まずは著者自ら内容を解説した「まえがき」を載せます。

(貼り付け開始)


まえがき


 この本は、どうやら「帝国の逆襲」が起きている、という本である。

 帝国とはアメリカ合衆国だ。今のアメリカは、金融・財政面で自分が生き延びることで必死である。10月1日から government shutdown(ガバメント・シャツトダウン) が起きた。70万人の連邦政府(フエデラル・ガヴアメント・)職員(エンプロイー)(すなわち国家公務員)の一時解雇が始まった。しかし、この危機をオバマ政権は乗り切る。もうすっかりお金(財政資金)が無(な)くなっているアメリカは、世界中の国々を自分のために喰(く)いものにする。自分が生き延びるためだったら何でもする。この考えは、経営者や投資家たちには当然分かることである。

 アメリカは今の危機を何とか乗り切って、あと2年弱はこのまま生き延びるという戦略で動いている。この11月、12月中にもアメリカの株がふたたび上昇したり、国債(債券市場)で危機が起きたり、為替の変動もあるだろう。だが大きなところでアメリカは、2015年の1月、2月まで大きな危機を先延ばしにした。

 オバマ政権内の合言葉(掛け声)は「中間選挙(ミツドターム・エレクシヨン)を乗り切ろう」である。アメリカの中間選挙というのは統一地方選挙のことで、上院議員や州知事たちの改選もある。それが来年、2014年11月に行なわれる。それまであと1年ある。そして来年を越して、2015年に入ると大きな危機が押し寄せる。それは世界的な金融危機だ。その前にヨーロッパ、特にスペインとイタリアの金融市場(マネーマーケツット)と財政(フアイナンス)(政府の会計)が崩れる。

 だから今のアメリカは、自分の生き残りのために、またしても日本を騙(だま)して「オリンピックを東京にやらせて、おだてて、また金(カネ)をうまい具合に引き出そう」と考えている。それで〝オリンピック抱き合わせ増税〟を計画どおりやった。安倍晋三首相が10月1日に、計画どおりに消費税率の8%への値上げを発表した。

 「日経平均は2万円になる」「日本の景気は回復して明るい未来が待っている」と囃(はや)し立てて、自分自身の厳しい足元の現実を見ようとしないで、カラ騒ぎのアベノミクスの大宴会を続けたい人はやってください。また痛い思いをするだけだ。私の知ったことではない。

 私はこのように、あえて日本の資産家や経営者や投資家に嫌われることを書いている。私の本の読者が減ることを望んでいるわけではない。それでも私は人騙しのウソつきではないから、本当のことを書くしかない。これまでの空虚な浮かれ騒ぎは、麻薬を吸っているような、気分、気持ちを高揚させるだけのものだ。長いデフレ不況から脱出できないものだから、「安倍さん。ウソでもいいから希望を与えてくれよ。ちょっとはいい思いをさせてくれよ」と、政府(の指導力)に縋(すが)りついているだけだ。どうせ政治は何もやってくれない。自分のことは自分でするしかないのだ。私はこのように真実だけを書いて、冷静に近未来(きんみらい)(1、2年後)の金融・経済予測をやってゆく。

 アメリカのオバマ大統領は、だからこのまま1年後の2014年11月を乗り切る。そして2015年の1月、2月から大きな危機が来る。そのあとは、もうオバマは自分の知ったことではない。2016年には次の大統領選挙が始まる。

 この本では、イエレン新FRB議長よりも、4年前の2009年10月に就任して、日本の金融と財政を上から動かし、実質的に命令を下してきた一人のアメリカ人女性官僚に光を当てる。米財務省キャリアの女性である。名をラエル・ブレイナードという。この女官僚は米財務次官をこの10月まで丸4年務めた。この11月からFRB副議長になった。だからイエレンとこの女の激しい内部抗争が起きる。ブレイナードがこの4年間、日本の財務省の官僚トップたちを上から脅し上げ、顎(あご)で使って日本を実質的に動かしてきたのだ。このことは第2章で説明する。

 イエレンは学者である。彼女の夫のジョージ・アカロフが重要だ。アカロフは2001年にノーベル賞をもらった経済学者だ。この夫婦がこれからFRBの金融緩和の継続やら引き締めをやるので、市場とのケンカになる。この二人の秘密については第3章で書く。

 なぜ帝国の逆襲が起きているのか。ここで6つ挙げておく。

1 日本をおだてる東京オリンピック決定(9月8日)と増税の抱き合わせ
2 株価の吊り上げによる米国債暴落の阻止
3 金(きん)の売り崩しによるドル防衛
4 新興諸国いじめ(資金をアメリカに引き上げる)
5 ヨーロッパ危機(アメリカより先に金融崩壊させる)
6 米不動産価格(住宅市場)の計画的な吊り上げ

 以上の6つの点で、「帝国の逆襲」の有(あ)り様(さま)を描いてゆく。アメリカはこのようにして、自分の危機を先延ばしにすることで生き延びる。喰いものにされ、借金をつけまわしにされる世界中の国々(日本がその代表)はたまったものではない。

 それでもこれが超大国(世界帝国)のやり口である。このことを見抜いたうえで、日本が生きていく道を私たちは考えなければいけない。

 2013年11月 
副島隆彦(そえじまたかひこ)

(貼り付け終わり)

 
 この本では、米国が財政危機にあるなか、外交・金融の場面で、属国である日本をさらにぎゅうぎゅう締めあげて、さらに新興国を更に締めあげて、アメリカ本国にカネを逆流させようとしている、そのことによって米国は立て直しを図る(=逆襲)に出ているという内容です。それらを柱に、上で紹介されている(1)~(6)の金融経済がからむ諸論点について、おなじみの「副島視点」で解説そして今後の予測をしてあります。

 副島流に米財政の破綻シナリオを図式化するとこうなるというのが図表で掲載されています。

(1)議会の立ち往生(キャピトル・グリッドロック)=フィスカルクリフ(財政が崖から落ちる危険性)
(2)ガバメント・シャットダウン(政府支払いの停止、不能)※現在は一時的にここまで来た

(3)各種補助金の支払い遅延、停止(ディレイド・サブシディーズ)
(4)不満が鬱積してギュウギュウ詰め状態の経済(インパクテッド・エコノミー):各種手数料、経費の上昇に跳ね返る
(5)一国経済の破綻(カタストロフィー)

 このように段階を考えることができ、現在は(2)の段階で踏みとどまっているということです。しかし、先日のニューヨークタイムズなどを読んでいますと、貧乏人向けの政府の食料チケットである「フードスタンプ」にまで財政削減の影響が及んでいるという指摘もあります。貧乏人の方から「インパクテッド」になってい来そうな感じで、それは日本でも消費増税という形で実現してしまいます。無論、富裕層には彼らなりに襲いかかってくるのでしょうが。(http://www.nytimes.com/2013/11/08/us/cut-in-food-stamps-forces-hard-choices-on-poor.html)


 安倍政権の主要な右翼政治家がアホなネット右翼らのブログを使って、生活保護費の問題をことさらに取り上げるのは、「大衆の不満」を煽り立て、わかりやすい標的を用意することで負担増なり支出削減容認するムードに誘導するパブリックアクセプタンス(嫌なことを受け入れさせる広報)のやり方なんでしょうね。

 また、この『帝国の逆襲』では、個人的にはカート・キャンベル元アジア太平洋担当国務次官補の「悪妻」である、米財務省官僚のラエル・ブレイナードが、米FRB副議長になるという予測の部分です。実際にこの本が出た少し後から副議長ではないですが、ガヴァナーつまりFRB理事になるために、米財務省次官を辞めたという米報道が出ていることが重要だと思いました。いかにもアメリカドラマの「デスパ妻」に出てきそうな中年熟女の悪そうな女です。以下のように、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)で11月4日に「FRB理事へ」という記事が報道されています。


WSJ11月4日付け記事


現在のFRB理事会の陣容。副議長がイエレン

 その他、この本では金価格暴落の原因であるのが、金実物の売却だけではなく、実はもっと大きな要因としてゴールドETFという金融商品の売り崩しが起きていて、この勢力と、金を実物資産で保有しょうとする(「現受け」)勢力の戦いがあることが注意して読んでほしい部分です。このへんの金ETFの記事は海外の「英FT」などの金融メディアにもよく出ています。

 あとはシェールガスについての記述は、「環境リスク」について詳しく解説されています。一部は日経新聞などでも報道された内容も含みますが、浮かれ騒いでいるさなかでリスクというものをはっきりと認識しておくことは良いことだと思います。

 さらに現在進行中のTPP交渉についての記述が私は金融経済に興味のない人でも読んでおいた方がいい内容が含まれていると考えます。それは以下の様な記述です。

(引用開始)

 TPPの”自由競争”の名で打撃を受けることになる全国の各農産物の生産農家の団体は、右往左往したままつんぼ桟敷(さじき)に置かれて、バラバラに成って「TPP反対」の筵旗(むしろばた)を上げる勇気さえなくなっている。

 あとは今のまま補助金をもらえるかもらえないかで、農水省が間に立って、農水官僚たちによる個別の業界指導のような形になっている。だが、TPP交渉それ自体が農業各部門への巨額の補助金(サブシディ)を大幅に切りまくり、大削減することが目的だ。日本の本当の生産農家に対する、農民殺しの動きが続いてゆく。

『帝国の逆襲』(214ページ)
(引用終わり)

 まあそのとおりだなあと思います。ついでに言えば、日経新聞にも出ていましたが、農協はTPP反対で意見が対立していたはずのもともとTPP推進派の経団連と対話を始めるのだそうです。もともとこの2つの団体は日経新聞と一緒にビルが3つ並んで大手町にあるわけです。要するに、農協JAも組織防衛あっての農業防衛という感じを露骨に出してきて、いよいよTPPは本当に戦後農政の構造を大きく変化させてしまうんだなと思えてなりません。

 日本では北海道以外では、アメリカ型の大型農業にもできず、兼業農家だった人たちが補助金を切られて、結局はローソンとか商社とかが経営する農業会社で雇用されるという形態になっていくのではないかとも、私個人としては思います。

 日本がアメリカの属国で在り続ける限り、この「外圧」で何かを変革させられていくという構造は変わらないでしょう。TPPにしてももともと日本はアメリカが目をつける前に東南アジア諸国との間で二国間FTAの網の目を結んでいたのですが、あっという間にアメリカに巻き返されました。

 今回の本では、前作に引き続いて副島隆彦+ファンドマネージャー対談が収録されています。金融業界の現場について知りたい人は興味を持っていただけるのではないでしょうか。この対談を読んでいると、各国の金融当局は「金利が暴走し始める」ということをものすごく恐れているのだなあと分かりました。

 今回も主要な金融記事を多数収録してありますので、新聞の切り抜きをしなくても、金融ニュースを四半期ごとに整理することもできる本になっています。そういう記事を確認する使い方も出来る本です。

中田安彦拝

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