「115」 「小沢一郎 対 検察(オール官僚)の闘い」 (1)  の記事資料を振り返って、これからどんどん載せて行きます。副島隆彦2010.3.15

副島隆彦です。 ここにまとめて記事を載せるのは、久しぶりです。 小沢一郎 対(VS) 検察(オール官僚)、テレビ・新聞」の闘いが、2月4日まで激しく続いたので、私、副島隆彦の生活も忙しくて大変でした。 今こそ、振り返って、今にいたる4ヶ月(昨年の11月から) をまとめて行こうと思います。

 どんどん載せます。新聞記事や、言論誌の文章だけでなく、 「ネット言論の旗手たち」という纏(まと)め方をして、優れた文章を書いている人達も文も、どんどん載せます。 副島隆彦拝


(転載貼り付け始め)

●「物言う知事」はなぜ抹殺されたのか」

2009年11月3日 ビデオニュース・ドットコム

ゲスト:佐藤栄佐久(さとうえいさく)氏(前福島県知事)

 佐藤栄佐久氏はクリーンさを売りものに福島県知事を5期も務めた名物知事だった。しかし、それと同時に佐藤氏は、国が推進する原子力発電のプルサーマル計画に反対し事実上これを止めてみたり、地方主権を主張してことごとく中央政府に反旗を翻すなど、中央政界や電力、ゼネコンなどの有力企業にとっては、まったくもって邪魔な存在だった。

 その佐藤知事に収賄疑惑が浮上し、5期目の任期半ばで辞職に追い込まれた後、逮捕・起訴された。ダム工事発注をめぐる収賄罪だった。知事は無罪を主張したが、一審は執行猶予付きの有罪判決だった。そして、その控訴審判決が14日、東京高裁で下された。

 今回は一審からやや減刑されたが、依然として懲役2年、執行猶予4年の有罪判決だった。主要メディアもほぼ例外なく「前福島県知事、二審も有罪」の見出しでこのニュースを報じていたので、最近は知事の不祥事が頻発していたこともあり、必ずしも世間の耳目を引く大きなニュースとはならなかったかもしれない。

 しかし、この判決の中身を詳細に見た時に、その内容の異常さに驚かされる人は多いはずだ。判決文からは「無形の賄賂」や「換金の利益」などの驚くような言葉が次々飛び出してくるからだ。判決文は、佐藤前知事が一体何の罪で有罪になったのかが、全くわからないような内容になっているのだ。

 もっとも驚かされるのは、二審では一審で佐藤前知事が弟の土地取引を通じて得ていたと認定されていた賄賂の存在が否定されたにもかかわらず、「無形の賄賂」があったとして、裁判所が有罪判決に踏み切ったことだ。

 元々その賄賂の根拠というのは、佐藤氏の弟が経営する会社が水谷建設に土地を売却した際、その売却額が市価よりも1割ほど高かったので、その差額が佐藤氏に対する賄賂に当たるというものだった。ところが、その建設会社はその後更に高い値段で土地を売却していることがわかり、「市価より高い値段による賄賂」の大前提が崩れてしまったのだ。

 そこで検察は「換金の利益」つまり、仮に正当な値段であったとしても、土地を買い取ってあげたことが「無形の賄賂」の供与にあたると主張し、裁判所もそれを認めた。つまり、取引が正当な価格でなされていたとしても、土地取引そのものが賄賂にあたると認定されたわけだ。

 「セミの抜け殻のような判決」。二審判決についてそう話す佐藤氏は、そもそも事件そのものが検察によってでっち上げられた作り話だと主張し、一審から徹底して無罪を争ってきた。

 他にもこの事件は、そもそもこのダム事業が一般競争入札案件であるにもかかわらず、佐藤氏の「天の声」を認定していたり、弟の土地取引から得た利益を佐藤氏自身が受け取ったわけではないことを認定しながら、佐藤氏を収賄で有罪としているなど、不可解な点は多い。

 にもかかわらず、「換金の利益」だの「無形の賄賂」だのといった不可思議な論理まで弄して裁判所が佐藤氏を二審でも佐藤氏を有罪としなければならなかった最大の理由は、佐藤氏自身が取り調べ段階で、自白調書に署名をしていることだったにちがいない。

 今回宮台氏のピンチヒッターとしてマル激の司会初登場となった元検事で名城大学教授の郷原信郎氏は、「佐藤氏のような高い地位にあった方が、罪を認めていることの意味はとても重い。自白があるなかで裁判所が無罪を言い渡すことがどれほど難しいか」と、とかく自白偏重主義が指摘される日本の司法の問題点を強調する。

 しかし、佐藤氏はこの点については、苛酷な取り調べによって自白に追い込まれたのではなく、自分を応援してきてくれた人達が検察の厳しい取り調べに苦しめられていることを知り、それをやめさせるために自白調書にサインをしたと言う。また、早い段階で自白をしたおかげで、真実を求めて戦う気力を残したまま、拘置所から出てくることができたと、自白調書に署名をしたこと自体は悔やんでいないと言い切る。

 佐藤氏が原発に反対し、原発銀座とまで呼ばれ10基もの原発を有する福島県で原発が止まってしまったことが、日本の原発政策全体に多大な影響を与えていたことも、今回の事件と関係があるのではないかと疑う声がある。しかし、これについても郷原氏は、「今検察はそれほど高級な論理で動いてはいない」と一笑に付す。

 恐らく、東京地検特捜部はある見込みに基づいて、かなりの予算と時間と人員をかけて捜査に着手したのはよかったが、見込み違いがあったのか、なかなか大物が捕まえられずにいたところを、敵が多く、恐らくたれ込みネタも豊富であろう佐藤氏に白羽の矢がたったのだろうと、郷原氏は見る。「見込み違い」「幹部の保身」「筋の悪いたれ込み情報に振り回された結果」といったところが実情だったのではないかと言うのだ。

 佐藤氏自身は、自分が検察に狙われなければならない理由はわからないとしながらも、1年以上もの長期にわたり、佐藤氏の周辺を検察が捜査しているとの情報はあったと言い、最初から佐藤氏を狙った捜査であった可能性を排除はしていない。しかし、いずれにしても佐藤氏は最後まで無罪を主張して闘う意向を明らかにしている。

 今週はマル激特別版として、郷原信郎氏を司会陣に迎え、今回の判決が露わにした数多くの「なぜ?」とその背後にある日本の刑事司法の病理を佐藤栄佐久前福島県知事と議論した。

検察の意図

神保:この事件の背景には政治的な意図があるのではという声がありますが、郷原さんこれをどう思われますか。

郷原: 佐藤前知事の側からみれば、この事件は検察が政治的な意図で戦う知事を抹殺しようということで仕組んだんだろうと思われるのも無理はないと思います。しかし、私が今まで検察側の実態を見てきた経験からすると、最初から政治的意図をもって佐藤知事を抹殺しようということで用意周到にこの事件を組み立てたとは思えません。意図的にやったのだとすれば、もっとまともな収賄事件にしていると思います。

 そうではなくて、検察は見通しが悪いまま、水谷建設の捜査に着手したはいいが、その後捜査が長引き、相当なコストや人員を使ってしまったため、後には引けなくなってしまった。そこで、現職の大物知事を逮捕すれば文句はないということで、捜査の「出口」とされたのが、佐藤知事だった。私には、最初から検察が佐藤知事を抹殺しようということでやったとは思えません。

神保: そんな高級なことをやる余裕は検察にはなかったということですね。今の郷原さんの説明を聞いて、佐藤さんはどうお考えですか。

佐藤: どこかを叩けば埃が出るだろうというその程度のことで、政治家が責められたのだとしたら非常に残念です。私の場合は関わりのあった建設業界を含めて、あらゆる関係先が検察による絨毯爆撃を受けましたが、結局は何も出てこなかった。しかし、政治家というのはそういうものだという認識を皆さんに持たせた原因が結果として私にあるとすれば、そこについてははっきりさせていかなければならないと考えています。このままでは国民や県民の皆さんに本当に迷惑をかける。私の周りで、徹底していじめられた皆さんがいますから。

 これは、ダム工事や地方分権などの問題以上に重要な、民主主義の根幹にかかわる問題です。司法が腐っているとしたら、私どもがしっかりとはっきりさせていかなければならないという気持ちです。

原発対策における知事の功績

神保: ここからは原発政策に詳しい飯田哲也さんに参加していただき、佐藤さんが知事時代、原発対策においてどれほどの功績を残したかという話も含めて、議論を進めていきたいと思います。郷原さんが敵の多い政治家ほど検察に狙われやすいという話をされましたが、佐藤さんは原発推進派にとってどんな存在だったのでしょうか。

飯田: 原発政策において中央政府で実際に仕事をしているは課長補佐クラスの人たちで、彼らは地方や現場の都合を顧みずに、机の上のものごとで一気に進めてしまいます。一方で佐藤さんは、18年も知事をされる中でいろんな経緯を背負いながら、しかも県民の安全を背負って仕事をされてきた。そんな知事の考え方と、2年ごとに変わる役人の都合で決定される原発政策と、ズレが生じていくのは当然です。

 佐藤さんは、トラブル隠し事件や安全維持基準管理の杜撰さなど、国がごまかしを重ねている部分に対して、真正面から問われていました。敵は電力会社ではなく、国だと主張されていて、そこの部分が国にとって都合が悪かった。佐藤さんは原子力そのものをイデオロギー的に否定されていたのではなく、手続き論としておかしいのではないかと言っていた。こう言われてしまうと、国は対処に困るわけです。

神保: イデオロギー的な反対論者の方が与しやすいということですか。

飯田: イデオロギー的な反対であれば、国は有無を言わさぬ国策だとして簡単に押しつぶせますが、原発を10基持っている福島県の、自民党の保守本流の出自を持つ知事に、手続き論で責められることは非常に嫌だった。県民の責任を背負い、他の反原発の議論とは一線を画した議論をされていましたので、国の原子力委員会も煙たがっていました。

神保: 知事からみると、原発の何が問題だったのですか。

佐藤: 私が一つ一つを素直な気持ちで原発政策にぶつかっていくと、必ず問題にあたってしまうのです。国や電力会社と約束したことがすぐにコロッと変えられてしまうので、本当にいい加減な世界だと感じました。そうやって一つ一つ問題を詰めていくうちに、いつの間にか問題提起をし過ぎるぐらいするようになった。私自身は日本の原発の安全に寄与したと、自負していますが。

佐藤 栄佐久(さとう・えいさく)
 前福島県知事。1939年福島県生まれ。63年東京大学法学部卒業。日本青年会議所地区会長、同副会頭を経て、83年に参議院議員選挙で初当選。87年大蔵政務次官。 88年、 福島県知事選挙に出馬し当選。第5期18年目の06年に辞職後、ダム工事発注をめぐる収賄容疑で逮捕・起訴。著書に 『知事抹殺 つくられた福島県汚職事件』。

郷原 信郎(ごうはら・のぶお)
 名城大学教授・コンプライアンス研究センター長。1955年島根県生まれ。77年東京大学理学部卒業。同年三井鉱山入社。80年司法試験合格。83年検事任官。公正取引委員会事務局審査部付検事、東京地検検事、広島地検特別刑事部長、長崎地検次席検事などを経て06年退官し、09年より現職。著書に『思考停止社会』、『検察の正義』など。

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦拝


copyright(c) 2000-2009 SNSI (Soejima National Strategy Institute) All Rights Reserved.