「2019」 副島隆彦、佐藤優著『欧米の策略を打ち破り よみがえるロシア帝国』が発売になる 2022年10月10日

 SNSI・副島隆彦の学問道場研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)です。今日は2022年10月10日です。

 2022年10月21日に副島隆彦、佐藤優著『 欧米の策略を打ち破り よみがえるロシア帝国 』(ビジネス社)が発売になります。


欧米の策略を打ち破りよみがえるロシア帝国

 本書は、副島隆彦先生と佐藤優(さとうまさる)先生の7冊目の対談だ。2022年2月24日にウクライナ戦争がはじまり、7月8日に安倍晋三元首相が殺害された。世界と日本において歴史的な事件が起きた。起きた出来事自体に目が向いてしまうが、その裏側に何があるかということを深く理解することが、これからを生き抜くために重要だ。その導きとなる一冊だ。

 以下に、まえがき、目次、あとがきを貼り付けます。参考にして、是非手に取ってお読みください。

(貼り付けはじめ)
    まえがき      佐藤 優

今年、2022年は歴史の分水嶺となる年になった。
 まず、国際秩序に大きな影響を与えたのが、2月24日のロシアによるウクライナ侵攻だ。

 日本の論壇がウクライナ応援一辺倒になっている状況で、副島隆彦氏は、ロシアのプーチン大統領が正しいという立場を鮮明にした稀有な知識人だ。

 この点、私は、副島氏ほど腹が据わっていない。ロシアにどのような理屈があろうとも、武力侵攻はウクライナの主権と領土の一体性を毀損する国際法違反行為で正しくないと考えている。

 他方、私はウクライナのゼレンスキー政権を応援する気持ちにはならない。この政権のウクライナ民族至上主義、ステパン・バンデラのようなナチス・ドイツ協力者を英雄視する姿勢(それが現代のネオナチであるアゾフ連隊の思想的基盤になっている)、18歳から60歳までの男性国民の出国を禁じ、最後の1人まで戦えという姿勢にはまったく共感を覚えない。

 そもそも、ロシア政府とウクライナ政府が公式に合意した「第2ミンスク合意」に基づいて、ウクライナのルハンスク州とドネツク州における親ロシア派武装勢力が実効支配している地域に、ウクライナが特別の統治体制を認める憲法改正を行う。
 そして、この地域で国際的な監視団の入った自由選挙を行い、その民意に基づいた解決をすれば、今回の戦争を避けることはできた。しかし、ウクライナは頑(かたく)なに「第2ミンスク合意」の履行を拒否した。その結果、2月24日にロシアによる侵攻を招いたのである。
 その後、ロシア軍と親ロシア派武装勢力が実効支配するルハンスク州、一部地域が実効支配されているドネツク州、ザパロジエ州、ヘルソン州で、ロシアとの編入に関する住民投票が9月25〜28日に行われ、「編入賛成」が圧倒的多数だった。プーチン大統領は9月30日に、これら4州の併合を決定した。

 地政学的に、ウクライナはロシアと西側(ヨーロッパ諸国+北米諸国)の緩衝地帯である。このような国が、NATO(北大西洋条約機構)というアメリカを中心とする軍事同盟に加わることも、ロシアと軍事同盟を組むことも、地域の緊張を著しく強めることになる。

 このように、ウクライナ戦争の将来を予測する際には、地政学的要因が重要になる。地政学を無視して、自由と民主主義というイデオロギーによってウクライナ戦争を強引に解決しようとしているのがアメリカだ。
 副島氏はアメリカ政治の専門家だ。ネオコン(新保守主義者)の力によって民主主義を世界に拡散するという思想がいかに危険であるか、と以前から警鐘を鳴らしていた。

 副島氏は、ドナルド・トランプ前大統領を支持する姿勢を鮮明にしている。たしかにトランプ氏が大統領になったほうが、棲(す)み分けを認めるので、中国、ロシアなどと安定的関係が構築できると思う。
 アメリカ政治の内在的論理を知る上で、私は副島氏から多くの知的啓発を受けた。この対談における私の貢献は、日本や欧米でほとんど報じられていないロシアの論理について詳しく紹介したことだ。

 副島氏は、ウクライナ戦争におけるイギリスの情報操作、謀略に注目する。この点について、本文でも登場するロシア政府系テレビ「第1チャンネル」の政治討論番組「グレートゲーム」が、2022年9月12日の放送で興味深い見方を示しているので紹介する。

     * * *

 ドミトリー・スースロフ(高等経済大学教授):今日(9月12日)、プーチン大統領は閣議で西側によるロシアに対する経済制裁は機能していない、と述べた。この状況でアメ
リカはウクライナにおける軍事紛争を最大限に引き延ばそうとしている。

 先週末(9月8日)、この関連で3つの出来事があった。バイデン米大統領がG7首脳とウクライナへの軍事的、経済的援助のためのビデオ会議を行った。同日、ブリンケン米国務長官がキエフを訪問し、22億ドルの長期的軍事資金提供を約束した。同日、ドイツのラムシュタイン空軍基地で、オースティン米国防長官が支援国会合で6億7500万ドルの短期支援をウクライナに対して行うと述べた。

 これらから、最低限3つの事柄が明らかになった。
 第1は、より攻撃的な重火器をウクライナに提供する意思をアメリカが持っているということだ。9月12日の『南ドイツ新聞』が、米国防総省がウクライナに最新型の戦車を提供する用意があると書いている。
 
 第2に、アメリカがより直接的に紛争に関与しようとしていることだ。『ニューヨーク・タイムズ』は、ハリコフにおけるウクライナ軍の攻勢について、アメリカがウクライナを助けたと報じている。

 第3に、この紛争に対するアメリカの実際的関与が、公式に表明されているよりも、はるかに大きいということだ。「ブルームバーグ通信」(9月9日)が報じたところによれば、アメリカはウクライナにかなり以前から、公表せずに、GPSによる精密誘導弾エクスカリバーを供与していたということだ。

 われわれは、アメリカのこういった傾向とそれがもたらす結果について、「国益のためのセンター」所長のドミトリー・サイムズ氏、対外情報庁(SVR)中将で戦略研究センター前所長のレオニード・レシェトニコフ氏と話し合いたい。

 サイムズさん、私が尋ねたいのは3番目の点についてだ。アメリカは言うこととやることが異なっている。この紛争の基礎になっているのが大きな嘘だ。それはキエフ当局だけではない。ウクライナ政府が嘘をつくということについて、われわれは幻想を持っていない。

 問題はアメリカとNATOだ。武器の供与だけでなく、極めて多くの疑念がある。まったく信頼できない。この状況で、ロシアがアメリカやNATOとなんらかの合意を達成することができるのだろうか。

 ドミトリー・サイムズ(米シンクタンク「国益のためのセンター」所長、米国籍):スースロフさん、「 戦争による最初の犠牲は 真実である 」という俚諺(りげん)がある。レシェトニコフさんもこの言葉に賛成すると思う。

 敵と情報を共有することは頭の良い者がすることでない。意図的な情報操作がある。われわれはここを攻めると見せかけて、別の場所に攻め込む。有名なのは、ソ連によるベラルーシ進攻作戦だ。ソ連は意図的にドイツが真実と異なる印象を抱くようになるような情報を流した。

 戦時には、中途半端な真実、あるいはまったく真実でない情報を流すことがある。現在行われている意図的な情報操作は、民主主義を唱道している文明的国家には馴染まない。レシェトニコフさんは、この種の問題についての専門家と思うが、これは英情報機関MI6(エム・アイ・シックス)にとっては通常のことではないのだろうか。

 MI6は定期的にインテリジェンス情報を公表している。これはプロパガンダ(宣伝)の要素が強い。これはインテリジェンスの機能と矛盾する。プロパガンダかインテリジェンスか、どちらかを選ばなくてはならない。インテリジェンスであり同時にプロパガンダであるということは困難だ。
 ここで米NBCの報道を見てみよう。アメリカが、どのように情報キャンペーンを展開しているかについてだ。

【番組での掲示】
 過去との訣別。アメリカはロシアとの情報戦を展開するにあたって、疑わしいインテリジェンス情報を用いている。
 多くのアメリカの官僚が、アメリカは信頼性の高くない情報でさえ武器として用いていると述べている。それは以下の思想に基づいている。クレムリンの戦術を阻止し、無効化するためには、ロシアの戦争キャンペーンを困難にしなくてはならない。
 モスクワの宣伝を妨害し、ロシアが現下の軍事行動に関連して、国際世論への影響を決定づけることがないようにしなくてはならない。  ケン・ディラニアン記者、2022年4月6日、NBCニュース

 スースロフさん、1970年代に、私がソ連からアメリカに移住してそれほど時間が経っていないときのことだった。私は戦略研究所で働いていた。そして週一回、「ラジオ・リバティー」(米議会が資金を提供する宣伝放送)に原稿を提出していた。

 この放送局はソ連に対する敵対的姿勢を公にしていた。私はこんな指示を受けた。まずソ連指導部に対して侮辱的な表現をしてはいけない、ということだった。それから最も重要なのは、明白な嘘をついてはいけないということだった。偏向した情報や正確でない情報も流してはいけないと言われた。

 現在、複数のチャネルでさまざまな情報がモスクワに伝えられているが、プロパガンダの嵐のようだ。米国家レベルのチャネルでは、すべての人が同じことを言っている。そのようなことが国家から要請されているわけでもないのに、誰もがプーチンと闘おうとしており、ロシアとの闘争に従事している。少なくとも私にとってこれは不快な状況だ。

    * * *

 本書では、戦時においてあらゆる国は情報操作を行うという前提で、報じられた内容から真実とそうでない事柄を区別するよう、私も副島氏も努力した。2人のあいだで、情報の評価が異なる箇所では、そのことがよくわかるように書いた。

 内政に関しては、7月8日の安倍晋三(あべしんぞう)元首相が銃撃され、死亡した事件について扱った。本件に関しては、安倍氏に対する政治的評価のみならず、事実認定についても2人の見解にかなりの対立がある。この点についても無理に調整せず、認識と意見の違いが鮮明になるように努力した。
 日本の危機はこれから一層深刻になる。危機から抜け出すためのヒントが本書には多々詰まっていると自負している。

 本書を上梓するにあたっては、ビジネス社の大森勇輝氏、フリーランス編集者・ライターの水波康氏にたいへんお世話になりました。どうもありがとうございます。また忍耐強く私の話に付き合ってくださった副島隆彦氏にも深く感謝申し上げます。

          2022年9月23日、曙橋(東京都新宿区)の自宅にて

=====
『欧米の謀略を打ち破り よみがえるロシア帝国』 目次

  まえがき 佐藤優 ……3

第1章 安倍元首相を殺したのは同盟国アメリカである
  世界的な流れのなかで起きた安倍暗殺事件と統一教会排除の動き
山上徹也は本当に安倍元首相を殺害したのか? ……20
〝おもちゃの銃〟と消えた銃弾 ……25
安倍暗殺事件で本当にベネフィットを得たのは誰か ……29
歴史の必然で分裂し始めたアメリカの対日戦略
アメリカ国務省内で起きている激しい対立 ……33
キーパーソンはマーク・ナッパーと福田達夫 ……36
日本の害毒と化した岸田政権 ……39
次のターゲットは竹中平蔵か ……42
追悼文に表れたロシアの安倍評価 ……45
サハリン2新会社設立のポイントはシェル外し ……48
日本は国際政治のゲームに参加できる立場ではない ……52

第2章 日本では絶対に報じられないウクライナ戦争の過去・現在・未来
 二度と元には戻れない世界秩序を壊した蛮行
ステパン・バンデラとは何者なのか? ……56
世界が懸念する危険なウクライナ民族主義 ……59
緒戦で欧米の罠にはまったプーチン ……63
心理戦のために仕込まれたゼレンスキー ……66
親友サーシャが教えてくれた「偽旗作戦」の実態 ……70
世界中で行われた「フォーフィチャー」と「シージャー」 ……73
世界のルールを根本的に変えた国家による資産収奪 ……76
ブチャの虐殺を誰が行い、誰が殺されたのか? ……78
虐殺事件後に大きく変わった軍事支援の量と質 ……81
家族と名誉のためなら死もいとわないロシア人 ……84
開戦と同時に激化したプロパガンダ戦と集団洗脳
ロシアにとって戦争の転換点は5月18日 ……90
「佐藤さん、あなたは気持ちも頭もロシア人と通じている」……93
戦争中に行われた集団洗脳の実態 ……95
レーニンに始まるロシア流宣伝と扇動の違い ……99
なぜかロシアのテレビに出るキッシンジャー系知識人 ……102
専門家の分析より大事な政治家が煽る〝風〟……105

第3章 「必勝の信念」から始まる戦争分析の大きな過ち
 絶対に信じてはいけない日本のロシア専門家たち
完全に空論と化した「核抑止理論」 ……110
近代500年を支配し続けてきたディープステイト ……113
沖縄人の痛みとウクライナ人の想い ……115
戦争終結へ向けての3つのシナリオ ……117
イギリスが行う卑劣な諜報戦略 ……121
『国民の僕』で描かれたウクライナ国家の終焉 ……125
ノイズにすぎない日本のメディア情報 ……129
正しかった橋下徹の〝特異〟な考え方 ……132
世界を動かしているのはカネではなく政治と思想
データが細かいロシア、大ざっぱなウクライナ ……136
国連憲章にのっとったロシアの軍事行動 ……137
戦場に転がっている兵士の死体の意味 ……140
戦争犯罪人に仕立てられたシベリアの整備工 ……142
政治を上から動かしているのが思想 ……146

第4章 アメリカとイギリスによる戦争犯罪の恐るべき真実
 あらかじめセットされていたウクライナという時限爆弾
8年前からウクライナに介入し続けているアメリカ ……150
なぜ同時期にマイダン革命が起き、ISが出現したのか? ……154
ヴィクトリア・ヌーランドとネオコンの思惑 ……160
トッドが語ったウクライナという国をめぐる〝常識〟……165
『ひまわり』と『隊長ブーリバ』に描かれた真実 ……169
隠れた危険国家ポーランドの実態 ……173
ポーランドを巧妙に利用するイギリス ……176
「4州併合」の背景にあったウクライナ軍の蛮行 ……180
時間とともに瓦解していく「西側」という正義の旗印
暴落しないルーブルのひみつ ……187
ロシアが忌み嫌い続けるドイツ ……190
本当のワルは、イギリスとバチカンだった ……191
北欧とナチスのあからさまな繋がり ……195
すでに崩壊しているAUKUS ……199

第5章 ウクライナ戦争を乗り越え 復活するロシア帝国
 中国とロシアの主導で塗り替えられる勢力図
古くて新しい帝国と帝国のぶつかり合い …… 204
中国はロシアを屈服させるのか? ……207
ロシア独特の帝国の作り方 ……211
アメリカから英中に移行する金相場の覇権 ……214
始まったザ・ウエストとザ・レストの戦い ……217
ディープステイトと優生学という大問題 ……220
世界中が見誤った「哲人王」プーチンの底力
実はトランプはそれほど強くない ……227
中東とロシア、ウクライナ関係のカギは食料 ……230
イスラエルのあいまい戦略とイランの核武装 ……233
ゼレンスキー暗殺の可能性 ……234
トラスのイギリスでは何もできない ……238
G7首脳を返す刀で斬り捨てた裸のプーチン ……241
ロシアは勝つが、プーチンのやり方は間違っている ……247

あとがき 副島隆彦 ……253

=====

         あとがき      副島隆彦

 この本は、私と佐藤優氏の7冊目の対談本である。世界がめまぐるしく動く。時代の転変の中で、次々と押し寄せる暴風雨の中で、自分の考えも、木の葉が舞うように飛び散る。

 それでも個々の人間の命は有限である。ハイデガーが言った、人間という現存在[げんそんざい](ダーザイン)である。佐藤優氏も私も、もうそんなに長くは生きないと思う。佐藤氏は、大病をいくつも抱え、手術で次々とそれを乗り越えて、それでも旺盛に執筆活動をしている。この人は、普通の人間とは違う。恐るべき生命力を持っていて驚嘆する。

 本書の「まえがき」で佐藤氏は、「今年(2022年)を歴史(世界史)の分水嶺」ととらえた。ウクライナ戦争の戦況を大きく描き、そこにロシアの最高級の知識人の名を4人挙げている。彼らがロシアのテレビ討論番組に出演して率直に語る内容が、どれほど重要か、佐藤優の解説が、私たちに教えてくれる。

 ①ドミトリー・スースロフ(政治学者) ②ドミトリー・サイムズ(政治分析者) ③レオニード・レシェトニコフ(SVR 対外情報庁) ④ウラジーミル・ソロヴィヨフ(番組司会者)の4人である。

 ②のドミトリー・サイムズ氏は、何と、ロシアから政治亡命して、今はアメリカの国家情報部のために働いている。佐藤氏が、「このサイムズ氏は、米国務省のキッシンジャー系の知識人です」と教えてくれた。

 ④の ソロヴィヨフは、ロシアで一番人気のある政治評論家であり、自分のテレビ番組を持っている。ロシア国民を、ウクライナ戦争でのロシアの勝利へ向けて、力強く啓蒙している。だから、ウクライナ政府が放つ殺し屋(ヒットマン)たちに狙われている。

 これらのロシア側の当代、最高レベルの知識人たちの堂々たる言論を、佐藤優が、この本で私たち日本人に解説してくれた。それを佐藤優は、ロシア語で聞き取って高度の価値判断(ヴァリュー・ジャッジメント)ができる。このことは、ものすごく重要なことである。佐藤優に、この任務をもっともっとやってもらわないといけない。

 日本国内に溢(あふ)れかえっている、愚劣な、反(はん)ロシアまる出しの「ウクライナでロシアは負けている」の、偏狭で浅薄(せんぱく)な煽動言論(軍事問題を含む)と、ニューズ報道ばかり、私たちは見せられている。

 世界政治の現実と真実は、それらとは全く異なる。
 私たちは、安倍晋三の死(7月8日)で、じわじわと日本の国家体制に潜入(インフィルトレイト)して、乗っ取っていた気色の悪い反共右翼の、特異な宗教団体の束縛(そくばく)と洗脳から自由になって、私たちの国(くに)の存亡の危機を本気で考えなければならない。
担当編集者たちへのお礼は佐藤優が書いたので、私は繰り返さない。

      2022年9月      副島隆彦

(貼り付け終わり)

このページを印刷する