ネット上から拾った、私自身が過去に書いた文章で、書き写して載せてあったものを、ここに載せておきます。 副島隆彦拝
(転載貼り付け始め)
● 今一番言論界で注目されている副島隆彦を語りましょう。
アメリカ・ユダヤ・近代学問・属国日本論・自然法・自然権・人定法・リバータリアニズム・レイシオを徹底分析。
とどまることを知らぬ副島隆彦、ますます絶好調!
今、副島隆彦が、やっぱりおもしろい!
1.自然法( natural law ナチュラル・ラー ) と 2. 自然権 ( natural rights ナチュラル・ライツ) と 3. 人権 ( human rights ヒューマン・ライツ ) と 4. 人定法 ( positive law ポズィティブ・ラー) の関係と 対立を 副島隆彦の本から少し書き写します。
この四つが分らなければ、向こうの高校生並みにさえ扱ってもらえないらしいです。
欧米人の本気の議論の輪の中に入る前に知らなくてはいけない最低限の常識です。
(引用はじめ)
分りやすくアメリカを例に取って説明をすると、自然法、これはバーキアン(エドマンド・バーク主義者)の事である。彼らは「人間社会には社会を成り立たせている自然の決まり、掟がある」と考える。この自然法=バーキアン=伝統保守派の代表は、長年「ナショナル・レビュー」と言う政治評論誌の編集長を務めているウイリアム・バックレーという老大家の評論家である。
彼こそは「アメリカ保守の守護神」と呼ばれて歴代共和党大統領たちから尊敬されている人物である。バーキアンの標語は人類の歴史をとうとうと貫く普遍の真理を暗示する「永遠の相の下に」と言う言葉である。だから彼らは本来余り泥臭い現実政治にはかかわりたくないと思っている。
このバーキアンとともに保守二大思想でありながらバーキアンと激しく対立するのがロッキアン(ジョン・ロック主義者)である。これが「自然権」派である。彼らは自然法の存在そのものは認めながらも、ジョン・ロック(及び、ルソー)が唱えた「全ての人間は、決して奪う事の出来ない固有の権利として生命・身体・財産の自由を持つ」という言葉に基ずく自然権のほうを重視する。
ロッキアンもバーキアンと同じく自然法(人間社会を貫く自然の掟)を認めるのだが、それよりもこの自然権の方をより重要なものと考える。彼らロッキアンは「法や思想が何を語っているかを問うよりも、自分達はここの法律を解釈運用し実際に社会を運営するのだ」と考えるきわめて現実的な保守思想である。この自然権波の現在の代表はロバート・ボークであり、格調高く、かつ激しくリベラル派を批判する人物である。
バーキアンは、このロッキアンに対して「そんなに憲法典を高く持ち上げてどうするのか。憲法典が各種の人権を保障したからと言っても、それはどうせ紙きれだろう」と強い疑いの念を持っている。
● 自然権から人権が生まれた
この近代憲法典(フランス人権宣言やアメリカ憲法)が定めたジョン・ロック主義の「生命・身体・財産の、国家からの自由・独立・不可侵」という自然権を20世紀に入って、更に勝手に拡張して「憲法は全ての人間の生活と生存を保障している(つまり社会福祉を保障している)」と言い出したのが、人権派たる現代リベラル派である。この人権派は自然権から派生したものだが、今や世界中で最大勢力である。
日本では本来、自然権派であった福沢諭吉や「民本主義」の吉野作造の思想が、リベラル人権派の中に飲み込まれて行方不明になってしまい、リベラル人権派と区別がつかないまま今日に至っている。この人権派は、実際には、社会主義(マルクス主義)思想の影響を受け続けた人々の思想でもある。この人権派は当然の事ながら保守思想ではなくて、左翼的であり、文字通りリベラル派である。あくまで、ロッキアンの自然権と区別をつけなければならない。この事が大多数の日本知識人層には分らないのだ。この人権派は日本でも世界でも大勢力である。
● 人定法( positive law ポズィテイブ・ラー) について
アメリカの保守思想には自然法・自然権の外にイギリス近代政治思想からの源流を持つベンサマイト(ジェレミー・ベンサム主義)=人定法という特異な勢力が存在する。人定法は19世紀中ごろに生まれたイギリスの奇妙な思想家、ジェレミー・ベンサムは、エドマンド・バークやジョン・ロックの思想に激しく反対した。「その自然法や自然権というものが在るなら、私に見せてみろ」と言い放ったのである。
したがって、この立場からは、人権派などは更に木っ端微塵背ある。ベンサムは憲法典に書いてあるからといって人権が無条件に至上のものとはならない」と主張する。ポジティビズム=人定主義とは「社会のきまりは、神が決めるのではなくて、この地上の人間たちが決めるのである」という考えである。「人間たちが人為的に、現実世界のルールを作るのである」即ち、「自然の方」ではなく「人定」の思想なのである。だから人定法とは、「神や自然が、法を人間に与えるのではなく、法は人間たちが決める」という政治思想かつ法思想なのである。
当然、この立場は「何が正しくて、かにが公平で、何が善であるかも、我々人間が決める」という、恐るべき、神、自然法否定の思想となる。ベンサマイト(ベンサム主義)は、徹底的な社会工学的な思想であり、ヨーロッパ近代思想の最後に登場した、巨大な星である。リベラル派の人々から見れば、悪魔の思想として憎しみの対象となる。現に、社会主義思想を大成したカール・マルクスは、同時代人ベンサムを「最悪の俗物ベンサム」と呼びジョン・メイナード・ケインズは「蛆虫ベンサム」と罵った。このベンサム主義はアメリカではリバータリアニズムという思想になって一大勢力になっている。
これを広めれば、日本の左翼勢力(も保守の勢力も)激減し、あるいは正気に戻ると思います。
● 副島隆彦の文章 「 マッカーサーが連れてきたニューディーラーの正体 」
日本の戦後は、アメリカの政界の最も悪質な部分である「ニューディーラー」にたちによってつくられた。彼らニューディーラーたちは、1930年代のアメリカのリベラル勢力である。彼らの代表がフランクリン・ルーズベルト大統領であった。この一部が敗戦直後にマッカーサー元師の取り巻きとして日本にも上陸した。この者たちによって私たち日本人は、敗戦直後から現在までずっと管理・教育されてきた。この事を英文で書くと次のようになる。
The‘New Dealers'(i.e the prototypical globalists)brought int japan with their ideeas that brainwashed the japanese people duringt the Occupation years.As a result,japan has led a sheltered existence for the past half-century from the rest of the world in terms of prevailing political thoughts,thus creating a one- domineted ruling class. This ruling class then intentionally isolated the country from the outside, in order to maintain control over the japanese people.
[上の英文の訳]
ニューディーラー(すなわち、グローバリストの初期の形態)が、占領時代に日本に彼らの思想を植えつけた。その後、それらの意図的な思想が、日本国民の思考の中に根づいた。だから日本は、この半世紀の間ずっと、世界中で通用している本物の政治思想や考え方から壁を作られて遮られてきた。そして国内に専制的なひとつの支配階級をつくった。この支配層は日本国内の支配を維持するために、日本を外側世界と意思が通じない状態に置く原因をつくった。
この英文を、自分の友人や知人のアメリカ人やイギリス人その他の英語圏国民に見せてみとよい。政治問題に関心のある少し知的な英米人であれば、必ずそれなりの興味深い反応を示すだろう。もし、本当に頭の良い賢明なアメリカ人であったら、「どうして、お前は、このことを知っているのだ?」と驚かれたあとに、さらに多くの恐るべき真実をあれこれ語ってくれるだろう。
引用は副島隆彦著 「日本の危機の本質」 P33~34
「戦後民主主義万歳」みたいなことを長年書いてきた知識人たちは、このことに自覚がない。欧米では、戦後の日本社会のことを「ニューディーラーが植えつけて育てた日本体制」と呼んでいる。これを英語では、‘New Dealr ingrained japan system.'(ニューディーラー・イングレインド・ジャパン・システム)と言う。
引用は副島隆彦著 「日本の危機の本質」 P296
● 副島隆彦の本から衝撃を受けた。 その2
まず「自由主義者」の訳であるが、「リベラリスト」と言う言葉は、ドイツ語にはあるが、英語ではリベラルズliberalsというのだ。「リベラリスト」と言う英語は無い。日本の知識人層は、この初歩の事実から学ばなくてはならない。リベラル派の反対がコンサヴァティヴズ(Conservatives・保守主義者)である。日本やアメリカで、自分の事を「リベラル」だと思っている人々は、そもそもの、本物の歴史上の「古典的自由主義者」とは似ても似つかぬものだ、と言う事に気づいてほしい。
今の日本やアメリカのリベラル達は、本物の自由主義者達とは反対の立場の人だのだ。言葉だけは「リベラル」だから、きわめて紛らわしい事になったのだ。それは、イギリス人の18世紀の初期リベラル思想が、海を渡ったアメリカで共和党系の思想になったからだ。このねじれを理解しなければいけない。日本やアメリカの現代リベラル達は、本当は、今でも隠れ(あるいは無自覚な)社会主義者(ソーシャリストSocialists)たちである。だから、「本物の本来の自由思想を貫く生き方をしたい」と言う人々は、アメリカでは、仕方なく、自分達の事をリバータリアン(Libertarians)と呼ぶようになった。
アメリカでは、民主党支持であるリベラル派は、その実態は福祉優先の弱者救済主義者である。このことに気づいて、最近は自らを「現代リベラル派(モダン・リベラル)」と呼んで保守思想である古典自由主義者(クラシカル・リベラルClassicalLiberals)と区別をつけるようになった。 本物の自由主義とは「この、私の私自身の自由を、他の何よりも大切にする思想」の事だ。だから、根本的に、個人主義者なのであって、共同体優先主義(社会主義)ではない。
18世紀のイギリスの本物の古典的自由主義者たちは「国王や教会が、私たちの生活に余計な干渉をしないでくれ」という思想態度から興ったものである。だから本物のリベラルというのは、本当は、徹底的に新興企業経営者層(ジェントルマン)たちの思想なのである。これが、イギリスのウィッグ党・ホイッグ党(Whig 自由党)の支持勢力を作った。そして、トーリー党(Tory 保守党)である、貴族たちの勢力と争ったのだ。
一般庶民(貧乏大衆)の政党などまだまだ現れない。このウィッグ(イギリス自由党)の思想が海を渡ってアメリカに到着した時に、これがアメリカの保守勢力であるアメリカ共和党になってゆくのだ。 だから「もともとのイギリスの自由主義者が、現在ではアメリカの保守主義者」と言う事である。いつの間にかねじくれて意味が逆転してしまった。即ち、本来の「リベラル」という言葉が、民衆統合主義者や、左翼・社会主義者たちによって奪い取られてしまったと言う事である。この世界の政治思想上の言語使用上の重大な逆転現象に、私たちはそろそろ気づかなければならない。この事が分らないものだから、日本では政治学者たちですら、現代リベラル派と、本来の古典は自由主義者の区別がつかないのだ。 副島隆彦著 「ハリウッドで政治思想を読む」 から
● 副島隆彦の本から
日本の自称リベラル派の欺瞞
ここで面白い話を一つ書く。そもそもアメリカ合衆国のリベラル派は、日本に「リベラル」派がいるなどとは思っていない。「日本にも自分たち同様のリベラル派な人々がいる」などとはこれっぽっちも思っていない。これまで一度たりともそんな風に考えたことはない。そもそも東アジアの一種族にすぎない日本人に、西欧型のリベラリズムが理解できるなどとは考えない、という事だ。
そうすると、日本国内で自分のことを「私はリベラルで、反保守・反権力・反資本主義の人間だ」と考えている大量の人々は、一体何なのだ、ということになる。日本にいる、朝日新聞と社民党(旧社会党)を代表するリベラル派の反保守勢力といのは、欧米諸国から見れば「旧ソビエトや中国に同調してきた共産主義者がかなりソフトになっただけの人々」ということでしかない。長い間、こういう理解しかない。世界中のの人々が、日本の自称リベラル派のことをそれ以上とは考えないのである。
この考えは、冷徹なまでに正しい。しかも、本物の西欧の古典的なリベラリズム(自由主義)と、現代の「リベラル」派とは、似ても似つかぬものなのである。この話をすると複雑になるのでこの本ではやめるが、つまりアメリカ人は、日本の社民党(社会党)やその他の反戦平和・環境保護団体などの「リベラル勢力」のことを、世界水準のリベラル派だとは微かにも思っていない。
副島隆彦著 「日本の危機の本質」
● ぼやきに、
「9,11 テロはロックフェラーによる自作自演だ」 と書いています
「675」 今日のぼやき 「 アメリカはこうして「悪の帝国」(ロックフェラー帝国)になったのである 」
http://snsi-j.jp/boyaki/diary.cgi
以下転載
スターウォーズの話に戻るが、だからこの映画の一番大きな主題は、共和国が巨大な帝国に乗っ取られて、巨大な悪となっていった、という部分である。これが見事な位に、アメリカの現在の政権であるブッシュ政権と重なる。アメリカは、「9.11事件」のような巨大なやらせの事件を私たちの目の前に、映像として伝わるように計画的に起こすことまでする。
こうやって、アメリカ国民を戦争に引きづり込んで行く。そしてアメリカ国内を「テロリストが攻撃してくるので、常時警戒態勢下に置かれることもやむを得ない国」にして、国民が常時、監視される統制社会(コントロールド・ソサエティ)にされてゆく。今のアメリカは、行ってみると分かるが、息苦しいまでの統制国家である。
今のアメリカ人は、飛行機の乗り降りする時に空港の検問で、靴を脱がされ、バンドをはずされて、バッグの中の下着まで引きづり出される。あの身体検査の屈辱にアメリカ人は皆、じっと耐えている。かわいそうな帝国臣民である。世界中で一番いい思いが出来るアメリカ白人にうまれたことの優位性と特権と共に、アメリカ人は、政府からの厳しい監視下に置かれているのである。今のアメリカには、自由はない。
2001年の9.11同時テロ事件は、二重スパイとなるべく育てられていたアラブのからの良家の留学生の学生たちを「テロ実行犯」としてあらかじめまとめて殺しておいた。そしてオートパイロット(自動操縦)にした飛行機を、米空軍の司令部で遠隔操作して、ワールド・トレイド・センターにつっこませた。
同時に、ビル解体業の専門家たちがビルの各所に仕掛けておいた爆薬を爆発させて、「デモリション」(demolition )というビル倒壊・解体技術そのままでやってみせた。だからあの時の死者・犠牲者の2千人はほとんどが、あのビルの清掃人のような下層のビル管理業務の人たちである。
アメリカを戦時体制に持ち込んで行くことが狙いである。そうすることで、戦争刺激経済(ウォー・エコノミー)で、迫り来る世界恐慌を阻止して、無理矢理に戦争景気を作って、アメリカの経済を維持しようというのである。この目論みでロックフェラー財閥が、自ら仕組んで、9・11テロを起こさせて、そのあと予定通り、アフガニスタンやイラクに攻め込んでいった。
一方で、アメリカ国内は、秩序維持の安定の名目で、「愛国者法」(パトリオット・アクト)のような、治安維持法を作って、国家安全を守る、という名の下に、アメリカ国民の言論を統制し、令状無しの捜査を容認するような法律を無理矢理に成立させて、アメリカ国民の生活を徹底的に監視する警察国家への道を完成させようとしている。
だから、この映画でジョージ・ルーカスというリベラル派(ソフト・グローバリスト)の映画監督は、「アメリカの共和政体が崩壊しつつあり、アメリカは9・11の事件をきっかけに、ローマのように共和国から帝国に変貌を遂げていったのだ。気を付けよう」というメッセージを観る者に送ったのだ。そして、事実、今やアメリカは自覚的に自ら「悪の帝国」になってしまったのである。
(転載貼り付け終わり)
副島隆彦拝
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(転載貼り付け始め)
「老人税」
副島 隆彦・著 祥伝社 2004年9月刊
なわ・ふみひと筆
ロックフェラーといえばアメリカを支配する黒幕と言われていますが、ヨーロッパを支配しているのはロスチャイルド一族で、両者は対立・競争関係にあるという人がいます。また「陰の世界政府」と呼ばれ、世界を陰で動かしている勢力はロスチャイルドやロックフェラーをも操ることのできる大きな力をもつ組織だという説もあります。
世界はそのような見えない力によって支配されているようです。政治も経済も食糧も宗教も、すべてそのような組織のコントロール下にあるのだとか。夢のない話ですが、現実にロックフェラー一族はアメリカでは強大な力を持っています。ロックフェラー一族を徹底的に批判し、糾弾していたマクドナルドという上院議員が、旧ソ連によって爆破された大韓航空機に乗っていたのは偶然とは言えません。アメリカではロックフェラー一族を批判することはタブーなのです。
副島氏はこの本の中で痛快にロックフェラー一族の秘密を暴露していますが、それも日本の中だから言えることでしょう。でも、知ってて損のない話ではあります。 (なわ・ふみひと)
5章 2005年春、世界経済の変動が始まる
――日米の国債暴落、そしてドルの大暴落
なぜFRBはFFレートを引き上げたのか
●アメリカの実質的な公定歩合(政策金利)であるFFレートが上げに転じた。2004年7月1日に年率1.25%に引き上げられた。FRB(連邦準備制度理事会)のアラン・グリーンスパン議長が、いやいやながら金利を引き上げ始めた。(中略)
アメリカが金利を引き上げ始めたということは、金融が引き締められるということである。アメリカは明らかに、金融引き締めの舵を取った。これでアメリカの土地・住宅バブルがもうすぐはじけ飛ぶ。アメリカはいま土地・住宅価格急騰の最後の場面にある。日本の1988~1989年の狂乱地価と同じだ。
●もしアメリカの財務省やFRBの、景気と金融の舵取りが失敗したら、そのときアメリカは激しい経済変動に見舞われる。それは、ハイパー・インフレーションがアメリカに襲いかかるということである。その下地として、単年度で年間5000億ドルに達しようとする財政赤字と、同じく年間5000億ドルを超えた貿易赤字の2つがある。
アメリカにやがて信用不安が起きる。この信用不安によって、アメリカの連邦政府が発行している米国債が下落することが予想される。このときアメリカには激しいインフレが起きる。それが日本に波及して、日本の国債も厳しい局面を迎えるだろう。
長期金利上昇が意味するもの
●長期金利は短期金利とは違って、日銀や財務省が政策的に誘導したり、人為的に操作することはできない。長期金利は1929年のニューヨーク発の世界大恐慌の時に生まれた。30年ものの米国債もあるが、指標となるのは10年ものの国債である。
●現在の日本の10年もの国債は、クーポンが年率1.6%と付いている。10年もので毎年1.6%の金利が付くわけである。
この金利が、アメリカの長期金利の上昇の影響を受けて、日本でも長期金利を上昇させつつある。そのため、もしさらに1%金利が上昇すると、10年ものの日本国債の価格は8円下落する。額面100円と決まっている国債が92円に下落するのである。
日本の7月時点での長期金利は1.9%まで上がってきた。
●この長期金利が上がりだして、やがて2%を突破し、2.5%、3%という事態になることが予想される。(中略)国債の暴落という、私たちがいちばん恐れていることが、そのうち起きるのである。日本政府もアメリカ政府も、それぞれの国債の暴落ということをものすごく心配しているのである。
日本の「狂乱地価時代」とそっくりな現在のアメリカ
●グリーンスパン議長としては、本当は利上げはしたくなかったのである。今アメリカ政府が金利を上げていくと、景気が後退するという問題が本当に深刻なのである。しかし、上げざるを得ない。
この短期金利の操作による誘導金利という考え方は、インフレを警戒してのものである。今、アメリカがインフレとデフレのどちらをより警戒しているかと言えば、インフレである。デフレ(不況)も怖い。それでも背に腹は代えられないので、デフレ(景気の後退、不景気のさらなる深化)よりも、インフレ、とりわけハイパー・インフレーションが襲いかかってくるのが怖いのである。だから金融引き締めの利上げを決断した。
米大統領は2期目に入るとスキャンダルが起きる
●私は、今度の米大統領選挙はブッシュが勝って再選されると見ている。11月2日の選挙日にはプッシュが勝つだろう。すべては世界中の石油・軍需産業や資源・農業ビジネスまでを牛耳り、ニューヨークの金融財界をも主導しているロックフェラー財閥によって仕組まれている。
ブッシュは、チェイニー副大統領とポール・ヴォルカー前FRB議長から顎で使われている。だから、この2人の“大親分”であるデイヴィッド・ロックフェラーの哀れな「操り人形」の大統領である。
誰も書けない、ロックフェラー家内部の跡目争い
●米国、そして世界の政財界を裏側から支配しているデイヴィッド・ロックフェラーは90歳の高齢であり、余命がそれほどない。
そこでその後継者として、現在ウエスト・ヴァージニア州選出の上院議員であるジェイ・ロックフェラーがロックフェラー家の次の当主として、ニューヨークに移り住む準備をしている。
この人物は、創業者のロックフェラー1世の正当な嫡男の4代目である。父親のジョン・ダヴィッドソン3世が死去した後、ロックフェラー家の当主は唯一の共和党員だったネルソン、そして現当主のデイヴィッドと、それぞれ子息ではなく弟たちが継いできた。ここらで党首の地位が本家に戻りそうである。
今年で68歳になるジェイも、本当は大統領になることを欲していたのだが、1992年の大統領選の民主党予備選で、クリントンに負けてしまった。自分の叔父であるデイヴィッド・ロックフェラーがクリントンの方に肩入れしたからだ。このようにロックフェラー家内部で、跡目相続をめぐる本家と分家との争いがある。
ニューヨークの金融財界を、これからジェイ・ロックフェラーが掌握しようと動いている。それに伴い、前大統領クリントンとの間で「遺恨試合」のようなものが繰り広げられようとしている。ここに、来年から起こるであろう世界最大の権力者の「代替わり」に伴う激動が待ち構えている。
この(2004年)7月にジョン・エドワーズが、ウエスト・ヴァージニア州に遊説に入っている。エドワーズは民主党の副大統領候補となって、ジョン・ケリー候補のランニング・メイトである。エドワーズはジェイ・ロックフェラーの後押しを受けることになった模様だ。2人で「反クリントン、反デイヴィッド」の誓いのようなものを結んだのだろう。エドワーズは、ジョン・ケリーが11月に負けても、その次に自分の番が来るように動いている。ということは、民主党内でヒラリー・クリントンとぶつかることになる。
クリントン前大統領の出生の秘密
● そもそも、どうして民主党の上層部は、ジョン・ケリー上院議員のような、本人が勝つ気迫を示さないおかしな人物を候補者に選ばざるを得ないように仕組まれたのか。
その「張本人」はビル・クリントン前大統領である。クリントンは、4年後の大統領選で、自分の夫人のヒラリー・ロダム・クリントン上院議員を大統領にして、ホワイトハウスに「夫婦そろって」返り咲こうとしている。
そのため今回は民主党からは大統領が出ないように、初めから負けるように仕組んだのである。なぜクリントン前大統領にこれほどの政治的実力があるのか。私はズバリと真実を書く。ビル・クリントンは、ウィンスロップ・ロックフェラーというロックフェラー一族の人物の「隠し子」だからである。(中略)
この事実を、私はこの春に実際テキサス州に行って確認してきた。
クリントンが高校生の時に、ジョン・F・ケネディ大統領と握手したことは有名だ。そのセレモニーの主催者が、他ならぬアーカンソー州知事だった実父のウィンスロップ・ロックフェラーである。米国のメディアはその映像をよく流したが、どういうわけかそばにいた実父の姿は削除されている。
だから、前大統領が後年、アーカンソー州知事になれたのも、またその後、大統領選に出馬することができたのも、ロックフェラー家と関係の深いハリマン家の援助によるものだ。
世界経済の激変は、2005年の春から始まる
● グリーンスパン議長が、アメリカの公定歩合に似たFFレートを上げると決めたもう一つの理由は、ヨーロッパの、ヘッジファンドと呼ばれている国際投機筋が、盛んにユーロ建てで金をテコにして米ドルを先物で売り続けているからである。ヨーロッパはドル暴落を狙っている。これに対して反撃を食らわし、ドルの値段を支えるために、グリーンスパン率いるFRBが金利を上げることに決めたのである。(中略)
ヨーロッパのヘッジファンドは一定の打撃を受けて、現在低迷している。ドルの暴落を仕組んでいたのに、まんまとその動きをグリーンスパンに阻止された。欧州ヘッジファンドは7月から再反撃に出て、ニューヨーク株を売り原油を買うという投機をやっている。原油は1バレル45ドルまで上げた。
● 私の予測では、2005年の春ぐらいから米経済は怪しくなっていくと思う。アメリカは不況に突入していくと思われる。同時に、米ドル札と米国債の刷りすぎという問題があるので、ハイパー・インフレにもなるだろう。
2005年は、太平洋戦争の終結から60年目である。世界は60年周期で動くのである。これを景気循環の「コンドラチェフの波」という。2005年を皮切りに、この数年で世界経済は大きく変わっていくのである。
新ドル切り替えでアメリカの預金封鎖が起きる
● 今アメリカ合衆国で、20ドルや50ドル紙幣をどんどん新札に切り替えている。やがて100ドル札も、2005年から切り替わる。日本も示し合わせたように同じことをやっている。
日本の場合も、偽札の防止のために新札切り替えをやるという嘘みたいなことを平気で言っている。そんなことは日本の場合はほとんどない。アメリカの場合は、北朝鮮とか南米で造られた100ドル紙幣の偽札が流れまくっていて、本当は1割ぐらいが偽札ではないかと言われている。(中略)
新ドル切り替えで、アメリカでこそ預金封鎖が日本よりも先に起きる。これは私が書いてきたとおりだ。アメリカは巨大な財政赤字と貿易・国際収支赤字を抱えているから、ドーッと崩れるときにはハイパー・インフレーションが襲いかかる。日本の場合はこの先もデフレのままである。
大きく変わる世界の通貨体制
● 新ドル切り替えが行なわれたあとで、預金封鎖が起きる可能性が高い。そのとき旧札が使えないようにされてしまう。
そうやって、今の世界通貨体制である修正IMF体制がいったん崩壊し、別の通貨体制へと移行していく。それは「コモディティ・バスケット」と呼ばれる通貨体制である。(中略)
そのとき、対円でのドルの暴落と、対ユーロでのドルの暴落という事態が想定される。そのとき1ドルは40円ぐらいまで暴落する可能性がある。
●「日本は今後も米国の影響下で生きていけばいい」と言っている人々にはっきり言っておく。経済・金融場面でこの10年、どれほど酷い状況に追い詰められてきたか。
すでに政府部門と大企業と金持ちと機関投資部門(生保、証券、銀行)を通じて、400兆円ものお金がアメリカに流れ出している。アメリカの国家財政赤字の半分ぐらいを、日本国民の財産がファイナンスしている。
ほとんどはアメリカの国債を買っているから、対外債権を持っているのと同じことである。この400兆円が半額になって日本に戻ってくるだろう。数年後にアメリカ経済が恐慌入りをして、その時に1ドル=40円とかの「ドル暴落」が起こる可能性が高い。(了)
(転載貼り付け終わり)
副島隆彦拝
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「重税国家 日本の奈落」
副島隆彦 祥伝社 2005年9月刊
なわ・ふみひと筆
この本では、「誰も竹中平蔵大臣には逆らえない。なぜなら、彼のバックにはアメリカのロックフェラーがついているから」という実態が明らかにされています。既に日本長期信用銀行(現・新生銀行)に8兆円もの税金をつぎ込んだあげく、わずか10億円で外資に売り渡した“実績”を持つ竹中大臣です。そこにはアメリカの強力な「支持」と「指示」があったことは明白です。
それと同じようなことが、今度は日本人の最後の貯金といわれる郵貯・簡保の350兆円でも行なわれようとしています。ところが、その竹中平蔵氏を「郵政民営化担当大臣」に任命するなど大変重用している小泉首相は、9月の総選挙では国民の圧倒的な支持を得て、自民党圧勝劇の立役者となりました。いわば「国を売る」人物たちを、国民が大喝采しているのです。私ならずとも、「この国は滅びるしかない」という気持ちにさせられるのではないでしょうか。
アメリカから言われるままにわが国の政治が動かされている悲しい実態が、大変よくわかる本です。それでも、わが国は今後さらに悲惨な状況を迎える可能性が大きくなっていますので、この“現実”を直視することが大切だと思います。 (なわ・ふみひと)
日本の戦後保守勢力は壊されてゆく
小泉純一郎がなぜ4年前の2001年4月24日に、自民党総裁選で地滑り的な勝利を収めて自民党総裁になり、そのまま首相になったのか。実はあのとき、日本遺族会という「職域」と呼ばれる自民党の集団党員票の50万票が、計画的に動かされたのである。あの頃から仕組まれた策略があったのである。
「小泉純一郎は自分たちの言うことをよく聞き、言うとおりに動くようだ」ということで、アメリカによって大抜擢されたのである。
残念なことだが、戦後の日本の歴代首相は、みんなアメリカが選んだのである。アメリカの前もっての推薦や承認がなければ、首相にはなれないようになっている。悲しいことであるがこれが大きな真実である。
そして首相になったあと、アメリカの言いなりになるにも限度があるということで、「いくら何でもそこまではできない」と言いはじめる首相は、アメリカによって首を斬られる。そしてまた別の人間がアメリカの忠実な家来として新たに選ばれてゆく。これが戦後60年間の日米関係の本当の姿である。
あのとき、アメリカの日本操り班の責任者たちにしてみれば、「コイズミならば郵政民営化を強行して、われわれに日本の郵便貯金を貢いでくれるだろう」ということで白羽の矢が立てられたのだ。
日本国内には600兆円の資金しか残っていない
小泉を支えている青木幹雄と森喜朗は、自分たちがアメリカに潰されたくないから、日本の郵貯・簡保350兆円をアメリカに差し出すことに合意した。しかし、綿貫民輔と亀井静香が筋を貫いて反対に徹した。
日本の金融資産をめぐる国民の悲劇はこの後も続く。私たちが真剣に警戒して、国民が団結しなければ、国内の資金を奪われ、もっと疲れ切り衰退してゆく。
国内には、もうあと600兆円(郵貯・簡保の350兆円と、各種の年金で200兆円。この他に正味の民間銀行の資金が50兆円)、これだけしか資金がない。この他には430兆円がアメリカ国債やドル通貨の購入という形で流れ出してしまっている。これはおそらくもう戻ってこない。アメリカは簡単には返さない。
アメリカの国債やドル通貨の暴落が、いくらなんでも数年後には起こるだろうが、このときこの430兆円は半分の額になる。それでもアメリカは返してくれないだろう。属国・日本が貢いだ金だから、自分たちのものだと思っている。そして、残る郵貯・簡保の350兆円の国内資金が狙われているのである。この大きな流れを止めることは誰にもできない。
アメリカによる「3つの対日金融攻撃」
アメリカは、日本からアメリカに強制的に流出されている430兆円を簡単には返さない。もし日本の指導者が「日本政府が保有する米国債のほんの一部を売って日本の財政赤字の穴埋めにしたい」と、一言でも言ったら、この政治家はただちに失脚させられる。新聞、週刊誌から奇妙なスキャンダル攻撃をかけられるだろう。これまでに何十人もの愛国派の政治家が、こうして失脚させられてきたのだ。
アメリカは、日本に対して3つの面から金融攻撃をかけている。①つは、“ゼロ金利”政策の強要である。それで超低金利どころか日本の公定歩合を実質“ゼロ”にして、それで日銀の金融政策を不可能にした。中央銀行から金利の決定権限を奪い取ることで、日本という国の金融政策の舵取りをできなくさせた。
日銀の金融政策の権限として、あと残されているのは「通貨供給量の決定」だけである。しかし、この通貨量の決定についても、アメリカが日本財務省を脅して、日銀券(お札)を無茶苦茶な量まで発行させている。そして、財務省が発行する国債を日銀に引き受けさせて大量に買わせ、その資金で米国債を買わせている。アメリカに脅迫されて、日本の財務官僚たちがここまでおかしなことをやっている。
現金(お札)と国債を刷り散らして、それが世の中に溢れているので、やがてこの日本国債の暴落が起きる。お札の力(信用力)が暴落して、ハイパー・インフレが起きて貨幣価値が半減する。そのような時代がやがてやってくる。その直接の引き金は、アメリカでの米国債(10年ものの米財務省証券)が大暴落するときである。だから、日米同時だろう。
②つ目が、為替(対ドル円相場)をつねに110円台のゾーンに固定した。 円の実際の力は、今も1ドル=160円ぐらいしかない。それを110円ぐらいに円高にしておくことで、日本の輸出大企業の利益を低く抑え込んできた。
③つ目が、日本政府に巨額の財政赤字を背負い込ませて、放漫財政になるようにし向けた。 小泉政権はひたすらアメリカ(ブッシュ政権)の言いなりになって、今もアメリカの財政赤字を補填するために米国債を買わされ続けている。国内は資金不足に苦しんでいるがゆえに不景気から脱出できないでいるにもかかわらず、さらにアメリカに毎年30兆円も貢がされる形で米国債を無理やり買わされている。
アメリカに対しては一言も言えない小泉政権、財務省の考え方は、「徹底した課税強化」である。弱い国民をいじめることしかできない。国民から厳しく“年貢”を取り立てることに、もはや躊躇しなくなっている。そして国民から搾り取った資金を、またしてもアメリカに貢ぐのである。
人為的な戦争が引き起こされる
預金封鎖などという異常な事態が、こんな平和で安定した社会で起きるはずがない、と思う人が今も多いだろう。ここが肝心のところである。
日本国民を否が応でも金融統制体制(預金封鎖)に引きずり込むために、政府は戦争の危機を利用するだろう。北朝鮮情勢が一気に悪化して、ミサイルが日本めがけて発射されるとか、台湾海峡で軍事衝突が起きるとかの戦乱状況が巧妙に仕掛けられるだろう。
日米両国の政府は示し合わせ、結託して、両国の巨額の財政赤字(膨大な額の国債発行残高)を、一挙に吹き飛ばすために人工的に軍事的な脅威を作り出すのである。それによって、国民生活を緊急事態の統制下に置くだろう。金融経済面では、経済統制体制に突入してゆくだろう。
これらの作戦実施要領(マスター・プラン)は、日本政府の内閣官房で、「国家危機管理研究」の名で秘かに進められている。金融・経済の危機(国債の暴落と信用秩序の停止)を、政治・戦争の危機にすり替えて一挙に吹き飛ばそうという魂胆である。
その兆候の重要な一つが、現在進行している金融庁による主要な地方銀行の強制的な合併、経営統合である。地方銀行はどこも預金だけはたくさん集めているが、新規の貸出先がないものだから資金だけが内部に溜まって鬱血状態になっている。それで仕方なく国債をたくさん買うことで低リスクの不健康な経営を続けている。
地方銀行が大量に買い込んでいる国債が暴落することが予想される。そうなると、地方銀行の中の体力のないものが次々と破綻して、取り付け騒ぎが起きるだろう。その混乱を初期の段階で瞬間的に食い止めるために、今年の4月に「ペイオフ解禁」を全面実施し、「破綻した地方銀行の預金者には、1人当たり1000万円(と金利分)しか払い戻さない」という態勢を整えたのである。
「実物経済」の時代がやってくる
だから、やがて預金封鎖(預金の引き出し制限)を断行するのである。この強硬な金融統制も、戦争が迫りくる中で実施すれば国民の間から激しい反発や反抗が起きないだろうと、政府は目算を立てている。緊急時の国民統制の法律群で、一気に国民の反対を抑え込むつもりである。
このようにして日本国は奈落の底に落ちつつある。やがて日本の国債は暴落し、長期金利が跳ね上がる。それに連動してすべての金利が上がりはじめる。行き着く先にあるのは、今から60年前の敗戦の翌年に日本国民を襲ったハイパーインフレである。
そのとき、ペーパー・マネー(預貯金、株、債券)が大きく減価して、タンジブル・アセット(土地、貴金属、食糧、有用財物など)の価値(価格)が高騰するだろう。実物経済の時代がやってくるのである。
竹中「大臣」就任直後、株価は激しく乱高下した
1995年に始まった金融戦争で、日本はアメリカに大きく敗戦して金融属国化した。アメリカが直接日本を管理し、支配することになったのだ。日本は今やアメリカに直轄支配されている。そのアメリカが日本に送り込んだ手駒の代表が竹中平蔵大臣である。
和歌山県の履き物屋の息子である竹中平蔵が、現在の小泉内閣に「学者」という触れこみで入閣したのは、2001年の「経済財政担当大臣」としての就任が最初である。翌年の10月には、この経財相を兼務する形で「金融担当大臣」にも就任した。2004年には「郵政民営化担当大臣」と「経財相」を兼務する形で現在に至っている。まさに小泉内閣の経済政策の要である。
国会議員としての経験もまったく積んでいない「横入り組」のおかしな人間が、いったい誰の差し金で日本国家の金融・財政を動かす枢要の地位に就けたのか。このことを私たちは本気で考えなければならない。
竹中大臣が、2002年10月に経済財政担当大臣と金融担当大臣に就任したら、主要金融機関の株価が突如下がりはじめた。このときは、みずほや三井住友などの巨大銀行でさえも経営破綻するのではないかという危機感が日本列島を駆けめぐった。これがいわゆる「竹中ショック」と呼ばれる株式暴落だった。竹中平蔵が裏から指揮する策略に遭って、2003年5月には、りそな銀行が「国有化」された。
何のために銀行を国有化するのが流行するのか。それは銀行をいったん国有化しておいて、それからハゲタカ外資に「払い下げ」するためである。
ところが、このあと、「仕組まれたように」日経平均株価が急上昇して、主要銀行の自己資本比率が改善した。半年前の大銀行の軒並みの破綻危機の噂が嘘のように静まりかえった。
そしてこのあと、ひと息つく間もなく、今度は郵便局の民営化、郵便貯金の民営化の話が小泉政権の至上命題、事実上の「対米公約」の実現として急浮上したのである。ここに日米密約がある。
国会で追及された「アメリカの手先」ぶり
だからこの5年間の日本の金融制度改変における動きの最先頭には、必ず竹中平蔵という裏のある「学者大臣」が顔を出す。竹中大臣の経歴と動向の背後を洗っていくと、そこには絶えずアメリカ金融財界の意向が見え隠れする。
竹中大臣が、小泉政権の内閣改造によって金融担当大臣に任命されたのは2002年の9月30日である。そのほんの少し前の9月13日に、小泉首相はニューヨークでブッシュ大統領と会談を行なっている。ここで小泉政権は日本の大銀行の不良債権処理の加速をアメリカに約束している。この「対米公約」のすぐあと、小泉の帰国後すぐに内閣改造が行なわれたことに、私たちは注目しなければならない。
実は、この内閣改造の背景には、「銀行に対する公的資金の投入の是非」をめぐる、小泉政権内の閣僚たちの激しい意見対立があったのである。竹中氏が金融大臣の職に就任する前は、柳沢伯夫・衆院議員が金融大臣を務めていた。柳沢氏は大蔵省主税局出身の官僚あがりである。
その柳沢金融大臣が抵抗の末に更迭され、その後釜に竹中氏が就任した背景には、アメリカからの強い圧力があった。はっきりとそう主張する国会議員がいる。まさに竹中ショックが金融界を震撼させていた最中の2002年11月7日に、参議院の財政金融委員会で行なわれた議員質問を国会会議録から引用する。質問者は共産党の参議院議員・大門実紀史氏である。
■大門議員
私は、柳沢大臣が更迭されたということも、どういうことなのか、アメリカの特にハバードさんが向こうでしゃべっていることも含めて調べてみました。すると、日本では9月13日にハバードさんと柳沢大臣の会談があって、ハバードさんが、「更に厳しい銀行検査をやるべきだ」と、「将来的には公的資金も念頭に置いて銀行の改革をするべきだ」と、このへんのことを柳沢大臣に言われたら、柳沢大臣は「日本はそんな状態にはないんだ。今は必要ない」と突っぱねられた。ここで意見対立があったという報道がワシントン・ポストでされています。この後、柳沢大臣が更迭されて、竹中大臣が就任された。
竹中大臣については、元々アメリカの評価は高いわけですけれども、この経過の中でかなり高くなってきていますね。10月30日、竹中大臣が就任されるとすぐ、ワシントン・ポストのインタビューでハバードさんが「彼は優秀だ。これで不良債権処理が進む。歓迎」というふうなことを答えております。その後も、(ハバードさんは)竹中方針支持、いくら自民党の皆さんや銀行から反発が出ても、異例の支持表明をする。「竹中案でやらないと日本は大変なことになる」という警告までやる。ちょっと異常なかかわり方だと思います。
そこで、ずばり聞いてみたいなと思っているんですけど、竹中大臣が金融大臣を兼務されることについて、アメリカの強い期待があったんではないかと思いますが、そういうことを聞かれておりませんか。
(参議院財政金融委員会 平成14年11月7日)
このように竹中平蔵はグレン・ハバードの手下なのである。このグレン・ハバードという人物は、ブッシュ政権第1期目に大統領経済諮問委員会の委員長を務めていた人で、現在はコロンビア大学ビジネススクールの学長である。現在の委員長はベンジャミン・バーナンキが務めている。
そして、このハバードとバーナンキが、来年退任するグリーンスパンの後のFRB(日本の日銀に相当する)議長の座を争っているのである。この2人は、この時期に何としても大きな業績を上げなければならないのだ。だから日本が狙われているのである。日本の郵政民営化法案が「第1回戦(参議院)」で否決されたことで血相を変えているのがハバードだ。アメリカに資金を持ち出すのが、これで遅れてしまう。
このハバードが司令官になって、「日本の不良債権の処理速度は遅すぎる。もっと加速せよ」と露骨に日本政府に圧力を加えて、日本の金融業界を混乱に陥れたのだ。ハバードの親分はポール・ヴォルカー元FRB議長であり、その上は“世界皇帝”デイヴィッド・ロックフェラー(90歳)である。
柳沢金融大臣、いきなり更迭の真相
竹中大臣自身が認めているごとく、このハバードともう一人、ブッシュ政権1期目で大統領補佐官(経済担当)だったローレンス・リンゼー氏が、竹中氏の親分筋に当たる。竹中大臣は、ハバードが2003年にいったん大統領経済諮問委員会の委員長を辞任したときにも、「彼とも個人的なつながりが深かった」と述べている。
日本の大銀行の不良債権処理を加速することを中心に据えた竹中プランの実行には、グレン・ハバードからの指令という性質が強い。ハバードは何度も日本の新聞・雑誌に登場して、竹中の強引なやり方にエールを送っていた。このことが日本政府や各省の対米交渉担当の官僚たち、そして銀行のトップたちに、かなりの圧力として働いたことがうかがえる。
前出の大門議員によると、竹中大臣は、金融担当大臣に就任する以前から、ハバードら米政界の経済高官と会って、密に連絡をとりあっていた。というか、「タケナカ、次はこうしろ。その次はこうだ」と指図を受けていた。
大門氏の質問に対し、竹中大臣ははっきりと「経済問題に関する(アメリカ政府との)情報交換は、当然のことながらしております」と答弁している。タケナカとハバードはハーバード大学で秘密の会合の参加者として出会っており、2人の関係はそのときに遡るとされている。世界各国の金融と石油を牛耳っているのは、言わずと知れたことだが、総帥のロックフェラーである。
柳沢大臣はハバードに怒鳴られて、即刻更迭された。そしてすぐさま竹中平蔵が経済財政担当大臣のまま兼務した。この異様な内閣人事となった直接のきっかけは、小泉政権の主要閣僚たちの間の「大手銀行に対する公的資金の注入の是非」における意見の強硬な対立にある。
2002年9月13日に行なわれた「柳沢・ハバード会談」において、ハバードが「もっと厳しい銀行検査をやるべきであり、公的資金の注入も念頭に入れたうえでの銀行改革を行なえ」と、恫喝をかけた。それに対して、柳沢大臣が「日本はそんな状態にはない。今はまだ必要ない」ということで突っぱねた。
ところが竹中大臣は、「経営内容が著しく悪い銀行には早めに公的資金を注入するべきだ」と前々から主張していた。これが、アメリカ側が日本の大銀行の乗っ取りを狙った「ゾンビ企業の、市場からの即刻退場」論である。日本人であれば、同じ日本人が何千人も働いている企業が苦況にあって、今にも倒産するというときに、これに対して「ゾンビ企業」などと悪罵を投げつけることはとてもできない。「ゾンビ企業」などと平気で言えるのは、アメリカの手先になりきった人間たちだけである。
竹中平蔵は、「弱い銀行を国有化したり、閉鎖させたりするなどの荒療治を行なったうえで公的資金を投入すべし」という立場だ。それに対して、「そこまでやる必要はない」 とする柳沢(金融担当)大臣と、強硬路線を取る竹中(経済財政担当)大臣の路線対立が先鋭化していた。
小泉首相は、不良債権処理の加速を「対米公約」としてプッシュ大統領に個人的に約束してしまった以上、強硬路線を取らざるを得ないところに追い込まれてしまっていた。だから、アメリカの「意向」に何度となく反発した柳沢大臣の首を切って、アメリカのお気に入りである竹中氏を金融大臣に据えることでアメリカの意向に応えたのである。
日本政府が圧力をかけられた決定的場面
世界皇帝デイヴィッド・ロックフェラーの不興を買った人間は、ただでは済まない。たかが属国日本の大臣の首など、彼の一言で切り落とせるのである。それをD・ロックフェラーは実際にやってみせた。日本の政・官・財の指導者たちは、このとき一様に恐れおののいた。
D・ロックフェラーが柳沢金融大臣と会った同じ日の2002年2月27日、D・ロックフェラーは小泉首相を首相官邸に表敬訪問している。時間はわずか30分強というところだ。その後、緊急の臨時閣議が1時間近くも開かれている。その晩には、小泉首相は読売新聞社会長の渡邊恒雄氏らの「山里会」(ホテルオークラの日本料理店「山里」が会合場所であることから名付けられた)に参加し、彼らに相談した。というか、その日何が起きたのかを実力者たちに伝えた。ティモシー・コリンズらが、自分たちの主張を通すために親分のロックフェラーを同行させ、柳沢大臣に圧力をかけたことはこれで明白である。
柳沢および金融庁と小泉・竹中内閣府(ちなみに「経済財政担当大臣」というのは内閣府に所属している特命大臣である)の対立だけでは済まない。その裏側には世界の最高実力者であるデイビッド・ロックフェラー自身の強硬な対日要求があったのである。
金融庁による「金融ファシズム」が日本を襲っている
今の日本国の金融政策を動かしている得体の知れない「金融庁」という役所がある。日本銀行が持っていた「民間銀行を監督・検査する権限」を奪い取ってできたのが金融庁だ。財務省国際金融局の、アメリカ財務省や商務省べったりの手先集団が組織替えで枝分かれしてできた組織だ。だから、初めから裏のある役所である。アメリカのニューヨークの金融財界が、日本の銀行を乗っ取るために作らせた、銀行いじめのための恐ろしい国家機関なのである。
今、この金融庁を上から実際に握りしめているのは竹中平蔵大臣である。2001年に竹中平蔵が大臣に登用されたときに、省庁機構の改造があり、省の数は10になった。ところが、その後、竹中のような「内閣府特命担当大臣(経済財政政策)郵政民営化担当」などという名のつく大臣をいくつも作っている。谷垣財務大臣がちゃんといるのに、経済財政担当大臣とか金融担当大臣とかを置いている。私たち国民は、新聞を読んだだけでは何が何だか訳がわからない。日本はここまでおかしくされているのだ。
金融庁という恐ろしい役所は、アメリカが圧力をかけて日本に無理やり作らせたものである。日本の金融機関、すなわち大銀行と地方銀行群に、金融検査という恐ろしい手法で直接襲いかかり丸裸にしてしまう。
そこまでやる権限がはたして金融庁なる役所にあるのだろうか。企業は自分の責任で自由に経営できるはずだ。経営に失敗すれば自己責任で倒産すればいい。だから、官僚(役人)が強制的な検査権や調査権を振り回すのはおかしい。「金融システムを守るため」というのも怪しい言い訳で、本当は日本の金融資産をアメリカに投げ渡すためだ。
ネオコンが支配する統制国家・アメリカ
ネオコン派が支配するアメリカは、策略によってアメリカ国民を戦争に引きずり込んでゆく。アメリカ国民に対しては、「テロリストが攻撃してくるので、アメリカは常時警戒態勢下に置かれてもやむを得ない」として、アメリカ国民が常時監視される統制社会あるいは全体主義国にされつつある。今のアメリカは、実際に旅行で行ってみるとわかるが、息苦しいまでの統制国家である。
今のアメリカ人は、飛行機を乗り降りするときに、空港の検査で靴を脱がされ、バンドをはずされて、バッグの中の下着まで引きずり出される。あの身体検査の屈辱にアメリカ人は皆、じっと耐えている。かわいそうな帝国臣民である。
アメリカ人たちは、凶暴化する自分の政府からの厳しい監視下に置かれているのである。「イラク戦争反対」と言うことさえできないような国になっている。今のアメリカに自由はない。
アメリカには、秩序維持の名目で、「愛国者法」ができた。これは国家の安全を守るという名の下に、アメリカ国民の言論を統制し、令状なしの捜査を容認し、証拠がそろわなくても被疑者を犯罪者として起訴できるという法律である。こういう法律でアメリカ国民を徹底的に監視する警察国家への道をひた走っている。
アメリカ知識人の中には、デモクラシーの基本原理を信じているリベラル派の人々がたくさんいる。しかし、彼らがこのことを表だって書いても、テレビ、大新聞のメディアが黙殺する。アメリカのマスコミも日本と同じく統制されているのだ。
2008年、極東有事から金融統制へ
小泉の対中国外交の失敗は、日本国にとってやがて災いとなって降りかかってくる。それは2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博の頃に噴き出すだろう。アメリカは、極東地域に戦乱(戦闘状態)を生み出す計画である。アジア人どうしをいがみ合わせる。北朝鮮と再度の緊張関係の勃発と、台湾海峡をめぐって中国が台湾に向かって軍事攻撃を仕掛けるように動かすだろう。
アメリカ軍はイラクから撤退の準備をしている。これを「出口戦略」と呼んでいる。そしてその次に、隣のイランの核開発施設に先制攻撃を仕掛けて反抗国イランを抑え込むだろう。これが終わった頃に、今度は東アジア(極東)が舞台となる。
世界の火薬庫は2つの地域しかない。それは中東と極東の2つである。中東での戦乱が終わったら、次は極東に火をつけるのである。これが世界覇権国アメリカの世界統治の手法である。アメリカは戦争をやらなければ国内の経済がもたないのだ。戦争をやることで経済を刺激するしかないのである。
そのときに、どういう状況が生まれるか。たとえば北朝鮮のほうから奇妙なミサイルのようなものが飛んできて、日本人が死亡するという事態が計画的に引き起こされるだろう。あるいは、日本の新幹線が爆弾テロあるいは脱線事故を起こされて大事故になるというシナリオが考えられる。これも大きな意味では政治謀略の一環として行なわれるだろう。
そのときに日本国内に大きな緊張が走り、日本国民が青ざめる。ついでに、一気に金融統制が断行され、預金封鎖も実行されるのである。金融統制令、すなわち旧札の使用停止と銀行からの引き出し制限(預金封鎖)がこのとき行なわれるのである。(了)
(転載貼り付け終わり)
副島隆彦拝
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