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気になる記事の転載掲示板


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[旧・気になる記事の転載掲示板]


◆巻頭言◆
新設されたこの掲示板(BBS)は、私、副島隆彦宛ての読者からの個人メールの転載サイトです。私の「今日のぼやき」ではとても対応できない状態になりましたので、このように拡張しました。
学問道場への入門許可の意味も含みます。別に自分は入門したい訳ではないという人もいるでしょうが。私宛てに挨拶を兼ねた簡略な自己紹介文を寄せてくれた人々と、ここの先進生たちとの情報共有の意味と更なる情報開示方針決定に従う趣旨もあります。以後は積極的に各掲示板の方へ書き込み投稿して下さい。(2001年4月1日記)




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[265]国と東電相手に集団提訴=原発避難者ら1650人―請求額53億円以上【震災2年】
投稿者:かず子
投稿日:2013-03-11 14:51:19

今日のネットニューズで見つけました。低線量被曝への補償を訴えるところなどは、ホルミシス効果というものがあるのに、少しの被曝を気にしていて残念な気がしますが、何にしろ、原発避難民1650人が、国と東電を始めて訴えたということは意義のあることだと思い、転載します。

(はりつけ始め)

国と東電相手に集団提訴=原発避難者ら1650人―請求額53億円以上【震災2年】 時事通信 3月11日(月)11時54分配信

 東京電力福島第1原発事故で避難や低線量被ばくを余儀なくされたとして、東日本大震災から2年となった11日、周辺住民が国と東電を相手に、慰謝料と原状回復を求め、福島地裁、同地裁いわき支部、千葉地裁にそれぞれ集団訴訟を起こした。同日午後には、東京地裁にも慰謝料などを求め、避難者らが提訴する予定で、原告は4地裁・支部で計1650人、請求額は少なくとも約53億6000万円以上になる見通し。弁護団によると、原発事故で国を相手とした集団提訴は初めて。
 福島地裁の提訴には、事故発生当時、福島、宮城、山形、栃木、茨城各県に居住していた800人が参加。このうち、1割が避難指示区域からの避難者。原告側は放射線量を事故前の状態に戻すことと、戻るまでの間、慰謝料として1人当たり月額5万円の支払いを求めた。
 国を被告に加えた理由について、弁護団は「原子力事業は国策として推進されてきた経緯があり、国による事業と同視できる」としている。馬奈木厳太郎弁護士は提訴後、記者会見し「訴訟を通して原告だけでなく、被災者全体の救済につながる制度の制定につなげたい」と強調した。 

(はりつけ終わり)



[264]教育再生実行会議のメンバーに大竹美喜氏の名前
投稿者:渡邊隆史
投稿日:2013-01-12 10:27:05

安倍内閣の教育再生実行会議のメンバーが発表になりました。
各布陣の中でも比較的、イデオロギー色が出た顔ぶれだと思われます。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130110/plc13011021310022-n1.htm

(転載開始)

教育再生実行会議の委員が内定 座長に鎌田薫・早大総長
2013.1.10 21:30

 文部科学省は10日、今月下旬に発足する「教育再生実行会議」の委員15人を内定、発表した。座長には早大総長の鎌田薫氏が就任する予定だ。鎌田氏以外の委員は以下の通り。

 大竹美喜(アフラック最高顧問)、尾崎正直(高知県知事)、貝ノ瀬滋(東京都三鷹市教育委員会委員長)、加戸守行(前愛媛県知事)、蒲島郁夫(熊本県知事)、川合眞紀(理化学研究所理事)、河野達信(全日本教職員連盟委員長)、佐々木喜一(成基コミュニティグループ代表)、鈴木高弘(専修大付属高校校長)、曽野綾子(作家)、武田美保(スポーツコメンテーター)、佃和夫(三菱重工会長)、八木秀次(高崎経済大教授)、山内昌之(東大名誉教授)-の各氏。

(転載終わり)

ふと気になったのはここに大竹美喜氏の名前があるところ。
これは「今日のぼやき143」で副島先生が「メフィストフェレス」と評した大人物でしたね。
タカ派主導となるのは織り込み済みでも、それが「反米化」しないためのくさびでしょうか。



[263]胆管がん多発事件について
投稿者:会員番号7535 清水
投稿日:2012-12-18 22:09:35

大阪の小規模な印刷会社で、胆管がんを発病する従業員が増えている、とのことでニュースになっていたようです。最初のニュースは今年8月頃だった模様で、先日(胆管がん多発事件)として、専門家が集まってシンポジウムを開催しました。そのシンポジウムのお知らせで事件を知ったという訳です。

(転載開始)

「胆管がん多発事件はどうして起こったか?」
~原因と対策を考える~
日時 :12 月16 日(日)午前9 時30 分~午後4 時30 分
会場 :エル大阪 南ホール(地図参照)大阪市中央区北浜東3 番14 号
大阪地下鉄/京阪電車「天満橋駅」西300m、「北浜駅」東500m
主催 :全国労働安全衛生センター連絡会議、関西労働者安全センター
参加費 :無料

●午前の部(9:30~12:00)
<問題提起>
「胆管がん事件の経緯と現状」 熊谷信二(産業医科大学准教授)
「胆管がん事件の背景と意味」 久永直見(愛知教育大学教授)
「胆管がん事件と化学物質管理制度」 中地重晴(熊本学園大学教授)
「胆管がん事件を疫学者はどうみるか」 毛利一平(三重大学准教授)
<被害者からの報告>
被害者代表(予定)
●午後の部(13:00~16:30)
<シンポジスト、参加者による討論>
進行/ 古谷杉郎(全国安全センター事務局長)
片岡明彦(関西労働者安全センター事務局次長)


大阪市中央区にある校正印刷会社「SANYO-CYP 社」で胆管癌患者が多数発生している ことが社会的に明らかになりました。これまでに15 名の発症、うち7 名の死亡が確認され るという、きわめて異例の職業がん事件に発展しています。原因は、SANYO-CYP 社の 校正印刷部門の作業にあるとみられています。また、原因物質としては大量に使用された 二つの有機溶剤(ジクロロメタン、1,2ジクロロプロパン)ではないかと考えられてい ます。
関西労働者安全センターは、昨年3月に死亡退職者の知人の方々から相談が持ち込まれ たことから本件にかかわることになりました。熊谷信二産業医大准教授に疫学調査を依頼 するとともに、被害者の調査と支援を行ってきました。被害者とそのご家族、退職者や友 人の方々の協力を得ることができ、今年3月、ようやく最初の労災請求を大阪中央労基署 に提出するに至りました。
5月には報道機関が取り上げ、熊谷准教授が日本産業衛生学会で報告されるに及んで、 厚生労働省は全国調査を開始、印刷業界全般における杜撰な有機溶剤の使用実態、安全衛 生対策が明らかになってきました。これまでの印刷業における胆管癌での労災請求件数は、 全国で52件(うちSANYO-CYP 社15件)にのぼっています。
こうした惨憺たる職業がん事件がなぜ起こったのか、防ぐことはできたのか、有機溶剤 使用の規制制度に問題があったのではないか、どのような歴史的背景があるのか・・・。 本件をさまざまな視点と角度から検討し、被害者の補償・救済、今後の被害予防対策に 役立てていかなければならないとの認識から、本シンポジウムを企画いたし ました。
シンポジストには、SANYO-CYP 社胆管がん事件を最初に報告し、今も、調査を継続さ れている熊谷信二氏、有機溶剤による健康障害問題に詳しい久永直見氏、環境・労働現場 の有害化学物質管理制度に詳しい中地重晴氏、職業疫学に精通する毛利一平氏の4氏をお 迎えして、報告と問題提起をいただきます。SANYO-CYP 社被害者の方からもお話しを いただく予定です。

(転載終わり)
このシンポジウムの内容はIWJ(インデペンデント ウェブ ジャーナル)で録画、放映されており、それを見ていて気になることがありました。ここで問題になっているジクロロメタンという物質は、印刷業界に限らず金属の洗浄剤として優れているため、多くの工場で使われております。揮発性が高く、経皮吸収もあるため、注意しなければならない有機溶剤ではありますが、発がん性については動物実験では認めるものの、ヒトについては因果関係が証明されていませんでした。どれくらいの価格か詳細は不明ですが、他の洗浄剤に比べて安価なため、中小の工場で汎用されているようです。
。。シンポジウムの発表を聞いていますと、当該工場において、有機溶剤をどの程度の頻度で使用していたかとか、換気設備がどうなっていたかとか、その辺の調査説明は納得できるものの、途中から厚生労働省による全国中小企業への調査といった話題となり、
法律で決められている有機溶剤主任者を置いてなかったところ、換気施設が完備していなかったところ、特定検診を受けさせてなかったところ、などなど他の中小工場のアラをどしどし出してきて、最後は発病している11人の胆管がんの人を是非労災認定させよう、
でしめくくっていました。
 この大阪の印刷工場は、メディアに攻撃されて、労災認定をせざるを得なくなって、倒産では済まないぐらいひどい事になってしまうのでしょう。沢山の胆管がん患者が発生してるので、もうどうしようもありません。しかし、有機溶剤による健康被害の氷山の一角であり、その一方で、そのようにして身体に負担をかけながらも工場で働いて、産業を支えている多くの人がいる。。。そういった実態を知ってか知らぬか、この事件を利用して、ジクロロメタンの使用を格段に厳しくしよう、中小企業への規制を厳罰化しようといった厚生労働省サイドの意見が透けてみえて、これは町工場にとっては大変な火種となりそうだな。。と感じました。
どなたか、この件について詳しいことをご存知でしたら、教えてください。




[262]忘れられた一票 2012 第22回最高裁判所裁判官の国民審査が世界一わかっちゃうサイト から 西川伸一教授(明治大学政治経済学部教授)へのインタビュー 『裁判のベテランがひとりもいない最高裁』
投稿者:川端優美子
投稿日:2012-12-16 20:09:52

群馬のゆみこ(川端優美子)です。

今日は2012年12月16日(日)で、衆院選の投票に行きました。そうしたら、辞めさせたい最高裁判事に×をつける紙を渡されて、「あ、国民審査か、忘れてた」ということで、適当に×をつけて出しちゃおうかな、とか、真っ白で出しちゃおうかな、という考えも頭をよぎったのですが、比例代表と小選挙区だけ投票して、国民審査の紙を「誰がわりぃ判事か調べて、また来ます」と係りの人に預けて、いったん家に帰りました。

「ついに小沢・鳩山 民主党が政権を取るぞ」という2009年の衆院選では、日本中が改革の期待に燃えていて、わたしも国民審査のことまでネットで調べてから行ったものですが、今回はすっかり忘れていました。 それで、家に帰って、ネットで調べてみると、こんな素敵なサイトがあったので、皆さんにご紹介します。

「忘れられた一票 2012 第22回最高裁判所裁判官の国民審査が世界一わかっちゃうサイト」:http://miso.txt-nifty.com/shinsa/

ここに「国民審査の×ガイド 2012」というのがあって、5問の設問に答えていくと、どの判事が どれくらい自分の考えと離れているかが点数で分かる、というものです。このサイトを作った人(たぶん「長嶺超輝」(読めない)という人、九州出身の法律系ライター。NPO法人“企画のたまご屋さん”出版プロデューサー。『裁判官の爆笑お言葉集』(幻冬舎新書)他 著者)は、8点以上の判事は×をつけることを提案しています。 わたしもやってみて、8点以上の判事三人に×をつけることにして、再び投票所へ行き、国民審査を済ませました。面倒だったけど、わたしなりにちゃんと出来て、晴れ晴れとした気持ちです。 また、個人でこのような啓発サイトを作ってくれた方に、大拍手をしたいと思います。“民間人”“普通の人々”の創造力というのは、すごいわぁ、と思います。判事たちの似顔絵まで、それぞれ描いてあるんですよ。どなたが描いたのかしら。ただ判事の名前が書いてあるだけでなく、この似顔絵があるお陰で、判事たちがぐっと具体的に感じます。こういうセンスは素晴らしいと思う。

それで、「気になる記事の転載」ですが、同サイトにあった西川伸一教授(明治大学政治経済学部教授)へのインタビュー 『裁判のベテランがひとりもいない最高裁』が面白かったので、転載します。 副島先生と山口宏さんの『裁判の秘密』という、とっても面白い本を思い出しました。 では、どうぞ。

取材日:2009年5月19日(東京・神田神保町 明治大学・駿河台キャンパス 西川伸一研究室)だそうです。インタビュアーは長嶺超輝さんと思います。

(はりつけ始め)

西川伸一教授 『裁判のベテランがひとりもいない最高裁』… 国民審査スペシャルインタビュー

日本の裁判所では、どういうわけか、あんまり裁判をしない裁判官のほうがエリート扱いされ、人一倍の出世を重ねていくとのこと。

 すなわち、キャリアを重ねて最高裁判事に就任する裁判官というのは、裁判の現場から離れていた期間のほうが、むしろ長い、ということだ。

 裁判をやらないからエリートなのか? エリートだから裁判をしないのか?

 “裁判のベテラン”が、ひとりもいない最高裁判所の実態とは、どんなモノなのだろう。

 私の愛読書である『日本司法の逆説』著者の、大学教授にお会いして、尋ねてきました。 いろいろと。

(以下、氏名表示につき敬称略)

  西川伸一(にしかわ・しんいち)
 1961年、新潟県生まれ。
 1990年、明治大学大学院 政治経済学研究科 政治学専攻博士後期課程退学。
 同年、明治大学政治経済学部 専任助手。
 2005年、明治大学政治経済学部 教授。
 著書に『官僚技官 ― 霞が関の隠れたパワー』(五月書房)、『立法の中枢 知られざる官庁・新内閣法制局』(五月書房)ほか多数

 
■ 政治学者が、法廷で見たモノ

 ――― 先生は国家論について研究されているということですが、

 西川 「はい」

――― 裁判所について研究しようと考えた、キッカケを聞かせていただけますか。

 西川 「これは……、私のまったく不徳の致すところで」

――― いえいえ。とんでもないです。

 西川 「『官僚技官』という本を刊行した後にですね、ここにも紹介した農林水産省の元役人の方から手紙が来まして、『オマエの書いていることは間違っている』と。 もっといえば、名誉毀損であると」

――― は……はい。

 西川 「でも、私のやったことは、新聞記事を引用して、典拠も示して。 それでも『オマエは全然、事実関係を確認しなかっただろう』と、そういう苦情をいただきまして。 でも、引用するとき、いちいち登場人物に確認するなんてことは、普通しませんし」

――― 普通しませんね。

 西川 「記事書いている人も、一流のライターさんだし、信用して書いたんだと。 しかし、やっぱりお叱りをいただきまして、ついては、首都圏で出ている5紙に謝罪広告を出せと。 そういう手紙が舞い込みまして」

――― はい。

 西川 「でも、私がでっちあげた記事じゃないわけですし、私としては、あれこれ言われる筋合いはないわけで、心外であると。 それで無視してたんですけど、数カ月ほど後に、東京地方裁判所から特別送達といういかめしい封書が届きまして」

――― そうですか。

 西川 「それで私は民事裁判の被告になったことを知ったわけです。これは大変なことになったということで、弁護士の方を紹介していただいて、法廷闘争になったんです」

――― はい。

 西川 「むしろ表現の自由や学問の自由の侵害だ、と言って争ったんですが、東京地裁の判決は、私の敗訴で、金100万円を払えということで、その後、高裁、最高裁まで争いましたが、結局そのまま確定しまして、法務局に供託をしたわけですが」

――― えぇ。

 西川 「そのときに、いったい裁判というのは何なんだと。 裁判官と弁護士の方がやりとりしているのが、一切私にはわからなくて。 まるで外国語ですから」

――― はい。

 西川 「後で弁護士の方に“通訳”してもらわないとわからないと。 あるいは、裁判官によるんでしょうが、法廷にパッと入ってきて、挨拶もせずに座ると。 でも、こちらは裁判官がお出ましになると『きりーつ!』という声がかかるので、反射的に立ってしまうのですが……」

――― そうですか(笑)

 西川 「何なんだ、この権威主義はと(笑)。 非常に鼻につくというか。 もっといえば官僚的だなという印象を受けて」

――― はい。

 西川 「要するに、裁判官を研究テーマにしたのは、私怨を晴らすためにですね(笑)」

――― いえいえ(笑)。 そうなんですね。

 西川 「裁判官の、特に人事面で調べてみると、行政官僚と似たようなキャリアシステムで出世していくと。 “裁判官の独立”っていわれてるのに、まさか裁判官が出世なんて、それまで何も知りませんでしたから」

――― はい。

 西川 「裁判官が官僚機構にガンジガラメにされていて、みんな“上”を見て仕事していると。 これはもしかしたら、裁判官も十分に国家論のテーマになりうるんじゃないかと思いまして、いろいろ調べて、『日本司法の逆説』という本を出したわけです」

――― はい。

 西川 「だから今では、私、訴えてきた方に非常に感謝していますね。 あのとき訴えられなかったら、こういう研究もしなかったでしょうし。 非常に視野が大きく広がりました」

――― ちなみに、その慰謝料の100万円というご負担は、厳しかったのではないでしょうか。

 西川 「何回分か忘れましたけど、6回分か10回分か忘れましたけど、分割して…… 法務局に供託するというかたちで」

――― そうなんですか?

 西川 「大学から、普段とはまた違う給与明細が送られてきまして、大変屈辱的な思いをしました(笑)」

 
 ■ 優秀な裁判官には、なるべく裁判の現場を踏ませない

 ――― ところで、最高裁の裁判官になりうる資格といいますか、その日本に15人しかいない高みに登ることが許される人材というのは、どういった方々になるのでしょうか。

 西川 「私は今まで、最高裁の裁判官というのは、一流の裁判官がいる。 現場でキャリアを踏んだプロの裁判官が、医者でいえば外科手術の優れた名医みたいな人たちが揃っているんだと、裁判所の研究を始める前は、誤解をしておりまして(笑)。 それが大きな間違いでして」

――― そうですよね。

 西川 「裁判の現場を十分に踏んできた人は、ひとりもいないということに気づきまして。つまり、15人中の9人は、もともと裁判官でありませんから、裁判に関わった経験はあるにしても、法壇に座ったことはないと」

―――  はい。

 西川 「あと、残り6人の裁判官出身者、いわゆるプロパー裁判官も、裁判実務の現場を踏んできたというより、むしろ司法行政」

―――  はい。

 西川 「つまり、裁判所の組織を運営・維持する仕事を、キャリアの半分以上やってきた人、そういう人が、高等裁判所長官の次に最高裁判事、というステップを踏んできている、という事実が、経歴を調べるとよくわかって……、あんまり期待できないなと(笑)」

――― そのようですよね(笑) 私自身も、そのことはかなり疑問に思っていまして。 そういうふうに、裁判の現場から外れた人が偉くなっていくのは、どうしてなのでしょうか。

  西川 「とにかく、出世の“あがり”として、最高裁の前は、東京か大阪の高裁長官をやってなきゃいけないと。 高裁長官の前は、首都圏の地裁所長をやってなきゃいけない。 さらにその前には、最高裁の事務総局の局長をやってなきゃいけない、というふうに、必要なキャリアというのが、あらかじめ事実上決まっていて、そこに乗らないと最高裁の裁判官になれないんだと……。 そういう不思議な出世の“オキテ”が見えるんですよね」

――― 不思議なんですよね。 なぜ、現場をあまり知らない人が偉くなれるんでしょう。

 西川 「裁判官にとって、現場を踏むのは当たり前で、そのうえでプラスアルファの仕事ができて、一流の裁判官なのだ、という発想があるようなんですね」

――― なるほど。

 西川 「最高裁の、矢口洪一元長官が、いみじくも言っているのは、“裁判ができるのは当たり前で、さらに司法行政ができて、初めて優秀な裁判官といえるのだ”と、そういう言い方ですから。 裁判所の外にいる人間には信じられないんですが、そういう“常識”があるようです」

――― 同じ裁判官として、新人のころに採用されて、ずっと現場の裁判官として仕事をしていく方が多数いらっしゃいますね。

 西川 「はい。多数いますね」

――― でも、その一方で、現場を離れた司法行政が、いつの間にか仕事の主流になっていく、あるいは東京勤務が中心になっていく方がいる。 その分かれ目になる決め手というのは、なにかあるんでしょうか?

 西川 「まぁ、原点的なことをいえば、出身大学ですよね。 東京大学か京都大学。 この2つの大学出身者は、司法試験に合格して、司法修習を受けるとき、すでに担当教官から目を付けられていて、その中で優秀なヤツを裁判官として引っぱってこようと」

――― はい。

 西川 「それがまず第一の関門で、司法試験の成績、そして司法修習の成績が優秀で、しかも東大京大卒の人は、裁判官として任官すると、最高裁の覚えめでたく、首都圏とか大阪とか、そういった大都市に初めは赴任するわけです。

――― はい。

 西川 「初任地での働きぶりから“こいつは大丈夫だな”と思ったなら、事務総局の局付判事補(きょくづきはんじほ)といって、司法行政の仕事をやらせて、 さらに“大丈夫だな”となると、また大都市の裁判所へ行かせたり、あるいは東京ばっかりじゃアレだからというので地方に。 さすがに周囲から妬まれますから (笑)」

――― そうですか(笑)

 西川 「なので、たとえば北海道に飛ばすと。 そういう地方での仕事も やらせたりして。 逆に、司法試験や修習で超優秀でなくても、現場に出していくうちに“こいつデキルな”という評価を得ると、途中で司法行政にスカウトされたりするわけです。 その典型が、今の長官です。 竹崎さんですね」

――― あ、そうなんですか。

 西川  「竹崎長官は、もともと若いころに局付判事補をやってないですから。 判事補に任官したあと10年くらいは全国異動をさせられますが、15年ぐらい経つと、全国に8つある、それぞれの高裁の管内に定着します。 この人は東京定着、この人は大阪とか。 異動は原則として管内に限られていきます。 そして、定着地が東京以外だと、最高裁への出世はあまり望めないです」

――― そういうふうに早いうちから振り分けられるというのは、やはり受験でのペーパーテストで得点を取る能力が高いという……。

 西川 「それと、事務処理能力でしょうね」

――― ああ、たしかにそうですね。

 西川 「仕事が早いとか。 いわゆる“能吏”ですよね。 能吏を選抜しているんじゃないかと」

――― それと、最高裁に楯つかないことですか。

 西川 「そうです。 そして、言われたことを、スピーディに正確に、鮮やかにやってみせると」

――― なるほど、はい。

 西川 「やはり、判決文を書くにもスピードが点検されてるんでしょうね。 判事補時代に。 まぁ、中身がどれだけ点検されているのかという問題もあるでしょうし」

――― それは、いちおう“裁判官の独立”というタテマエがありますので、あんまり他の人が、他人の判決、何を書いているのか点検するわけにはいかないと思いますけれども。

 西川 「まぁ、でも、なんでも早く書けばいいってもんでもないので(笑)」

――― (笑)そうですね。 最低限のことはチェックしているのかもしれません。

 
■ 優秀な人材は、一度地方に飛ばされる

 ――― 裁判官の「3大エリートコース」というものがあるとのことですが。 最高裁事務総局の事務総長ライン……。

 西川 「それから司法研修所の所長と、最高裁の首席調査官。 プロパー裁判官が最高裁判事になるには、そのいずれかを通っていると」

――― いずれも法廷の外の仕事ですね。

 西川 「そうです。 今の最高裁判事も、プロパー裁判官出身の6人すべて、いずれかの経歴を経ているということになってます」

――― 3つとも通っている方もいますね。 涌井判事とか。

 西川 「涌井さんは、事務総長にはなってませんね。事務総局では総務局長」

――― あ、そうですか。

 西川 「総務局長と事務総長、どっちもやる人っていうのはいないんですよ。 今の6人中5人は、なにかしらの局長をやっているんですが、近藤さんは局長をやってないです」

――― 局長にはなってないんですね。民事局と行政局、2つも入っていますけれども。

 西川 「それでも甲府地裁の所長になって、高裁の長官から最高裁判事になっていますね」

――― 涌井さんは、若いころに局付判事補として刑事局に配属された後、旭川に飛ばされてますね。

 西川 「そうです。局付判事補の後は、だいたい地方に行かされますね」

――― そうなんですね。

 西川 「後で東京に戻すための口実ですね」

――― (笑) 北海道は雪深くて、僻地だから、のちに東京に戻すという条件をつけて行かせるということになるんですか。

 西川 「そうです。 局付の次は、皆さん札幌とかに行って、それから往復して東京管内に戻ってきてるんですね」

――― 竹崎長官は、若いころに司法研修所で勤めた後、鹿児島に赴任していますね。

 西川 「あ、そうですね。 鹿児島の名瀬支部ですね」

――― 名瀬というと、奄美大島ですね。 あったかくて過ごしやすい感じですけれども。

 西川 「この当時はですね、沖縄がまだアメリカに統治された時代だったんじゃないですか」

――― あっ! なるほど、そうですね。

 西川 「だから、日本の北と南、どっちかの端に行くんでしょうね(笑)」

――― そうか、奄美が最南端だったんですね。 当時は。


 ■ 優秀な裁判官が、事務仕事をする必要性

 ――― 日本では、特に“小さな司法”ということがいわれます。 裁判官の人数が少なかったり、裁判所にあまり国家予算がまわらなかったりする現状があります。 全体の0.4%ですか。

 西川 「はい」

――― なぜ、小さい司法のままで進んでいるのでしょうか。

 西川 「予算という面で言いますと、予算を増やそうと思ったら、財務省と交渉しなきゃいけないですね」

――― そうですね。

 西川 「その場合、事務次官クラス(※各省庁のトップ)の給与を取っている裁判官っていうのが、けっこういるわけです」

――― そのようですね。

 西川 「財務省としても、なるべく予算は抑えたいので、もし、最高裁が“もっと裁判官を増やしたいので、予算を上げてほしい”という要望を出したとしたら、最高裁の事務総局には、裁判官としての給与を得ていながら、裁判の仕事から離れている人がいますよね。

――― はい。

 西川 「財務省としては、そこに目を付けるわけです。 “それは何なんだ”と。 裁判官としての仕事をしているから、それだけの高い給与を保障してやってんだと。 裁判官が事務仕事をしてるんなら、たとえば(裁判所)事務官の給与体系で待遇をすべきじゃないか」

――― はい。

 西川 「そしたら、そのぶんの浮いた税金で、裁判官を増やせるじゃないか。 だから、予算を上げる必要なしと、こう言われてしまうわけですね」

――― そうですね、鮮やかな論理ですね(笑)

 西川 「しかし、そうしたら事務総局にいる優秀な裁判官のプライドや既得権益が削がれますから、あんまり予算の増額という要望を、財務省に言い出せないと。

――― だから、裁判所の予算も増やせないし、裁判官の人数も増やしにくいんですね。

 西川 「そうですね。 “まずは自分の身を削ってから”…… 財務省はそう言うと思うんですね。 やっぱり、各省庁で事務次官1人しか得られない水準の待遇を、裁判所では何十人も得ているわけですから、財務省としては面白くないでしょうね」

――― はい。

 西川 「しかも、裁判やってないわけですから」

――― 裁判官の好待遇を羨んで、検察庁でも、法務事務次官より上の肩書きとして、次席検事や検事長、検事総長などの地位を作って対応しているという話がありますね。

 西川 「そうですね。 そういった話に連動してきますよね」

――― そもそも、事務仕事を裁判官がやるという、そこが、ちょっと理解しづらいところがあります。

 西川 「おっしゃるとおりで、ひとつ言えるのは、戦前の司法省が同じことをやっていて、それがルーツだということ」

――― はい。

 西川 「しかし、戦後、裁判所は行政から独立したわけですから、やり方は変えてしかるべきなんですが、いまだに昔からの慣例を引きずっているのかもしれません」

――― なるほど。

 西川 「それと、全国の裁判官の人事を動かす立場としては、やはり事務官より裁判官のほうが、やりやすいんじゃないですかね。 司 法試験にも受かってない事務官の言うことだと納得しないけれども、同じ裁判官、しかも優秀だとされる裁判官に異動を命じられたら“しょうがないか”と思う ものかもしれません」

――― そういう側面もあるんでしょうね。

 西川 「あとは、司法を代表する立場で、国会や財務省と折衝する場合も、事務官より“裁判官が来た!”っていうほうが、向こうも緊張して、いいのかもしれません」

――― 緊張して(笑) たしかにありそうですね。

 西川 「もちろん、交渉技術に特化した事務官を養成してもいいんでしょうが…… どうなんでしょうかね」

――― 最高裁の人事局にいる優秀な裁判官が、ほかの裁判官を赴任地や待遇などでコントロールしているということなんですが、

 西川 「はい」

――― いったい何をコントロールしようとしているんでしょうか。 ひとりひとりは独立しているタテマエの裁判官ですよね。

 西川 「たまたま、去年卒業した学生がですね、裁判官に興味を持って、家裁所長までなって現在は弁護士をやっている元裁判官に会いに行って、取材したことがあるんですね」

――― おぉ、そうですか!

 西川 「その彼女が、取材で聞いた話によると、“わからない”と。 いったい何を基準に自分たちが動かされているのか、現場の方はわからないらしいです」

――― わからないんですか……。

 西川 「われわれは、何か論理性があって動かしてるんだろうと思ってしまいますが、だけど実際はたまたま(笑)、なんじゃないですかね」

――― “あの人が定年で抜けたから、この人に、あっちに行ってもらおう”とか、単にそういう発想なんでしょうか。

 西川 「それをあえて整合的に見ようとすると、“国に有利な判決を出すといい”とか“無罪判決が多いから地方に飛ばされた”とか、そういう考えになりますけど、私は意外とそうじゃないのではないかと思ってます」

――― 無罪判決が割と多い川口政明さんとか、あんまり飛ばされている感じはしませんからね。 今は横浜にいらっしゃいますが。

 西川 「最高裁の人事局と、高裁の事務局が話し合って決めているわけですが、全国に2千人、3千人いる裁判官を動かすんですか ら……。 まぁ、地裁の所長ぐらいになれば、部総括(裁判長)経験者でないと、とか、目に見える条件があるでしょうが、その他大勢になると、“地方と東京 ”ぐらいの大まかな分類がある程度じゃないでしょうか」


■ 裁判官の人材バリエーション

 ――― 最高裁が、究極的に価値判断をつかさどる機関である以上、社会の各方面から、いろんなジャンルの方が入ってきていいと思うのですが、私立大学の出身者で最高裁判事というのは、出にくいんでしょうか。 可能性としては。

 西川 「最高裁の発足当時はゴロゴロいたんですが、もう、ほとんど皆さん、旧帝大ばっかりですよね。 少なくともプロパー裁判官は、東大京大で固まっていますね」

――― 人材を登用する先輩が東大だから…… 学閥の発想でしょうか。

 西川 「そう見られても仕方ないですよね。 “そんなこと考えてないよ!”と言われるかもしれないけれども(笑)」

――― (笑)そうですね。

 西川 「結果そうなってるんですから」

――― 情況証拠から有罪と。

 西川 「そう言われても仕方ないですよ」

――― 女性の裁判官から、最高裁判事になったのは…… 野田愛子さんが、かなりイイところまで行かれたんですかね。

 西川 「高裁長官ですね。 しかも札幌。これが女性のプロパー裁判官としては最高ですね。 あとは行政官出身の高橋久子さん、横尾和子さん、今の櫻井さん」

――― はい。

 西川 「また、野田愛子さんは、家庭裁判所のエキスパートで来てまして、そういう象徴的な意味合いがあったのかもしれませんね」

――― 裁判官から最高裁に入った女性はいない、ということでは、まだまだ……。

 西川 「まだまだですよね。 ジェンダーフリーということでいえば。 世の中、そういう流れですから。 もちろん“差別なんかしてないよ”と言われるかもしれないけれども」

――― そう見られても仕方ないと。

 西川 「裁判官出身の最高裁判事が6人いるなら、2人ぐらい女性でもおかしくないんですよね」

――― はい。

 西川 「大学の教員も、3割は女性にしようと、文部科学省から話が来てますからね」

――― 先生がお書きになっている冊子(明治大学『政経論叢』「全国地家裁所長の人事パターンの制度化に関する一考察(1)」)で、長官や所長クラスのベテラン裁判官のうち、女性の割合は数%、約3%とお書きですけど」

 西川 「若い人も比べたら、今はもう少し高いですけどね」

――― 憲法上、内閣が任命することになっている最高裁判事ですが、その人材登用には、最高裁の意向がかなり入り込んでいる、という話も聞きます。

 西川 「そうです。今はもう、ほぼ最高裁の意見を内閣がそのまま受け入れるラバースタンプでしょうけど、かつては佐藤栄作首相が、4代長官の横田正俊について、“あいつは酒飲みだから気をつけろ”とかですね」

――― 酒飲みだから(笑)

  西川 「60年代、70年代の“荒れた司法”の時代には、政府としても若干モノを言ったんでしょうけど、今はもう、最高裁に言われたそのままでしょうね。 もちろん、事前に下交渉はあるんですが…… 首相と最高裁長官が会う場面というのは、けっこうあるんですよ。 戦没者追悼式とか」

――― ありますね。 お盆の。 あるいは、原爆の日のメモリアルとか。

 西川 「そういう三権の長が会うときに、長官が首相に“こういう人間がいるんですが”という交渉をしているんじゃないかなと。 確証はないんですが」

――― それは、政府から積極的に把握しようというわけではなくて、最高裁からですか。

 西川 「そうしてるんじゃないかなと思うんです。 官房長官が把握してたりとか。 まず、そういう話は官房長官に行くと思うんですね」


■ 欺瞞的な国民審査

 ――― 最後に、最高裁の国民審査についてお尋ねしたいんですが、どうやったらあの制度を活かせるのか、それとも活かすべきではないのか(笑)、ご意見をお聞かせ願えればと思うのですけれども、いかがでしょうか。

 西川 「東京大学の、ダニエル・フット先生、『名もない顔もない司法』の」

――― はい、読みました。

 西川 「あの方は、国民審査肯定派なんですが」

――― はい。

  西川 「最高裁の裁判官なんて、国民はまるで知らないし、話題にすらのぼらないけれども、当の審査される最高裁判事にとっては、プレッシャーになるのかな と思います。 そういう形式的なものでも、置いておく価値はあるんじゃないかと、先生はおっしゃってまして、ですから、私も無駄だとは思っていません」

――― はい。

 西川 「たしかに、今のやり方は、どうにかして改善しないといけませんけれども、長嶺さんも本でお書きになっているように、裁判官の氏名が審査用紙に書かれた順番によって、結果が違ってきちゃうんですよね(笑)」

――― そうなんです(笑) 心理学や統計学によると、一番右側に氏名が位置する裁判官に、われわれ有権者というのは、つい×をつけてしまうものだそうなんですが。

 西川 「じつは私、ずっと棄権してるんですけれども。 国民審査は」

――― そうなんですか。

 西川 「だって、国民審査公報を見ても、着任したばかりの裁判官は、判決実績ゼロですからね。 下級裁判所での判決見ても、それは違うし、何を見たらいいのかと。 趣味を見るのかと(笑)」

――― 趣味(笑)

 西川 「趣味、囲碁です、とか言われても、何を見ればいいんだろうかと」

――― 趣味が囲碁だと、思慮深い人物像とか(笑)

 西川 「(笑)非常に欺瞞的だなと思うんですが、かといって、国民審査を全部とっぱらっちゃうと、最高裁判事の任命に対してプロテストする手段がなくなってしまいますからね」

――― そうですね。 無いですね。

 西川 「今でも、国民審査を経ているからこそ、最高裁の裁判官は、民意による正当性を万が一でも保てている側面もありますしね」

――― 正当性があるように見せる。 正当性のアリバイづくりを(笑)

 西川 「ホント、アリバイづくりなんですよね」

――― 国民審査は、○×式にしたらいいんじゃないかと、本気で思うんですよ。 単純に、たくさん○をもらった裁判官はうれしいでしょうし。

 西川 「そうですね。正当性も相当強まりますしね」

――― 今みたいに、ネガティブに×ばっかり付けられたら、裁判官だって落ち込むんじゃないかと。

 西川 「(笑)……どうしたらいいのかなぁ、国民審査。 誰も疑問に思わないんだろうな」

――― それこそ、最高裁の思うツボなんでしょうけれども。

 西川 「そうそう。 そうです。 最高裁の長官ぐらい、世間で知られていいんだけどなぁ」

――― 私だって、今の衆議院議長が誰なのか存じませんので、あんまり強く言えないですけれども。

 西川 「でも、河野洋平はテレビで映りますよね。 最高裁の裁判官なんて、広島・長崎の、原爆の日の式典に出席はしてますけれども」

――― そうですね。 長官の名前で花輪を出したりしてるみたいですね。

 西川 「でも、テレビ中継していても、首相までで映像は切れちゃうんです。 その後の衆参両院の議長とか、最高裁長官は、みんなカットされてるんです(笑)」

――― (笑) 首相以外は、テレビ的につまんないから、ってことですか?

 西川 「(笑)ひどいよなぁ」

――― (笑)今年、チェックしてみます。

 西川 「月に1回ぐらい、長官が会見開いてもいいと思うんだけど。 NHKでやってくれないかなぁ。 むかし『総理と語る』という番組があったんですが、『最高裁長官が語る』ってのがあってもいいと思うし(笑)。まだまだ時間はかかりそうですね」

――― 本日は、どうもありがとうございました。

(はりつけ終わり)



[261]アームストロング氏 水葬
投稿者:会員番号5895番
投稿日:2012-09-30 22:17:42

2010年9月15日 朝日新聞 夕刊
(始)
月の英雄 海に眠る
先月、82歳で死去したニール・アームストロング宇宙飛行士の水葬の式典が
14日、大西洋上の米海軍の艦船上であった。国旗を持つ儀仗兵に送られた
(写真)=米航空宇宙局提供、ロイター。アームストロング氏は1969年、
アポロ11号で月に着陸し、人類で最初に月面を歩いた。海軍パイロット出身
の故人の遺志に基づいて、遺灰が海に葬られた。(終)

ああ、そうなのか。確かに、陸上の墓に葬られたらまずいですな。
やはりアームストロング氏は本当のことを知っていたのかもしれません。
アームストロング氏は、自分の死後、本当は月面着陸は無かったことがばれて
しまった場合、そのことで怒った人たちに、自分のお墓を暴かれるかも
しれない、それだけはご免だと思ったのかもしれません。



[260]ニコニコチャンネル「小沢一郎すべてを語る」より抜粋
投稿者:鈴木将明
投稿日:2012-09-18 10:46:46

(政策)3つ目の緊急課題 地域が主役の社会を!
 民主主義体制においては、政治・行政について国民に責任を負うことができるのは、主権者である国民に選ばれた政治家だけであり、官僚はそのスタッフに徹する、というのが鉄則です。ところが、日本では、国政の最重要課題である消費税の増税も原発の再稼働も、官僚がシナリオを作り、政治家はその通りに行動したに過ぎません。
 しかも、そのやり方たるや、「脅迫政治」と言っても過言ではありません。「増税しないと日本国債は暴落して、国家財政が破壊する」と脅し、「原発を再稼働させないと、電力不足で大停電が起きる可能性がある」と脅迫しました。しかし、実際には、消費税増税の行方とは関係なく日本国債は国内外で買われ続け、歴史的な円高も続いています。全国の電力会社では、連日の猛暑にもかかわらず、電力が余っているのです。
 およそ民主主義国家ではあり得ないことがまかり通っているのは、官僚が事実上政治、行政を支配して、中央集権体制を維持しているからです。中央の官僚が国会議員をも差配して全てを決めて、地方に押し付けています。
 この中央集権体制を打破して、地域主権の仕組みに改めないと、日本を本当に立て直すことはできません。正に、「地域のことは地域で決める地域が主役の社会を!」です。
 そのために、行政の権限と財源を大胆に地方自治体に移しますが、特に国の補助金と政策経費51兆円のうち、年金繰入分を除く40兆円強は原則、自主財源として地方に交付する対象とします。自主財源として交付する仕組みにすると、そこから10数兆円のムダを省き、新たな財源を捻出できるという試算もあります。それは実に、今回の消費税の増税分に相当するほどの巨額な財源です。
 この巨額な財源は、最低保障年金の創設を含む年金改革やその他の新しい政策の財源とすることができます。このことについては事実、私の郷里の知事をはじめ全国各地の首長も、地方で全く自由に使える財源としてもらえるならば、いま国からもらっている補助金のトータルの半額で、いま以上に住民のためにより良い行政ができると言っています。それくらい中央の官僚支配によるムダづかいが大きいということが、ご理解いただけると思います。
 このような仕組みに改めることにより、ムダづかいを止めるだけでなく、それぞれの地域の創意工夫で間違いなく地域経済は活性化され、その結果、日本経済の回復、すなわちデフレからの脱却を早めることになります。
 さらには、「地域が主役の社会」を実現することは、国民が主役の政治を確立することであり、地域が自立することでもあります。それによって初めて、日本は自立した国家に脱皮できると思います。(貼り付け終わり)



[259]ニコニコニュース小沢一郎すべてを語るより抜粋します
投稿者:鈴木将明
投稿日:2012-09-14 13:23:18

売り上げに対する利益率(売上高営業利益率)は、中小・零細の多い小売業、飲食業で1.5%前後、比較的高い製造業でも5%程度です。消費税率が5%の現在でも、中小・零細企業は国に納めるべき消費税で資金繰りをしているケースが多く、納付期限が過ぎれば消費税の未納分に年4.3%、2カ月後からは年14.6%もの延滞税が課せられます。国から高利で運転資金を借りて倒産を先送りしているに等しいわけです。
 その消費税が8%に引き上げられれば、真っ先に小売業や飲食業が立ち行かなくなり、10%になったら、製造業もバタバタと倒産してしまいます。経営の素人でも分かる計算です。
 当然、GDP(国内総生産)の6割を占める個人消費は急速に落ち込み、デフレ不況が一層深刻になります。それが欧州金融危機の深刻化と重なると、日本経済は世界恐慌の先陣を切る形になってしまいます。
 その結果、社会保障制度の維持と財政再建を口実にした消費税増税は、倒産と失業者の急増で社会保障給付費が増え、税収の減少で財政が破綻しかねない、という何とも馬鹿げた事態に至ります。国民に責任を負わない官僚のシナリオに唯々諾々と乗っていると、こんな信じ難いことが起こり得るのです。
 政府がいまやるべきことは、私たちが3年前の政権交代時に約束したように、特別会計も含む国の総予算(207兆円)を根本から作り直し、行政のムダを徹底的になくすことです。特に、ムダづかいの多い特別会計は原則として廃止し、政府関係法人も廃止します。それだけで、毎年1兆円とされる社会保障費の増加分は十分捻出できます。
 消費税増税の前にやるべきことが沢山あるのです。だからまず、衆議院総選挙で私たちが勝利して、消費税増税を廃止しなければなりません。



[258]新聞業界は軽減税率を要求
投稿者:大川晴美
投稿日:2012-07-25 03:02:10

会員の大川です。日刊ゲンダイを除き、大手新聞各紙は一貫して消費税率引き上げに賛成していますが、そのくせ日本新聞協会は軽減税率を要求しているのです。
少し前になりますが、2012年6月28日「高橋洋一の民主党ウォッチ」 J-CASTニュース http://www.jcast.com/2012/06/28137347.html?p=all
から転載します。

(転載始め)

高橋洋一の民主党ウォッチ
消費増税「成功」で財務省に「笑顔自粛令」 新聞業界も軽減税率ロビー活動でニンマリ?
2012/6/28 17:02

10か月前の話だが、2011年8月11日付け本コラムで次のように書いた。
消費税の軽減税率について、「今は5%であるので、軽減税率はない。ところが、10%になれば、軽減税率かゼロ税率の話が必ず出てくる。そして、特定業界は軽減税率かゼロ税率が認められる。例えば、新聞は紙面上では消費税率引き上げに賛成であるが、一方で新聞社には軽減税率が認められることは財務省との間で暗黙の了解になっているという噂だ。……財務省も税率引き上げの一方で、軽減税率などを認めることが権限拡大になるので、ハッピーなのだ」

新聞への軽減税率導入を要求

消費税増税法案は、12年6月26日衆議院本会義で賛成363、反対96という圧倒的多数で可決した。この賛成数は衆議院で3分の2以上であり、再議決が可能なため参議院を無力化できる数だ。民・自・公による事実上の増税翼賛会の誕生だ。
その3党の増税談合過程で、軽減税率が盛り込まれている。新聞協会に加盟している大手新聞は、もちろん消費税増税大賛成で、増税翼賛会のお先棒を従来から担いでいる。
衆議院本会義の可決後、27日の各紙社説は、朝日「一体改革、衆院通過―緊張感もち、政治を前へ」、毎日「大量造反で通過 民主はきっぱり分裂を」、読売「一体法案可決 民自公路線で確実に成立を」、産経「増税大量造反 3党合意これで持つのか 首相は除名処分を決断せよ」、日経「『決める政治』の道筋を示した3党連携」だった。
その一方で、超党派議員が新聞、出版物の消費税率引き上げを反対し、日本新聞協会もそれを後押ししている。活字文化議員連盟(会長・山岡賢次民主党衆院議員)による20日の会合には、日本新聞協会の秋山耿太郎会長(朝日新聞社社長)らが出席し、新聞への軽減税率導入を求めた。なんのことはない。消費税引き上げに賛成しながら、新聞は軽減税率を求め、そのロビーイングを行っていたわけだ。

財務省には「禁酒令」も

軽減税率には具体的に(1)非課税の適用、(2)免税か仕入れ控除ありという二つのタイプがある。(1)は消費税アップによる仕入れ価格アップだけコスト増となるだけでメリットがない。このタイプの業界として医療があるが、めざとい新聞業界はその轍を踏まないだろう。(2)は仕入れコストアップも控除でき、場合によっては輸出業者のように税還付を受けられるかもしれない。輸出依存が大きい大企業が消費税増税に文句を言わないのも理由があるのだ。おそらく新聞業界はしっかりと(2)を求めてくるだろう。
新聞業界が軽減税率を求めているのは前から知っていたが、財務省との関係では、2010年11月、前財務次官の丹呉泰健氏(59)が読売新聞に天下ったころから、かなり煮詰まっているなと感じた。
新聞業界も喜んでいるが、財務省も同じだ。26日の衆議院本会義の採決後、財務省内では安堵感が漂っているという。そんな悲願目前で緩みを警戒して、省内で「禁酒令」がでているようだ。また「白い歯も見せないように」と笑顔も自粛されているという。軽減税率は、個別物品ごとの租税特別措置であるので官僚利権になる。酒飲んで笑いたくなるだろう。

++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。

(転載終わり)



[257]東証にまで及ぶ企業統治の欠如、経営のチェックが働かない日本企業の構造問題「自壊する「日本型」 株式会社 オリンパス症候群(シンドローム)」(チームFACTA著 平凡社)を読む
投稿者:六城雅敦
投稿日:2012-07-21 12:10:37

書評との体を為していないとのことで掲載されなかった駄文ですが、夏休み読書感想文としてこちらに投稿しておきます。書評とはどう書けばよいのか<だめな参考>としての意味があるかと思うので載せておきます。
書評として掲載されなかった理由は論旨がわかりにくいからです。

(講評)「残念ながら、三回読んでも論旨がわかりません。書評なのに引用があまりないということが一番いけません。引用部分があるにはありますが、全体の六城さんの視点との関連がはっきりしません。引用というものは引用する場所に文章全体との関係性がないと宙に浮くだけになります。」

バブル崩壊から四半世紀が経った現在でも、日本経済に大きな傷を残しており、癒えていないことが本書からよくわかります。飛ばしは大蔵省(当時)と証券・信託会社の共同作業であったのです。事件発覚後の役員人事に三井住友が強くウッドフォードの就任に反対したことが、三井住友ファイナンシャルグループが不正会計の手助けをしたという事実をはからずも知れ渡ることになりました。新聞記者OBと大蔵官僚OBの備忘録としてお読み下さい。

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東証にまで及ぶ企業統治の欠如、経営のチェックが働かない日本企業の構造問題
「自壊する「日本型」 株式会社 オリンパス症候群(シンドローム)」(チームFACTA著 平凡社)を読む

六城雅敦です。本日は6月11日です。
本書は元日本経済新聞証券部記者の阿部重夫氏(雑誌FACTA編集発行人)と磯山友幸氏、松浦肇氏と元財務官僚高橋洋一氏による4人の共同執筆です。オリンパス事件の背景とそれに連なる歴史を当時の新聞記者と官僚がわかりやすく解説した一級の資料と思います。簡単に本書の内容を追ってみます。

1.言えない秘密(タンスの中の骸骨:Skeleton in the closet) 失われた20年の正体

遡ること20年前、本書では山一証券が破綻した頃の話から金融史の裏側の解説が始まります。失われた20年(lost 2 decades)の根源を著者はえぐり出しています。発端はFACTAに寄稿した山口義正氏の記事ですが、そのパンドラの箱の中身を著者(おそらく高橋洋一氏)が内部情報として詳細に語っています。
25年にわたり「飛ばし」を隠していたオリンパスの正体こそ世界からは日本の不振の謎の答えであったのです。損失隠しを「ウチ」のためだと3代(下山敏郎(しもやまとしろう)岸本正壽(きしもとまさとし)菊川剛(きくかわつよし))の社長らが株主の金を使って不始末を処理してきたのです。
なぜ日本を代表する企業のひとつオリンパスがこのような不正を続けることができたのでしょうか。それは日本独特の「ウチ」という概念があると著者(阿部重夫と思われる)はまず指摘しています。
犯罪行為であるにも関わらず「会社のため」という身勝手な美徳で化粧した「ウチ」を信じ込んでいる経営者、役員たちこそが日本の病巣であり、失われた時代がまだまだ続くこと冒頭で述べています。

2.角谷通達によるバブル崩壊から始まるオリンパス事件簿

1985年下山敏郎が社長の時代に、プラザ合意による急激な円高による営業利益の減少をうけて積極的な金融資産の運用(財テク)に走りました。5年後の1990年バブル崩壊により損失が膨れあがったために、一層ハイリスクハイリターンの金融商品へと邁進していきます。円高抑制のために日銀がとったドル買い(円を増刷)することでマネタリーベースが増えて、87~88年頃に資産インフレを誘発しました。
その当時、もてはやされた金融商品が特定金銭信託(特金)とファンドトラスト(ファントラ)というものです。どちらも同じで証券会社が売れば特金と呼ばれ、信託会社が扱えばファントラと呼ばれたものです。本書では含み益を計上しなくて済む金融商品と説明しています。企業にとって含みの利益を計上して税金を払うことは避けたいことが本音なので広く企業に受け入れられます。この商品を開発したのが野村證券です。原理は単純で、価値が変動して解約しない限り利益が確定できないことを理由に税金の支払い義務がないこと。そして特金やファントラを担保にして銀行から融資を受ければ企業としては借り入れとなるために本業の利益を圧縮できるという理由だからでしょう。
しかし一方では一般投資家にとっては不透明きわまりなく、証券会社や信託会社の一任勘定(顧客が銘柄を指定することなく運用できる)であるために証券会社自身による価格の吊り上げも野放しで行われております。野村や山一といった証券会社は幹事として新規企業を上場させる役割もあり、集まる資金でいくらでも株価操作ができた無法時代です。当時姉が証券会社に勤めていたので鉄火場の場立ちの様子やNTT株の狂乱と新規公開株が急上昇する様子も毎晩聞いていました。まさに証券会社の「我が世の春」です。
好調な業績をあげる裏では証券会社の営業マンが絶対に負けることのない投資として損失補填をするという念書まで書いて強引な販売していたそうです。驚くことに日経新聞にも野村證券が7%の利回り保証で特金を発売した記事があるそうです。(当時のインフレは8%だった)
しかし株価が軟調になると一転して証券大手は増え続ける損失補填で大蔵省に助けを求めます。そして出された通達が角谷正彦証券局長の通達(当時、高橋洋一氏が原案を作成した)で損失補填は禁止され、一任勘定は名目上では投資顧問会社へ移管させられます。
損失補填は証券取引法違反ですが、明文化していない行為にはお咎めがないことを理由に証券会社は厚生労働省の年金福祉財団(現在の年金積立金管理運用独立行政法人)といった大口優良顧客に損失を肩代わりし、大蔵省も黙認していました。
特金やファントラの損失補填は読売新聞の記者であった清武英利氏(後に読売巨人軍球団代表)が政府関係団体を含む損失補填先の実態をスクープしています。清武英利氏により証券会社の運用損だけではなく、年金基金や公務員組合にも巨額の損失が隠されていることが世間に知れ渡りました。
92年頃住友系企業に勤めていた私は日経記者だった山口氏から住友信託がファントラの運用損で危機的状況であることを教えてもらったことがあります。太陽神戸と三井銀行が合併し、さくら銀行と名前を変えた頃でまさか住友系の信託会社がと半信半疑でしたが、当時、信託銀行も証券会社と同じく損失を抱え、顧客も損失を与えていたことが高橋洋一氏の記述でわかります。
同時に一兆円の預かり資産の半分5000億円もの含み損で身動きできない山一証券は損失補填ができないことを理由に顧客企業の簿外処理を山一の営業マンは請負いだしたという経緯があるのです。特金やファントラの損失をタックスヘイブンのペーパーカンパニーへ「飛ばす」手口は野村ではなく山一が始めたことなのです。

3.山一の飛ばしという幻のスクープ

日経新聞証券部で不自然な山一証券の財務諸表に注目していた著者の一人である阿部重夫氏が、ペーパー・カンパニーという舐めた社名(のペーパーカンパニー)の海外企業を使って6300億円もの巨額な損失を飛ばしている証拠を突き止めます。
ところが山一に泣きつかれた日経上層部は阿部の記事を黙殺してしまいます。20年後に山口義正氏がオリンパスを糾弾した記事と同じものがすでにFACTA発行人の阿部重夫氏の手で輪転機を回す手前まで用意されていたのです。
破綻直前の山一証券の「飛ばし」とオリンパスの「飛ばし」の違いは額の大小の差でしかありません。阿部重夫氏の場合は、同業他社と比べて稼ぎ頭セクターで稼がず、利益がでないはずのセクターで過剰な利益を計上しているというチグハグさから山一上層は何かを隠していると踏んでいます。
山一が破綻するほど巨額債務でほとんどの日本の代表的な企業、そして我々の掛け金を運用する厚生労働省の年金福祉財団(現在の年金積立金管理運用独立行政法人)でさえ苦しんでいたのです。そしてその傷跡はいまだ癒えていない状態、それが失われた20年であり現状でもあることを著者群は暴露しています。

ここで私は別の結論が見いだせます。
日本の大企業が資金運用で失敗しているのであれば、年金基金も大きく毀損している可能性が高いのです。財務省の傀儡である民主党野田政権が増税に異常なほどこだわっていることが証左です。消費税増税で年金基金を補填する目論見が裏では財務省主導で図られていると見ることが出来ます。

4.宮沢喜一首相の不良債権処理を先延ばしで葬った寺村信行こそA級戦犯者だ

金融機関の40兆円という不良債権処理が緊迫の懸案となっていた宮沢喜一首相当時、大蔵省銀行局長は寺村信行という男でした。経済にうとい大蔵大臣の羽田孜(はたつとむ)を籠絡(ろうらく)して寺村はあからさまに宮沢の公的資金投入案に反対しました。後に「寺村先送り行政」と言われ、決定的な不良債権処理の好機を逃します。ここでも大蔵省と銀行頭取らの責任問題をうやむやにするという「ウチ」という共通の倫理観が優先されます。
しかしすぐにツケが回ってきて日住金、拓銀、長銀、日債銀など大手が破綻することでひたすら先送りする寺村信行に批判が集まります。結局大蔵省は最後まで寺村を庇い続けるのですが、「巨額損失みんなで渡れば怖くない」という大蔵省の小役人により、たった6000億円で金融機関を救済する宮沢喜一の案を葬ったことが日本経済の先行きの分水嶺(ぶんすいれい)であったのだと、著者(阿部重夫と高橋洋一と思われる)が述懐しています。
同時に宮沢喜一首相が大蔵省銀行局に見切りを付けて、郵貯や簡保を株式投資へ回す経済対策を行いました。これはPKOと揶揄されましたが、いまではさらに状況は悪く、日銀自体でも株やETFを買い上げて価格維持をしなくてはならない状態です。
90年代から買い支えによる価格操作が公的に行われていることを冷静に見なくてはなりません。人工呼吸器と人工心肺装置でむりやり動かしている株式市場は既にゾンビとなっていると見て差し支えないと思えます。どうせ死に体なのだから1000億2000億程度の損失は永久に隠して体裁を繕ったところでどの企業も似たような物だという本音がオリンパス経営陣にあったのだと思われます。それは飛ばし先の企業名が山一の「ペーパー・カンパニー」と同じように「グローバル・カンパニー」という一瞥して実態もなく愛着も感じない社名から推し量れます。

5.エンロン破綻から綿々と連なる飛ばし請負人達

山一証券や長銀などの破綻が最初の10年とすれば、Lost Decade(失われた10年)の二巡目は2001年に起きたアメリカのエンロン(Enron Corp:エネルギー取引商社)のサドンデス(突然死)が発端となります。
エンロンもデリバティブに手を染め巨額損失はChewco(チューバッカのもじり)やJEDI(ジェダイ)といったスターウォーズの登場人物名のペーパーカンパニーに隠しています。翌年には通信会社ワールドコムも損失を隠すために38億円の架空利益による粉飾が発覚して破綻しています。どちらもオリンパスは手口を踏襲していることに注目です。
日本では同時期にクレディスイスが顧客企業の不正経理に関与していた疑いがあり、検査妨害・忌避や財務開示での不正行為で免許停止、信託銀行部門の業務停止処分がなされています。このクレディスイスの残党がBNPパリバ証券に移り、オリンパスを食い物にしていくだけではなく、野村出身であるBNPパリバ証券の債券部長は社外取締役に収まるほどの鉄面皮ぶりです。
またプリンストン債という飛ばしを目的とした詐欺商品を国内30社が購入していたことを筆者の阿部重夫は記者時代を追想しています。このような大企業の実態を記者として身近に見てきた筆者達はまだまだ「飛ばし」を請負う連中がエンロン以降も跋扈していると見ています。

(引用開始)
2008年のリーマン・ショック前後に、また巨額の不良債権が生じたはずだが、再びヤミからヤミへ、簿外へ沈める方向に行ってしまった。20年前にオリンパスで起きたのと同じような問題が、第二のロスト・ディケイドに起きた。90年代のロスト・ディケイドに「飛ばし」という商法違反を行った体制が、形状記憶合金のように戻ってきたといえる。
 オリンパスの問題は、たまたまラッキーなかたちで暴露されたともいえるが、誰もが薄々感じているように、リーマン・ショック以降の不良債権にフタをしている企業はほかにもたくさんある。これからはそこにメスを入れていかないと、オリンパスが単なる特異例で終わってしまいかねない。
(引用おわり)

6.小泉政権の規制緩和は不良債権の飛ばしの手段となった

小泉政権時代にアメリカを見習い不良債権の証券化という手法が導入されました。具体的にはSPC(特定目的会社)や任意組合、匿名組合といった監査の緩い事業体が認可されています。当時竹中平蔵(金融および経済財政政策担当)大臣の元で財務局理財部長として働いた高橋洋一氏は、このSPCが結局不良債権の流動化ではなく、隠れ債務に苦しむ企業にとって飛ばしのビーグル(乗り物)として使われたことを指摘しています。構造改革という美名のもとに従来の法人格を廃止して有限責任事業組合(LLP)といった新たな法人格を創り出しましたが、結局は銀行の都合の良いものに当初の目的から換骨奪胎されていったのです。

(転載はじめ)
 銀行のバランスシートから不良債権を消すため、フンづまりの「導管体」を優先するあまり、あの手この手のアメを用意しすぎたのではないか。投資家保護といいながら、ディスクロージャー(情報開示)はおざなりなものだったし、コーポレート・ガバナンスも特定資産総額の5%以上の優先出資証券をオリジネーターが保有するといった例が少なくなく、オリジネーターからの切り離しが不十分で、監査法人から「これで売却といえるのか」と疑問の声が上がったほどだった。
・・・中略・・・
たしかにSPCやLLPは、動脈硬化を起していた会社法制に風穴をあけた。でも、いわば鬼っ子的な存在だったから、霞ヶ関の権益争奪が絡んで折衷的な制度にとどまり、全体のガバナンスやディスクロージャー、さらには行政の監視などで整合性がとれていない。不動産ミニバブルの発生も、オリンパスの「飛ばし請負人」たちのような“悪の花園”も、パッチワークだった制度そのものの欠陥に咲いたあだ花ではなかったか。
案の定、リーマン・ショックで邯鄲(かんたん)の夢は破れた。ティモシー・ガイトナー米財務長官は、危機の本質は「シャドー・バンキングシステム」(影の銀行システム)で取り付け騒ぎが起きたことにあると言っている。これは財務省など規制当局の管轄街にあるヘッジファンド、MMF、ストラクチャード・ファイナンスなどの金融機関の「並行システム」がパニックに陥ったというのだ。
日本でもモルガン・スタンレーは三菱UFJ傘下に入り、ダヴィンチは債務超過、上場廃止となった。新生銀行も連続赤字で業務改善命令を受け、痛手からいまだに立ち直れない。その躓(つまず)きはSPCやLLPなどの道具を使って生まれた「シャドー・バンキングシステム」から発生していると言っていい。
 だから第二のロスト・ディケイドの日本復活が頓挫したことと、オリンパスの不正経理スキャンダルは、実は裏表の関係にあるんだ。
(転載終り)

7.偽りのコンプライアンスと監視不在の日本

オリンパス事件の裁判では被告側の弁明で「経営判断原則」が焦点になると思われます。オリンパスは今回の粉飾に関して企業存続と発展のためにやっていたことだから経営側の責任を問うなという答弁をしています。ここで旧経営陣の反論のキーワードは「経営判断原則」という言葉です。経営判断原則とは「将来、仮に損失を計上したとしても、十分に情報を収集して判断した経営方針なら取締役義務違反ではない」という米国型会社法の理念を日本では経営判断原則という概念で倣っています。
オリンパスはこの世界的な共通認識を悪用し、露骨に「M&Aは中核的戦略」として不正を隠した例であると指摘しています。ウッドフォード氏が取締役会で議題をM&Aに提出したとたん社長信任の議題へ変更し、役員全員が不信任に挙手するといった具合に経営陣全員が不正を隠すという意志に現れています。
でたらめなM&Aに対し、社外役員や会計士がチェックを行う体制はオリンパスにも名目上存在しますが、その社外役員や会計士らはゲートキーパーの役とはなっていないとウッドフォード氏は社長となってはじめて知るのです。
株式会社とは誰のものかというと、株主がオーナーであり取締役らは委託をうけた代理人であることが欧米では共通の認識です。本文中ではその一例として、株主総会では「マイカンパニー」ではなく「ユアカンパニー」と株主には説明するのです。
これは政治世界でも同様でエージェントのはずの人たちが我が物顔で振る舞う仕組みになっていると指摘しています。その代表例が国会議員であり、トップを首相とする行政機構であるはずが日本ではエージェントが主体(プリンシパル)のように振る舞う土壌があるからだと企業コンプライアンス専門の弁護士が指摘しています。

8.結局オリンパスは誰の所有物だったのか?

解任されたウッドフォード氏が株主の委任状争奪戦(プロキシー・ファイト)を挑みますが早々にあきらめます。撤退の理由を説明した記者会見でメーンバンクの三井住友銀行がウッドフォード氏の復職を歓迎しないことであると述べています。
本書では三井住友銀行の持ち株会社である三井住友ファイナンシャルグループが不正会計に関与していたという疑惑もあるとした上で、現経営陣を温存したままいち早く「支援」を明言していることは不自然であると指摘しています。900億円もの融資先であるために不正を暴いたウッドフォード氏に協力を求めることが最善であるにも関わらず頑なに排除する三井住友銀行には「銀行の利益にならない何かがある」と本書では指摘しています。
前述したように山口義正氏も日経記者時代に「住友信託銀行がとてもあやしい」とにらんでいたようですが、まさか20年後にオリンパスと住友銀行本体までが不良債権で一心同体だったと知ることになるとは私も驚きです。
企業は誰のものか?少なくとも我が国では経営者の生殺与奪は銀行が持っているようです。

9.株価が上がらないのは日本市場では支配プレミアムがないため

結局日本の株式市場が低迷している理由に、オリンパスのような不祥事に対して銀行側の債権保全が優先されてしまい、銀行と経営者間の「ウチ」の論理でかたづけられるからであると説明しています。このように株主の企業統治は形骸化して、オリンパスの再建案も三井住友銀行系SMBC日興證券が主導して資本提携先を探しています。
株式には転売できる「物的証券」と配当を受け取る「利潤証券」、そして経営に関与できる「支配証券」という3要素があると教科書では示していますが、日本には支配証券としての価値は欠落していることを本書では述べています。

日本株は8~9割が機関投資家により株式指数と連動するパッシブ(受け身)運用をしているだけで、個別企業を評価して株式売買を行うアクティブ(積極)運用は少数です。アクティブ運用は支配権を重視した投資ですが、買収防衛を名目に株式の持ち合いが横行している現状では支配プレミアムが見込まれないから割安のままなのだと本書で解説されています。M&Aに脅かされない環境下では経営者には外部からの圧力がなく、ガバナンス自体が意味をなさないのです。
いうまでもなく、根本の理由は銀行との持ち合いがあるために支配権を争奪すること自体が閉ざされているからです。日本の株式市場は株式の持つ支配権の流通という役目を無視したものであるのです。

10.株主を見殺しにする東京証券取引所

本書ではコンプライアンスを監視する東京証券取引所の実態もわかりやすく解説しているので転載します。
(転載はじめ)
オリンパスの上場維持を決めた東証は株式会社と自主規制法人に分かれていて、一応ルールを監督し、上場廃止の是非を判断するのは自主規制法人ということになっている。理事が5人いて、理事は財務省から天下りしている林和元事務次官、残り4人のうち2人は東証出身で、あとは弁護士の久保利英明さんと公認会計士協会の元会長の藤沼亜起さんという構成だ。分かる人には分かる。これはもう最初から3対2で動かない。天下りの元役人と取引所のプロパーの3人が多数となるよう、わざと選んでいる。
 これは、完全に財務省が握っている人事だ。安倍政権で天下りが問題になったとき、自主規制法人なのだから役人が行くのはおかしいという話になった。そんなに役人が行きたいのなら、金融庁でやればいい。すると、当時、財政精度等審議会会長であった東証快調の西室泰三氏が「これは民事の人事で、うちがお願いをした」と言って、塩崎恭久官房長官に要請してきた。(現東証社長の)斉藤惇氏は、規制業種は「1センチ動かそうとして2ミリしか動かない」からつらいと言っていたが、ほとんどあきらめ顔だね。最初からお上ありきが前提で、資本市場の総本山を財務省が握って離さないことは明らか。財務省が腹をくくって、オリンパスのような会社はアウトだと言わない限り、東証としては上場廃止の結論は出せないんだ。今回も勝栄二郎財務事務次官の意向を忖度(そんたく)したというよ。
(転載終り)
このように天下りでずぶずぶです。東証と大証の統合も自主規制法人が一つ減ってしまうために財務省は統合を反対していたというオチまで暴露しています。勝栄二郎以下財務官僚と天下り役人が証券市場を倒壊させた大罪人です。

11.感想:P.F.ドラッガーも指摘していた日本企業の問題

本書「オリンパス症候群」を読了したところ、ドラッガーを思い出しました。既に1981年(昭和56年)の時点で取締役会が機能していない日本企業へはドラッガーも警鐘を鳴らしています。
ドラッガーのキーワードに「モダン」(近代的合理主義)という単語があります。ドラッガーによるとモダン時代はジェームスワットによる蒸気機関で工業社会と同時にアダムスミスにより「国富論」が発表されたことで始まりました。ジェームスワットとアダムスミスはイギリス・グラスゴーの親友同士です。
モダンは第二次大戦で終焉し、戦後は「ポストモダン」の時代へと移ったとドラッガーは説明しています。さらにポストモダンとは「組織」の時代であると定義しています。組織が大切だからこそ経営者は責任とマネジメントを重視すべきと喝破しているのです。(組織とは家庭から国家体制まで含まれます)
「モダン」は副島隆彦先生もよく説明されます。西洋で一大転機となったモダン(近代的合理主義)を経験していないのが我が日本の実状であると。口汚く言えば今でも「土人国家ニッポン」です。社会制度のどこに「モダン」があるのか!という嘆きが副島隆彦の著書の根底にあるのです。
本書「オリンパス症候群」では日経新聞証券部の元記者達と元財務官僚の著者達が口々に日本の企業統治のどこに「モダン」があるのか!と読者に投げかけているように思えます。
ドラッガーは戦後にゼネラルモーターズ(GM)に経営コンサルタントとして招かれて企業組織を徹底的に調査しました。ポストモダンを見据えて膨大な調査結果を元に作成された分権の勧告はGM幹部を激怒させ、無視されました。皮肉なことにライバル社がドラッガーに注目して業績を上げていきます。はたして失った10年(lost decade)を繰り返す日本の硬直した社会に未来はあるのかと思わずにはいられません。(了)



[256]ジャーナリズム(Journalism)の教本として読む「サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件」(山口義正著 講談社)
投稿者:六城雅敦
投稿日:2012-07-21 11:48:45

ボツとなった書評ですが夏休み読書感想文としてこちらに投稿しておきます。オリンパス事件の発覚から月日が経った今では青臭い文章です。赤っ恥ものですが書評とはどうかくかという<だめな参考>としての意味があるかと思うので載せておきます。

書評として適していないのは以下の3点です。

1)評者の見解が大部分であることがダメ
 書評というのは全体の6割から7割を本書の要約に費やし、残りの3割で自分の見解を述べるというスタイルが米国大学では鉄則なのだそうです。読み手は本が述べているのか、評者が述べているのか判断できないので混乱を招きます。

2)コラムニストの紋切り型の論調であることがダメ
日本は企業統治(コーポレートガバナンス)ができていないからこのような経済事件となったという一般的な論調に流されがちになります。解説に徹し、別の視点を加えるといったわかりやすさが足らないのです。
またその後解任されたウッドフォードは解任不当の裁判で12億円もの和解金を受け取っています。はたしてウッドフォードは正義の味方だったのかという疑問にも言及していません。

3)読みにくい、わかりにくい
趣旨が散っているので理解しにくいとの指摘で推敲を重ねたのですが、結局読むに値する文章にはなりませんでした。書評とは「要約する技術+自分の視点を簡潔に述べる技術」であることがお恥ずかしながらわかりました。

このような欠点があることを踏まえてお読み下さい。
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ジャーナリズム(Journalism)の教本として読む
「サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件」(山口義正著 講談社)

六城雅敦です。本日は平成24年5月15日です。3月28日に発売された「サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件」を遅くなりましたが書評します。
本著は今年度の雑誌編集者が選ぶ第18回雑誌ジャーナリズム大賞を受賞しています。

著者の山口義正(やまぐち よしまさ)氏は日本公社債研究所(現:格付投資情報センター)のアナリスト、ブルーンバーグや日経新聞の記者を経て、現在は経済ジャーナリストとして独立しています。経済誌やビジネス誌での記事で名前を見かけるほか、テレビで株式市場の解説などテレビやインターネットメディアでも活躍の場を拡げられています。とはいえ記者クラブに属していない取材費など持ち出しの一匹のフリージャーナリストです。

その山口氏は昨年6月にオリンパス社の架空巨額買収の疑惑を雑誌FACTAで発表し、株式市場に激震を走らせました。その結果、菊川前社長を含め関係者7名が逮捕されました。巨額損失が露呈した結果、映像や医療機器の手堅い優良企業として知られていたオリンパス社は自己資本が毀損してしまい資本提携先を模索するまで凋落しました。買収企業の実態がない(ペーパーカンパニー)であるので実質は234億円もの債務超過状態となっていたことが山口氏の取材と報道で白日に晒されました。
それでもオリンパス社は未だ常識外れな買収企業ののれん代を有価証券報告書には計上し、財務諸表ではその他資産としてのれん代を貸借対照表に計上することで財務上は体裁を繕っています。

本書の内容は山口義正氏が趣味のカメラ仲間とのたわいのない会話からオリンパスの不透明な会計処理に半信半疑ながら興味を持ちます。やがて優良会社と信じられてきたオリンパス社の巨額経済犯罪をスクープする経緯を記したドキュメントです。FACTAで記事をお読みの方には新味はないでしょう。

しかし経済誌記者であった著者の経験から財務諸表の不自然な会計支出を読み解き、取材を進める過程はまるで推理探偵小説のようです。
さらにこの本の特筆は文中の至る所で経済ジャーナリストである著者がジャーナリズム(Journalism)を自問している点です。

■オリンパス巨額事件の概要
新聞記事では連日掲載されていたので改めてここで述べる必要はないので、おさらいとして産経ニュースから転載します。罪状は有価証券報告書の虚偽記載となります。逮捕者は旧会長、旧副社長、旧監査役と3社のコンサルタント社長ら4名の計7名です。

(産経ニュース 転載始め)
菊川前会長ら逮捕 指南役含む7人
2012.2.16 22:12
 オリンパスの損失隠し事件で、東京地検特捜部と警視庁捜査2課は16日、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで、前会長の菊川剛容疑者(70)ら旧経営陣3人と、損失隠しの指南役とされる元証券会社取締役、中川昭夫容疑者(61)、コンサルタント会社社長の横尾宣政容疑者(57)ら計7人を逮捕。法人としてのオリンパスも立件した。粉飾額は約1100億円。特捜部などは海外当局とも連携し、巨額損失隠しの全容解明を進める。
 ほかに逮捕されたのはオリンパス前監査役の山田秀雄(67)▽前副社長の森久志(54)▽コンサル会社取締役、羽田拓(48)▽同元取締役、小野裕史(50)-の各容疑者。
 特捜部や警視庁の調べによると、菊川容疑者らは含み損を抱えた金融商品を海外の投資ファンドに移し替える「飛ばし」により、純資産額を約1100億円水増しし、平成20年3月期までの2年間、虚偽の有価証券報告書を関東財務局に提出した疑いが持たれている。菊川、山田、森の3容疑者は、これまでの特捜部の聴取にいずれも容疑を認めていた。
 同社は財テク失敗により、1990年代から金融商品の含み損が生じた。このため森、山田両容疑者は少なくとも平成10年ごろ、横尾、中川両容疑者らに相談し、英領ケイマン諸島にファンドを創設するなどして「飛ばし」のスキームを考案し実行。菊川容疑者を含む歴代社長は定期的に報告を受け、了承していたとされる。同社がファンドに飛ばした損失は15年の時点で1177億円。18~20年に行われた国内外4社の買収で支払った計1348億円を還流させ、穴埋めに充てていた。損失穴埋めのために利用された助言会社への支払いについては取締役会が契約に関する決定を菊川容疑者に一任していた。

●有価証券報告書の虚偽記載
 上場企業は事業年度ごとに、財務諸表や経営状態などに関する重要事項を記載した有価証券報告書を国に提出する義務がある。虚偽記載を禁じた金融商品取引法の罰則は、平成18年の法改正で強化され、個人に対しては10年以下の懲役または1千万円以下の罰金が、法人には7億円以下の罰金が科される。
(転載終り)

上記の新聞記事で十分理解できたというのであれば、これから先をお読みいただく必要はありません。

■山口義正が暴いた上場企業に巣喰う野村證券OBとスキームにすがる経営者像

東証の開示基準に満たない資本や収益規模の会社を買収して「損失を『飛ばす』」スキームには証券や銀行のOB、今回の事件には野村證券OBが関わっています。一方、経営側は株主と社員を欺くために買収した子会社を新規事業としてまとめ、子会社(オリンパスビジネスクリエイツ)の配下に集約しています。このような黒字化することもなく掃きだめとなった新規事業部門を、会長である菊川剛(つよし)や財務担当副社長の森久志らは悪質なことに英国人マイケル・ウッドフォードを25人抜きで社長に抜擢し、膨らむ損失の処理をさせようとしました。
つまり菊川に忠誠を誓う役員に傷を負わさず、損失問題は英国人の新社長に責任を押しつければ良いと考えたのでしょう。まるで違法風俗店のオーナーがぺーぺーの若造を店長にして摘発の身代わりさせるように。
しかしこの目論見は「策士策に溺れる」の諺の通り、山口義正が投稿したFACTAの記事で瓦解していきます。

著者のその後の調査でオリンパスはどす黒い疑惑で有名な投資業社ジェイブリッジ(東証二部)からアルティス社の残り株式を買い上げて完全子会社としていることを知ります。
ウッドフォードの調査でも英国医療機器会社ジャイラスの買収には野村OB佐川肇、中川昭夫が設立した会社を通して株式が売買されています。ジェイブリッジの元社長は桝沢徹(ますざわとおる)という和光(現みずほ)証券のOBです。
ファクタ12月号ではオリンパスの社外取締役である林純一(野村OB)も横尾宣政と同じように自社で生成したファンドをオリンパスに買い取らせる手段でジャイラスの買収に噛んでいます。
このようにオリンパスは優良企業どころか、内、外から蛭が喰いつかれるように証券OB達(主に野村)が喰い付いていたのです。
このような輩が跋扈する背景には、20年もの償却期間が認められる「のれん代」で損失隠しを認めている現状もあります。

(P217 転載はじめ)
これでは日本の経済全体がオリンパスに再度粉飾決済を是認し、黙認したようなものだ。こうした判断に、巷間噂されているような政治サイドや中央省庁の意向が働いているとすれば、これは「官製粉飾決済」と言って差し支えない。
日本の経済社会が総ぐるみで過ちを隠し、見て見ぬふりとして口を閉ざすなら、「これはまるで・・・・・・」と思っていい。「まるで日本社会全体がオリンパスになったようなものではないか」と。そしてこれは、日本が守りたかった東京市場の質なのか、投資家なのか、オリンパスなのか、銀行や監査法人などの関係諸方面のメンツなのか、という問題をはらんでいる。
(転載おわり)

目に見える社会的影響はなかったように見えるものの、日経225銘柄指定の大企業が闇勢力の資金源になっていたということで日本経済全体の信用低下をますます招いたことや、ライブドア事件を上回る巨額損失の隠蔽でありながら上場維持という玉虫色の裁定を下した東京証券取引所の遵法精神まで海外から疑われている結果となったことです。
著者は今回の事件を「官製粉飾決済」事件とまで呼んで野放図な政府を糾弾しています。

著者も執筆時には事件規模の大きさに驚き、その影響を怖れていたのですが、予想に反して世間はおろか利害が関係する厚生年金基金や保険会社といった機関投資家でさえも平穏を保っているように見えます。
2月の菊川剛前社長ら関係者7名の逮捕ですべて終わったとして体裁を繕っている政府、経済界の態度が私はとてつもなく不気味で恐ろしく感じます。

■ 善人は悪であるという実業界の常識

本書を勧善懲悪(かんぜんちょうあく)のカタルシスを味わうだけで良いのかという読み方もあります。著者の山口氏もそのような一方的な世論形成に荷担してしまうのではと躊躇しているように思います。
日本を代表する株式指標、日経225に採用されているオリンパスには取材に訪れたことがあるでしょう。社長以下役員とも面識がある可能性は高いのです。またはテレビ番組のようにアメリカ市場を開拓した医療分野やデジタルカメラでの躍進の原動として菊川以下役員を持ち上げていた過去もあるかもしれません。(ニコニコ動画上にウッドフォード前社長と田原総一朗との公開インタビューで山口氏は以前に菊川と面談していることを明かしている。そして当時は親分肌で記者の面倒見がよいという印象があったと語っている)
今回のオリンパス事件は過去の資産運用で1100億円もの損失を出したことが原因にあります。菊川自身も子飼いの役員達と同じように、前社長の岸本正壽(きしもとまさとし)に忠誠を誓い、役員の道を歩いてきたのでしょう。
野村證券を通した資産運用を行ってきたのは菊川の1,2世代前の経営陣です。勇退した前経営陣を守るために嘘をつき重ねて来たという実状があると思います。
すなわち立場を譲る代りに損失処理という重みも担わされているのが、菊川剛ら役員であると言えます。
菊川剛や副社長の森久志らは果たすべき義理を理解しているからこそ野村OBらの金融詐欺師と共に暗黒面へ堕ちていったのです。(チームFACTA著「オリンパス症候群」では投資家を欺いても良心が痛まないのは「ウチ」という概念が日本企業に根強いからだと喝破しています。)
清濁併せ持つ者しか経営トップに慣れないことは経済記事畑を歩んできた著者は十二分にわかっていることです。悪い奴ほど有能、これがビジネス界のコンセンサスです。それが故にジャーナリストの立場で悩む姿が本書から浮かんできます。

正義感だけで取材を進めるのでしたら情報源さえあれば誰でもできるかもしれません。しかし上場企業経営者を取材し、企業組織による圧力や工作を知っているからこそ、文章で糧を得ている著者の用心深さは見習わなければなりません。

これからは本書を別の視点、すなわちプロのジャーナリストとして商業文章で生計を立てるための教科書として読み解いてみたいと思います。大事なジャーナリストの資質が彼の文章から読み取れるはずです。以下に気づいた事項を列挙します。

■ ジャーナリストに味方はいない(IR担当役員とグルの証券会社)

東証のブースを職場とする著者はオリンパス記事を掲載したファクタ8月号が発売されても下落局面でオリンパスを買い推奨するアナリストがいることを知ります。過去に企業買収に懐疑を抱いていたアナリストでさえ買い推奨をしていることに著者は驚きます。
アナリストと言っても、そもそも証券会社にとっては公募増資や社債発行の主幹事やシンジケートというおいしい役割があるために正しい投資判断という目的で用意された職種ではなく、証券市場を揺さぶるような事態においてもアナリストの判断は単なる営業ツールに堕している面があると指摘しています。財務担当と証券会社アナリストが連れだって内外の大口投資家を巡ることもあるのだそうです。

このようなお手盛りな証券業界は驚くに値しなくてもマーケットを監視する東京証券取引所の広報担当の返答は驚くべきものです。

(78ページ抜粋 転載はじめ)
後日、東証から得た公式なコメントは「開示基準を厳しくすると、ニュースリリースが多くなり過ぎてしまい、投資家は情報の取捨選択が難しくなってしまうため仕方がない」との内容だった。非公式には「こうした問題は一義的にオリンパスと、これに適正意見を与えている監査法人の問題と考えている」という内容だった。
(転載終り)

つまり上場企業の不正経理を監視し市場の信頼を維持するべき東京証券取引所はその役を為していないのです。証券アナリストでもある著者にとって証券取引所は職場であり、その職場での事なかれ主義な回答にたいする落胆ぶりは想像に難くありません。

証券会社のアナリストは真相の追求よりも株式の商いだけに注目するのは当然として、東証でさえ関心を寄せない状況に、孤軍奮闘する著者は追い詰められていきます。このまま事態が動かないと暴露記事を書いたジャーナリストとしてオリンパスから反撃を受けて徹底的に干されることになるからです。テレビ出演もやがて無くなってしまうでしょう。
(※山口義正氏は本書発売の4月に株式マーケット番組キャスターを降板させられています。)
オリンパスはファクタ8月号が発売された翌月には新聞各紙への広告の出稿を大幅に増やしています。全面広告から経済誌のウェブにまで広告を載せてメディアへの懐柔を謀っています。
テレビ番組では戦後の胃カメラ開発を題材としたNHKプロジェクトXのぱくりドラマ「光る壁画」(原作は吉川昭の有名小説)まで単独スポンサーで放映するといった手際の良さまで披露しています。オリンパスの宣伝部長という経歴がある菊川らしいメディア懐柔策と言えるでしょう。日経新聞との癒着は根深く、逮捕の2ヶ月前に行われた日経主催の世界経営者会議では菊川剛を講師として招集しています。


■ 不正企業を庇う経団連

公益通報者保護制度という法律が制定されていますが、この法律は経団連が密告社会を助成するという理由だけで反対し骨抜きにされています。経営トップの犯罪行為への抑止力になっていないことを著者は知ります。庇護対象は「労働者」であって退職者には適用されないなど全く摘要しにくい法制度であることを指摘しています。
こうしている間にも内部通報者の深町(仮名)には窃盗や業務上横領、守秘義務違反といった罪状で起訴される可能性があるのです。

最近でも読売巨人軍球団社長(清武 英利きよたけ ひでとし)がコンプライアンス違反として渡辺恒雄の人事介入や獲得予定選手への裏金を暴露したことで解雇されましたが、読売新聞社は清武氏を業務上横領、守秘義務違反、窃盗で起訴しています。その公判がまもなく行われます。
このように暴露する側は弱い立場であり、丸裸の状態で闘わなくてはなりません。朝日新聞が巨人軍の裏金をつついた程度で、その他のメディアはだんまりです。

■マスメディアの役割を放棄している大手新聞

著者が投稿したFACTAの記事はマイケルウッドフォード氏の解任騒動でFT紙や英国内で大々的に取り上げられます。そのような状況では大手新聞社も重い腰をあげるようになり、記者も著者に連絡を入れるようになります。
「情報交換」という要件ですが、交換する情報など先方から一介のフリーに寄越すこともなく、欲しい情報は「内部告発者」その者を教えろという態度に憤慨して、以降は接触してくる新聞記者とは会わなくなります。記者クラブのサラリーマン記者にとってフリーランスは手足程度にしか思っていないのでしょう。
しかも取材行為もジャーナリズム精神に基づいた行動ではなく、企業サイドへ売るための情報を求める姿に元新聞記者でもある著者はマスコミにも幻滅しています。オリンパス社の記者会見では明らかに菊川擁護と受け取れるような質問をする記者がいることが証左であると指摘しています。

■ジャーナリストはサムライの気概を持つ

オリンパスの会計処理の最大のキーワードは「のれん代」と呼ばれる買収企業の対価に上乗せされるブランド料です。アナリストの経歴からこれほど不透明で恣意的な項目はないと感じていたのでしょう。並の投資家であれば看過してしまう項目を突破口に、徐々に裏側に潜む経営陣の暗部をさらけ出していきます。
証券会社の調査担当や新聞社の経済記者など分析を稼業とする人々は多々いるにも関わらず、懐疑を示してもオリンパス社の計上する「のれん代」に言及した専門家はおりません。

ジャーナリストの最初の壁は商業誌の限界です。商業誌には広告という収入、証券会社には主幹事という美味しい役割があるために顧客のためなら多少なら目をつぶるためです。
またオリンパスの被災工場の取材記事を組合の労使協定でボツにされたりしました。このように「上の都合」が降りかかってくるのがジャーナリストという職業の辛いところです。

さらにフリージャーナリストと雇われ記者の大きな違いは明日も同じ日ではないことです。明日には東証アローズから市場解説を生中継でするキャスターという職もくびとなるかもしれない。
しかしジャーナリストとして大きなパンドラの箱であることがわかるにつれて引き返せない道であることを彼は文中に言外で吐露しているのです。

山口氏のジャーナリスト観とは葉隠の「武士道と云うは死ぬことと見付けたり」であると自覚しているのでしょう。しかし情報提供者の深町(仮名)には同じ辛い境遇を味わせたくないという板挟みに著者は苦しんでいます。

■情報提供者は徹底的に隠せ

冒頭から登場するオリンパス社員で情報提供者の深町(仮名)と著者(山口)の関係はカメラ同好の士であるだけではなく、文中に何度も登場させることで著者の心情の代弁者でもあるように見えます。そのために本書はノンフェクションでありながらも、主人公(山口)を中心とした経済小説を読むように理解しやすい文章です。

冒頭で断っているように深町(仮名)を特定されないように注意深く書かれています。そのため年齢や所属どころか性別でさえわかりません。
当初は居酒屋で気楽に会い撮影旅行をする同年代の友達であるような記述です(道中にカーステレオでHigh-Lowsをかけて盛り上がっている等)が、一方で自社の経営問題に強く嫌疑を抱いていることがわかります。また流出した取締役会の核心に迫る書類を一瞥して憤慨するなど、どうも年代的には上、事業部長や部長それも財務方面に近い立場であるように思えます。社員の代弁として問題が大きく報道されるにつれて立場や家族を抱えている心配の描写など心理描写が記述されています。メールでは著者を「キミ」と呼びかけています。

このように文中からは一貫した人物像は掴みきれません。なぜなら本文の流れに沿った「出来すぎた脇役像」だからです。

個人のように本文では扱っていますが、実際の内通者は複数かもしれないし冒頭導入部分の旅行相手は恋人なのかもしれません。著者が注意深く徹底して隠す深町(仮名)にも注目すると本書はどれだけ著者が情報源の秘匿に注意を払っているかがうかがい知れるでしょう。おそらく情報源を隠すために雑多な状況を挿入して攪乱させているのです。

■情報流出者は執拗に追いかけられることを肝に銘じる

月刊FACTAでオリンパスの巨額損失隠しが発表されて山口にも取材が殺到します。文中では「釣り針」と呼んでいる罠について説明があります。これは取材対象側が逆に内部情報を探す目的で流すガセや配布文章で判子の位置や文言を少しずつ変えて流す方法です。
また「たれこみ」として匿名で接触を試みるなどの至る所に釣り針が仕掛けられています。

情報源を知られることは全ての終りであるため、接触相手、たれ込みすべてを疑わなければなりません。情報交換を求める新聞記者でさえも企業側に立つものがいるようです。

■企業発表を額面通り受け取らない

なでしこジャパンによるワールドカップサッカー優勝の話題でもちきりの頃、オリンパス社は外人社長の登用でメディアは驚きと好意に満ちたニュースを流しています。まだヒラ取締役でもない英国法人子会社の社長が本社25人の役員を飛び越して社長就任というニュースに著者は疑問に感じています。その引っかかりと深町(仮名)からの内部情報が結びついたことで背後の悪事へと繋がっていきます。
きれい事の内容から腐臭を嗅ぎ取れるかが能力であることがわかります。

■ 日本のマスメディアは信用成らないことを繰り返し自覚する

反撃を警戒しつつ、オリンパスの巨額損失隠しという最大のスクープをどこで発表するかで著者は逡巡します。
広告を出稿していない出版社はないか、影響力や読者層、または企業圧力に負けない体力など考え抜くと、日本にはスクープを発表できる媒体はあまりないのです。
週刊東洋経済や朝日新聞のアエラへ掲載を打診したこともしたそうですが、何も返答はなかったようです。「山口義正(やまぐちよしまさ)」は無名のフリーライターではありません。過去にもエコノミストといった経済雑誌、日経新聞で署名記事を連載しているのです。ところがその著者の企画提案には全く返答も連絡もよこしていないのです。このようなマスメディアの冷淡さに著者と深町(仮名)は失望していきます。

■監督官庁はあてにならないと自覚すること(東証もその一味)

東京証券取引所の公式回答は前述しました。
公益通報者保護制度という法律もザルです。
監督官庁、私にはわかりませんが、この場合は検察庁特捜部、財務省、証券管理委員会あたりでしょうか。どうにせよ、今回の事件は著者には幸運にも海外での報道が加熱してくれたおかげで特捜や警視庁捜査二課、証券取引委員会が動いてくれたのであると思います。
消防車を呼ぶにはたき火程度ではなく大火事である必要があります。独力で記事を燃え上がらせた著者の力量が推し量れます。

■プロライターは自分のスタイルを持つ

雑誌FACTAの名物編集長、阿部重夫氏の文体も本書では紹介しています。手直しをうけた原稿には強烈な言葉のスパイスがちりばめられており、読者はえげつない言葉とそのリズムに酔いしれるのです。「笑わせちゃいけない」「悪いジョークだろう」「トドメはこれからだ」と挑発する文言は阿部節と業界ではささやかれているようです。
著者もオリンパスのCMコピーをもじったりして阿部節に近づけようとしていますが、同じモノ書きとして格の違いを思い知らされている文面は、そのまま学問道場の執筆者と副島隆彦先生との関係のように思えます。(副島隆彦の場合は「ソエジー節」として2ちゃんねるやアマゾンの書評欄だけですが)

私のような読者は熱さを感じる文章を望んでいます。山口氏の次の著書ではなんらかの節がついているか、意地悪くも楽しみになりました。

■ジャーナリストの領分で悩むこともある

ウッドフォード氏はオリンパス英国子会社を成長させ、雇用を増やした功績で英国ではナイトの称号を与えられた名士です。著者は騎士道を重んじるウッドフォード氏へ一方的に肩入れすることは、時々ジャーナリストの本分から外れているのではと自問しています。
ウッドフォードと海外投資銀行との接触を密にすると無用な「外資脅威論」を刺激するかも知れないと憂慮しています。このように、こちらに義があるからとはいえ、過剰な肩入れはジャーナリストという立場上できないことを述べています。

■ ジャーナリストの教科書として読むべし

本文中には昨年3月26日に雑誌のルポのために震災直後の福島を巡り工場の被災状況を取材している記述があります。なんと同月同日には副島隆彦先生と我々弟子は第一原発へ突撃撮影を敢行して、奇遇なことに著者と我々はほとんど同時に小名浜港で打ち上げられた漁船群を眺めていたのです。

副島先生も雑誌社に記者の同行を打診したところ様子見を決め込むところばかりで、結局同行取材する社はなく三日間にわたる学問道場の単独行となったわけです。著者も雑誌記者の名目で取材を続けていますが、正社員との労使合意で危険地帯への取材は拒絶されてしまい、とばっちりで非正規社員である著者の記事は核心の危険地帯での取材はボツとなってしまったのです。

最後に、本書は単なる「ワンマンであった菊川剛前社長がオリンパスを私物化して巨額な損失を野村證券OBらと共謀して飛ばした経済事件の顛末」として注目され、やがて忘れ去られていってしまうでしょう。しかしフリージャーナリスト一人による孤独な戦いの記録でもあり、ジャーナリストという職業の手引き書としては末永く読み継がれることを望まずにはいられません。(了)






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