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[159]子宮頸癌ワクチンで歩行障害 1年3カ月にわたり通学できない状況
投稿者:かず子
投稿日:2013-03-11 14:53:19

さきおとついのネットニューズで見つけました。子宮頸癌ワクチンは、延べ663万5千人に接種されており、うち956人に副作用がでているそうです。

症状は、接種した左腕がしびれ、腫れて痛み、脚や背中にも広がる。歩行障害で1年三ヶ月通学できず、通学できるようになってからも割り算ができない、など。


(はりつけ始め)

子宮頸がんワクチン重い副反応 中学生、長期通学不能に  朝日新聞デジタル 3月8日(金)9時28分配信

 【斎藤智子】子宮頸(けい)がんワクチン「サーバリックス」を接種した東京都杉並区の女子中学生(14)が、歩行障害などの重い症状が出て、1年3カ月にわたり通学できない状況だったことが、7日の区議会で明らかになった。無料接種を行った区は「接種の副反応」と認め、補償する方針だ。補償額は未定。

 サーバリックスは3回の接種が必要。母親によると、女子中学生は12歳だった2011年10月に区内の医療機関で2回目の接種をした。その直後、接種した左腕がしびれ、腫れて痛む症状が出た。症状は脚や背中にも広がり入院。今年1月には通学できる状態になったが、割り算ができないなどの症状が残っているという。

 接種した区内の医療機関は「サーバリックスの副反応」と診断し保健所に報告した。厚生労働省によると、昨年8月末の時点で、全国で接種した延べ663万5千人のうち956人に副反応が起きているという。失神が多いが「四肢の運動能力低下」「歩行不能」などで未回復の例もあり、副反応の発生率はインフルエンザワクチンの10倍程度という。

朝日新聞社

(はりつけ終わり)



[158]日本の医療問題は経済問題である
投稿者:もう
投稿日:2013-03-08 18:43:10

157の日本の状況を説明するような最近のニュースについて、若干の感想、解説を付けて貼付けます。

(ニュース1転載はじめ)

救急搬送36回断られ、3時間後に病院へ…死亡
読売新聞 3月6日(水) 配信

 埼玉県久喜市の一人暮らしの男性(75)が今年1月、「呼吸が苦しい」と119番したが、25病院から計36回にわたって受け入れを断られているうちに容体が悪化し、約3時間後にたどり着いた病院で死亡したことが市などへの取材で分かった。
 市や久喜地区消防組合消防本部によると、男性は1月6日午後11時25分頃、119番した。駆け付けた救急隊員は県東部や南部、茨城県の病院に受け入れを要請したが、「専門医がおらず処置が難しい」「ベッドが満床」などの理由で断られ続けた。3回にわたって断られた病院も2か所あった。
 当初、男性は意識があり会話ができたが、7日午前0時50分頃に意識がなくなった。救急隊員が心臓マッサージをしながら搬送先を探し、7日午前2時15分頃、いったん断った茨城県内の病院が受け入れたが、死亡が確認された。
(転載終わり)

もうです。詳しい病態は解りませんが、何らかの心不全状態が出現し、結果的に不幸な転帰となったことは間違いありません。早く医療機関に受け入れられていれば救命し得たかどうかは解りません。問題は救急車で搬送されながら効果的な医療を受ける機会が得られなかった事にあります。私自身救急病院に勤務しますので病院の事情で救急車を断らざるを得ない事態には遭遇します。心停止で運ばれた患者対応中にもう一人重症の患者を受け入れてほしいと言われてもそれは無理です。集中治療室が満床であれば、HCU(High Care Unit)のない病院で生死に関わる重症患者をそれ以上受け入れることはできないでしょう。だから受け入れを拒否した病院を倫理面で責める事は事態の解決には一切ならないでしょう。
対応する医療者の問題としては、救急対応を夜中行っても、普通医師は翌日も通常の勤務があります。外来や手術も行わねばなりません。海外では普通である「救急当直をしたら翌日は休み」「救急対応をするだけで一生医師として生活してゆける救急科の設置」を怠ってきたのは厚労省の怠慢と言えます。また90%以上満床でないと病院が赤字になるような診療報酬体系を設定した事も原因の一つです。医療費の増大を診療報酬の引き下げで対応してきたことの「付け」が出てきているのです。救急当直も日常診療も行い、しかもより多くの収益を上げるよう求められる病院勤務医にとって、唯一できるサボタージュは勤務医を辞めて開業する事です。結果として救急対応できる医療機関も対応する医師も減ってきているのです。

(ニュース2転載はじめ)

厚労省、医師の勤務環境改善に向け専門組織
m3.com編集部 3月5日(火) 配信
 厚生労働省は4月、医師、看護師、薬剤師など医療従事者の勤務環境を改善するための専門組織「医療勤務環境改善推進室(仮称)」を設置する。3月4日開催の全国医政関係主管課長会議で、医政局総務課長の吉岡てつを氏が明らかにした。医療従事者の勤務環境改善に取り組む医療機関に対して、人材の確保や労働環境の改善にかかわる助言、先進事例の情報提供などを行う組織で、厚労省の医療と労働の組織枠を超えて「省を挙げて取り組みを進めていく」(吉岡氏)としている。
 新たな専門組織は総務課に設置する。総務課の医療安全推進室の職員を中心に、医政局看護課や労働基準局労働条件政策課などの職員が併任する方向で室長や人員数を調整している。室が推進する事業の予算は付けず、厚労省の来年度予算案で要求している基金や補助金を活用して、各都道府県による地域病院の雇用改善につながる施策を支援する。具体的には、失業者雇用を条件に事業内容を企画できる基金「重点分野雇用創造事業」を活用して地域の病院の雇用改善事業を企画したり、「医療提供体制推進事業費補助金」を用いてアドバイザー派遣などの経費や相談窓口経費について定額補助することなどを想定している。(以下略)
(転載おわり)

もうです。厚労省も勤務医の疲弊が医療問題の原因の一つであることは理解しています。お役所仕事的な対応ではありますが、問題意識を持って対応しようとしている事は事実ですし、評価すべきとは思います。問題は現実に反映されるかどうかです。それはやはり経済問題が行く手を阻むからです

(ニュース3転載はじめ)

医学部新設 「東北に特例で」 自民議連が決議
毎日新聞社 2月28日(木) 配信

医学部新設:「東北に特例で」 自民議連が決議
 国内で30年以上も新設されていない大学の医学部について、自民党の「東北地方に医学部の新設を推進する議員連盟」(大島理森会長)は27日、政府に新設を求める決議を採択した。
 来月中にも同党の文部科学、厚生労働の両部会に諮り、党方針への格上げを目指すという。
 決議では、新設を認めていない文科省告示について、東日本大震災で被災した東北では特例として1校新設できるよう改正を求めている。
 文科、厚労省は既存学部の増員で対応する方針で、日本医師会や東北大、福島県立医大、岩手医大は「医師を新設学部の教員に振り替える必要が生じ、医師不足が加速する」と両省に慎重な対応を要望している。【井崎憲】
(転載終わり)

もうです。全国の医学部定員を増加させた事で、ここ数年で日本は定員100名の医学部を13校作ったに等しい医師増加政策をしています。その上で医学部を東北に一つ作ることにどれだけの意義があるのかは推して知るべしと思われます。福島県立医大の卒業生の多くが地元福島を離れています。同大学病院の医師もかなりの数辞職していると聞きます。新しい大学を作っても同じです。どうしたら今働いてくれている医師達が地元に残ってくれるのかを考えるのが真の解決策です。

(ニュース4転載はじめ)

[医療保険] 26年度改定では、医療費全体のマイナス改定を目指す  健保連
厚生政策情報センター 3月4日(月) 配信
平成25年度 健康保険組合連合会 事業計画【概要】(2/15)《健康保険組合連合会》
 健康保険組合連合会は2月15日に、平成25年度の事業計画を発表した。
 経済環境が確実な好転状況にない中で、高齢化の進展等による医療費増加が続いている。こうした状況を受け、主に大企業の従業員が加入する健康保険組合の 財政状況も逼迫が長期化している。たとえば、平成20~24年度の5年間の累積赤字は健保組合全体で2兆1000億円を超えており、保険料率を引上げる組合は増加の一途をたどっている。
 こうした厳しい財政状況を打開するために、健保連は25年度事業運営の基本方針として、次の6本の柱を打立てている。
(1)高齢者医療制度に対する公費投入拡大の早期実現
(2)国庫補助削減を目的とした負担転嫁策(たとえば、高齢者支援金への総報酬割導入)に断固反対
(3)医療費適正化の推進と組合方式の維持・発展
(4)健保組合に対する適切かつ十分な財政支援措置の実施
(5)社会保障と税の一体改革に対する的確な対応
(6)保険者機能強化のための支援と連帯感の強化
 この基本方針に則って、最重点事業項目として掲げるのは、(5)の「一体改革への対応」と(6)の「保険者機能強化」の2点。
 (5)の一体改革への対応としては、関係団体への要請を続けていくことや、26年度診療報酬改定で消費税対応のプラス改定が行われることから、「薬価引下げ分を国民に還元し、診療報酬本体は賃金・物価の動向に合わせて改定するとの基本的考え方にたって、医療費全体でのマイナス改定を目指す」ことを強調している。(以下略)
(転載おわり)

もうです。医療費を払う健保組合としては、財政逼迫のおり、背に腹は替えられない。組合は「次の診療報酬を下げる」という基本方針を出しています。その分国家予算が増やせるかといって国の財政も状態は同じ。社会保障費を増やす事は増税以外ないのですが、アベノミクスの国土強靭化計画に増税分が使われる事は国民の選択ですから仕方ありません。157で指摘したようにTPP参入に関係なく「混合診療導入による保健医療の制限」をかけてゆく以外選択肢がない状態なのです。

(ニュース5転載はじめ)

メタボ市販薬に物言い…病気発見遅れると医師会
読売新聞 3月6日(水) 配信

 メタボ対策の薬もドラッグストアで買えるように--。そんな厚生労働省の方針が揺れている。
 医療用医薬品から切り替えた「スイッチ薬」を活用し、メタボ予備軍を救い、医療費も抑制するという一石二鳥の作戦だったが、昨年末に承認された第1号は、医師会の反発で医師の診察なしには買えない異例の取り扱いに。今後の承認についてのルール作りも進んでおらず、生活習慣病薬の取り扱いは宙に浮いた形となっている。
 同省が昨年末、生活習慣病薬で初めてスイッチ薬として承認したのは、持田製薬の「エパデール」で、4月中旬から発売予定。イワシに含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)を精製した薬で、高脂血症や動脈硬化に効果があり、医療用医薬品としては昨年3月までの1年間で381億円を売り上げた。
 スイッチ薬は、花粉症や頭痛・生理痛など比較的軽い病気に対応する薬が多かったが、厚労省の専門家検討会は2002年、生活習慣病薬にも拡大する方針を決定。よく効く薬を手軽に使えるようになれば、予備軍も含め国内に1400万人いるとされるメタボの人の健康管理に役立ち、医療費の抑制にもつながると考えたからだ。
 ところが、承認は難航した。エパデールの場合、10年、11年の同省薬事・食品衛生審議会(薬食審)で議論されたが、承認は見送られてきた。日本医師会などが「薬を飲んでいる安心感から病院に行かなくなり、病気の発見が遅れる」と反対したためだ。
 今回、初めて認められたものの、異例の「条件」が付いた。通常のスイッチ薬は医師の診察なしで購入できるが、エパデールを買う際は、「医療機関を受診した方に限られます」と記されたチェックシートに、「診察で通院治療は不要と告げられた」「診断を受けた病院名」「診断日」などを記入させるというものだ。
(転載おわり)

もうです。これは「予防医療を保険診療から切り離そうとする厚労省の試みが医師会の強い反対で頓挫した」と言い換える事ができるニュースです。開業医達をいかに急性期疾患の現場に戻すか、病院で行っている医療を肩代わりしてもらうか(在宅医療等)という問題に行き着くのではないかと思います。都市部では開業医は既に飽和状態にあります(医師不足ではない)。開業するよりも救急医療に携わっていた方が良い、という状態になれば1番目のニュースに示されたような事態はなくなると思います。



[157]TPP参入後の日本の医療の予想
投稿者:「もう」
投稿日:2013-03-08 18:10:42

既に既定路線となっていると思われるTPP参加ですが、2013年2月22日の安倍オバマ首脳会談における日米共同声明の第三パラグラフにおいて「自動車部門や保険部門」と具体的分野を挙げて、「TPPの高い水準を満たすことについて作業を完了すること」という明示がなされたことから、その具体的な内容としては日本の医療において今後混合診療を促進させて、その自費部分にかかる医療保険を米国の保険会社に関与させてゆく方向になると推測されます。

日本では国民皆保険制度の崩壊を危惧する論調がありますが、私はいくらアメリカでも完全に日本の社会制度を頭ごなしに変更させる事まではしないと思います。そのような事で反感を買うよりは「お金が儲かれば良い」という方向に行く事の方が合理的です。アメリカにもメディケアやメディケイドなどの公的保険があり、試行錯誤ながら機能しているのですから、そういった各国独自の制度を強制的に変えるような事はしないはずです(間接的に米国が儲かるように変えざるを得ないような事はするでしょうが)。

日本の医療保険制度はもう現実的には費用面で維持できない状況になりつつある事は厚労省の官僚ならずとも各医療者や保険を担当している人達(保険者)は理解しています。高齢者の介護費用を切り離したり、金のかかる終末期医療を在宅にシフトしたりする方策も費用軽減には限度があります(逆に増加しつつある)。また、医療技術の進歩は薬剤や医療機材のコスト上昇に跳ね返り、急性期疾患の発生を予防するはずの予防医療がまた総薬剤コストの上昇を招くといった悪循環に陥っていることも否めません。

かといって日本人の長寿と健康を支えてきた優れた健康保険制度を維持する事は日本国民全て反対する人はいないと思います。結果として、制度を維持しつつ費用増加を抑える方策は1)総コストが上がる分、保険点数を下げて帳尻を合わせる、2)保険適応とする医療に制限を設ける、の二つしかありません。混合診療を認めない方針から今までは1)の方策を取り続けていたのですが、病院の9割以上が赤字となり、厳しい医療やきつい介護を行う人材がいなくなって医療そのものが崩壊の危機に見舞われる状況になってすでに限界が示されています。だから必然的に次は2)の方策を取らざるを得ない状況になっていると言えます。これは今回のTPP問題の有無に関わらずなってきた状況であり、あながち米国の責任とはいえない問題です。

ではどのような形で混合診療が入ってくるかを考えてみます。
1) 急性期疾患の場合
・同じ病態で複数の治療方法がある場合、最も安価なものを保険診療で保証して、高度先進医療などに相当する差額分を自費とする(今でもその形はあるがそれをもっと拡大する)。

2) 慢性疾患・予防医療の場合
・同系統の薬剤は、後発品などの最も安価なものを保険診療で保証して、新薬や効果の改善が計られた薬品の差額は自費とする。
・複数の予防医療を受ける場合は、優先順位を付けて優先度の低いものは自費とする。

この場合、保険診療の範囲で医療を受けても自費分を加えても結果が同じでは、誰も自費分をまかなう任意医療保険には入らないでしょうから、任意保険に入ってその分をある程度プラスしたほうが医学的にも「少し」良い結果が得られる、設定になると予想されます。この「少し」のさじ加減が大事で、あからさまに差が出てしまうと「金持ち優先の医療」とか「貧乏人は死ねと言うのか」といった批判が出てしまいます。各人は車の保険と同様に、決められた強制保険と補償内容が異なる任意保険(自費分3割補償、5割補償とか。がんは全額とか)を懐具合を気にしながら入るようになるでしょう。任意保険は収益が上がらないといけないのですから、何れにしても国民の医療費負担は増える方向になります。

医療者側は患者さんの保険の内容を見ながら、治療の選択枝を提示することになりますし、急性期疾患を扱う病院は任意性の高い治療法ができる病院かどうか、医師は高度な治療ができるかどうかで任意保険からの収益が異なることになるので米国的に病院の差別化、能力に応じた医師給与の差が出てくることになるでしょう。

このような改革は普通の医療改革として行うことは抵抗が強くてまず不可能です。TPP参入の結果外圧としてやらざるを得ないので、という状況になれば2−3年以内にも始まると思われます。



[156]予防医療は完全ではない
投稿者:「もう」
投稿日:2013-03-08 18:03:02

先日大学教授に昇任した私の同級生の講演を聞く機会がありました。循環器疾患の権威として活躍しているのですが、心筋梗塞の一次予防(初めて梗塞を起こす人をいかに予防するか)について興味深い話題であったので紹介します。

新しい虚血性心疾患の一次予防のガイドラインにおける高脂血症の扱いについて、高LDL(悪玉)コレステロール、低HDL(善玉)コレステロール、高中性脂肪が心筋梗塞などの危険因子であり、この状態の患者さんの脂質異常をスタチン製剤などで改善することが、心筋梗塞の予防に重要であることは間違いないのですが、脂質異常症の患者が0になっても心筋梗塞患者が0になることはない。なぜなら心筋梗塞患者の6割以上はコレステロール正常だから、という理由。一度梗塞になった患者さんの再梗塞を予防する(二次予防)場合においても、脂質異常の改善は再梗塞の頻度は下げるけれども0にはしない、という問題があります。

脂質異常の人が梗塞を起こす確率は、正常の人よりも高いことは間違いないのですが、圧倒的多数を占める脂質異常のない心筋梗塞患者をいかに一次予防するかについて有効な手段が今の所示されていないことが予防医療を語る上で大きな問題です。大多数の正常な人達の中から、近い将来心筋梗塞になる人をいかに手間と金をかけずに有効に見つけ出すか、その検査は何かということが現在の最大の課題、ということでした。

心筋梗塞をおこすリスクは脂質異常だけではなく、高血圧や糖尿病、年齢など様々な因子が複合してあるのですが、これらが組合わさった高リスクの人達の発症をいかに抑えるかについては世界中で科学的データに基づく実証的研究が既になされていて、莫大な医療費が使われ、それなりに効果もあがっているのは事実なのですが、実数ではリスクが低いとされる正常者達が患者の半数以上を占めていることから、一次予防というのが未だ不完全な医療であることが露呈されるのです。つまり発症率はずっと少ないながら、莫大な数の正常者群から、いかに心筋梗塞を起こす人を事前に拾い上げて予防するかの方策が立たなければ、「これをしていれば安心です」と一般の人に説明することができない、莫大な医療費を使ってリスクの高い人の発症を一部抑えたところで、大多数の心筋梗塞患者はその予防医療とは関係なく発症してくるという現実が残ってしまうことになるのです。

私は医学生のような質問をして「そもそも心筋梗塞は動脈硬化がないと起こらないものか」という初歩的質問をしてしまったのですが、「動脈硬化」という言葉の定義も難しいということで、血管にできたプラックに何らかの機序で血栓が詰まって梗塞がおきるのだからプラックが僅かでもできている状態を動脈硬化と言ってしまえばそうなる、しかし一般的に動脈硬化指数などと言っているものはもっと大まかな病理解剖学的な組織の状態を反映しているので、その意味では検査にかからない正常な人が沢山いることになる、という説明。そういわれれば納得できます。

このような話は専門家の間ではわざわざ話題にしなくても分かっている事実なのでしょうが、門外漢の我々他科の医師にとっては新鮮な話題であって、あれだけ脂質異常の薬が氾濫して大変効果があると毎日聞かされていると、いずれは急性心筋梗塞の発症はなくなるのではないかと勘違いしてしまい、血管の治療や手術もいずれは必要なくなる医療かと勘違いしてしまうところでした。それは泌尿器科医にとって80歳代の早期前立腺癌は治療などしないで放置していてよい事が常識であっても、他科の医師には理解されていないのと同じ事かもしれません。まして医師でない一般の人達にとっては「どこまでが有効な医療か」を判断することはかなり難しいと思います。

自分にとって必要な医療は何かを決めてもらうのは信頼できる医師を見つけて頼る以外はないと思います。「今現在苦しい状態を治してほしい」という急性期医療については迷うことはないと思いますが、「予防医療を受けるかどうか」については、「自分はどう生きたいか」というポリシーを持っていないとその医療が自分にとって有用かどうかの判断がつきにくくなることは間違いないでしょう。



[155]得る物が少ない予防医療
投稿者:「もう」
投稿日:2013-03-08 17:46:27

みなさんこんにちは、「もう」でございます。子宮頸癌ワクチンについての情報ありがとうございます。参考として私が2010年に本ワクチンについて検討した文をブログ(rakitarou)から以下に転載します。
ーーーーーーーー
子宮頸癌の原因とされるヒトパピローマウイルスの一部が感染しないように数年間守ってくれるというワクチンがこの「子宮頸癌ワクチン」です。HPV(パピローマウイルス)16と18型の感染を防ぐことで、約半分の癌の原因ウイルス型とされるこの二つの型の感染を防ぐことで子宮頸癌の発生を防ぐ事が目的のようです。年3回接種で5万円の費用がかかるということで、各市町村は公費の補助を考えているようです。接種対象は小中学生の女児で性交渉前でまだウイルスに感染していないことが必要ということです。栃木県では小学6年生の希望者全員に公費で接種する自治体が出たというニュースもありました。

私が自分の子供(娘)にこれを受けさせたいか、と問われたら「否」と答えるでしょう。日本の子宮頸癌の死亡者が年間2,500人位、発生が7,000-8,000人位と言われていますから、ある年齢の女子(階級別人口表から計算して)60万人に全員接種して、子宮頸癌の発生を50%抑えたとすると恩恵を受けるのは発生者のうち4,000人、つまり投与者の0.7%に過ぎない事になります。残り99.3%の女性は無駄なワクチン接種を受けることになる上、ワクチン接種をしても0.7%は子宮頸癌を発症する運命にあります。接種に5万円かかるとして300億円かけて4,000人の癌の発症を抑えるというのはあまりに無駄が多くないでしょうか。数多ある癌の種類のうちのたった一種類の中の一人の癌患者発生予防に税金が750万円かかるということです。しかもワクチンというからには何らかの副作用が出る可能性もありますし、接種にあたってそれなりに人的医療資源もかかる訳です。私が厚労省の責任者ならば子宮ガンの検診をより充実させて二次的予防である早期発見早期治療の充実を目指します。

医療費が切迫している日本において本当に費用対効果の高い医療を正しく選択してゆくことが真に望まれていると思います。日本人は自分で考えて決定して行く知能はもっているはずです。



[153]「空腹」が人を健康にする?(下)
投稿者:5670
投稿日:2013-02-24 08:56:47

5,一日一食で変わった点

・肌荒れがなくなった。
・体臭が薄くなった。(ここまでは前回書きました。)
・空腹をあまり感じなくなり、日に三度の食事は多いと実感する。
買い物に行った時など、例えばマクドナルドで、ハンバーガーやポテトを無心に口に運ぶご婦人を見て、なんと無駄なことをしているのかと思います。
・食べ物の好みが変わる。
野菜が好きになるわけではありません。正直、私はネギや玉ねぎが好きではない(かと言って、身体には良いと思うのでほぼ毎日食べます)点は変わりません。肉を食べたくなくなり、油揚げが美味しく感じます。煮物、いため物、味噌汁、炊き込みご飯の具としてもいいなあ、と思います。酒の肴としてレンジで温めた揚げに、ポン酢をかけたものは最高です。
・便に行く回数が減る
日に三度の食事を摂っていると、日に一回か二回は大便をします。元来私が食物繊維を多く摂取する(野菜、押し麦、豆類、いも類)ためか、便秘には縁がありません。が、日に一回の食事だと、ガスばかりが出て、肝心の便が出ないことがしばしばです。多めに出る日、少ない日がバラつきます。この点はもどかしい思いです。マラソンランナーに向けて書かれた、浅井えり子著「ゆっくり走れば速くなる」にありましたが、“スポーツをする人は多く食べて、多く排泄するのが望ましい”そうです。一般の人にとっても、排泄はきちんとすべきものだと思います。ここがちょっとした課題でしょうか。


6,「長生きしたければ肉は食べるな」

かなり、南雲医師の著書と重なります。
・今の日本人はカロリーの摂りすぎ
・砂糖はダメ
・肉食は避ける
・穀類(玄米)を摂取する
・野菜は根から葉っぱまで食べる…などは共通

反する点は南雲医師「塩分は控える」に対し、若杉氏「もっと摂取してよい」など。しかし、ここであれこれ私が書くよりも、双方に目を通していただいた方がいいと思います。どちらも100%正しいということもないでしょう。矛盾も感じますが、参考にはなると思います。

若杉氏の本で、「おっ」と思ったのは
・甘いものを食べるなら和菓子がよい
・お酒を飲むなら日本酒がよい
という二点です。

洋菓子のアイスクリームやケーキなど、はっきり言って砂糖の塊だと思います。その点、小豆を多く使った和菓子は、繊維分を多く含んでいて身体に悪いとは言い切れない。気持ち悪い、とおっしゃる方もいらっしゃるでしょうけれど、私は酒を飲む前や飲んだ後、きんつばや羊羹(ようかん)、最中などを食べることがあります。酔いを早くさましてくれるからです。調べてみたら、確かに二日酔いに効く成分を含んでいます。
・山崎製パン・きんつば
・でん六・黒豆甘納豆
・フジッコ・お豆さんシリーズの黒豆、金時豆
などは、酒の味を変えてしまうので肴としては不適当ですが、飲む前、飲んだ後に自分の胃を守るためのものと割り切って食べてみてはいかがでしょうか。

寒い時期、たしかに焼酎のお湯割りはおいしいです。しかし、晩酌した後寝床に就くと、かえって冷えを感じたとかいう経験をなさっていませんか。私は日本酒が一番いいと思います。本醸造でなく純米酒。値段が高くなりますが、小山本家酒造や沢の鶴酒造からは安価に買える純米酒が出ています。これをお勧めします。


以上、全くの主観だけで書きました。細かく自分の体重や体脂肪を測ることなどもしていません。そういう点は「学問道場」への投稿としては不適当かも知れません。しかし、何か皆様のお役に立てたらいいかという気持ちで投稿させていただきました。



[152]「空腹」が人を健康にする?(中)
投稿者:5670
投稿日:2013-02-23 04:26:44

4,南雲医師の本のまとめ

某ブログから拝借しました。以下の内容です。

<一日一食のメリット>
①一日一食は究極の健康法。
②健康は「見た目」に表れる。
③お腹が「グーッ」と鳴ると、体内の細胞が活性化する。
④体の傷んだところが修復される。
⑤自分の適正体重になり、ウエストが締まる。
⑥皮膚年齢がどんどん若返る。外見の若さと美しさがバロメーター。
⑦オヤジ臭が消える。
⑧肉食中心は、脂肪が酸化、過酸化脂肪質になる。
⑨「一汁一菜」で体重が下がり、体調改善し、活性化する。
⑩空腹で「延命(長寿)遺伝子」サーチュイン遺伝子が細胞修復。
⑪空腹であればあるほど、生命力がアップし、若返る。
⑫寿命が延びる遺伝子。「飢餓のときしか発現しない遺伝子」
⑬飢えと寒さにおかれたときほど活性化する。
⑭人間は、飢えに強く、満腹に弱い。
⑮飢餓と寒さにさらされると脳細胞が増える。
⑯危機の状態におかれたときこそ、生命力は活性化する。
⑰不摂生を続けていると活性化せず、脳細胞も増えない。
⑱睡眠の「ゴールデンタイム」夜10時~午前2時に寝ていること。
⑲栄養は量ではなくて質である。一日一食でも栄養不足にならない。
⑳栄養素をバランスよく含んだ「完全栄養を摂る」「一物全体」
21、小魚丸ごと・穀物・野菜・果物を皮ごと食べる。

アメリカの政府が調査した「マクガバン・レポート」で、
「日本の伝統食が健康に良い」と結論。
①江戸時代の元禄期以前の日本食。
②穀物は、全粒で食べる(白米ではない)
③青魚の脂は優れている。EDA・DPA(動脈硬化改善)(皮の下のぬるぬる脂肪は優れている)
④牛・豚・恒温動物の脂肪は、血中でかたまり、血管が詰まる。
⑤白身魚より青魚のほうが運動量が多く良質タンパクで、抗酸化作用がある。

最も大切なのは3つ
①「空腹」・・・・・・生命力のサーチュン遺伝子が働く。
②「完全栄養」・・丸ごと食べる
③「睡眠」・・・・・・夜10時~午前2時に寝ていることで、睡眠中に若返りホルモンが分泌されるし、内臓脂肪を燃焼する。

その他
①無理やり水分を摂らない。
②朝起きて水を飲む必要はない。
③水分が一日2リットルといわれ、水分は食事から、半分の1リットルは摂れる。
④ガムを噛むことで、唾液を出し、リンパの流れ血流をよくする。
⑤唾液を出すことで口臭がなくなり、歯のぬめり、喉の渇きがいやされ、消化器を潤す。
⑥唾液を出すことで、腸が蠕動し便秘解消になる。
⑦水分2リットルは摂り過ぎで、トイレの回数が増え、
水分が尿として流れ カルシウムと塩分も抜ける。
⑧砂糖の摂り過ぎは寿命が縮む。
⑨砂糖には「糖毒性」があり、動脈硬化・脳卒中・心臓病を起こす。
⑩砂糖は血糖値を急激に上昇させ、体を傷つける。
⑪砂糖は膵臓の細胞を破壊する。網膜を痛め失明する。
⑫砂糖は腎臓を痛め、糖が尿中に出る。血管破壊し足が腐る。
⑬精製していない砂糖でも、ショ糖なので血糖値上げる。
⑭甘いものは、サトイモ、小麦、とうもろこし、米で補う。
⑮塩は、自然に存在する動植物に含まれている塩分だけで十分。
⑯塩分摂り過ぎは、腎臓に負担かかり血圧上がる。
⑰動脈硬化引き起こし、「健康にいい塩は無い」
⑱ミネラルは、海藻や魚介類から摂る。
⑲発酵食も塩分が多いので少ないものを食べる。
⑳カルシウムは、歩いて補う。関節を痛めないように毎日歩く

私が実践していない、そむいている点は、
・コーヒーを口にすること
・みかんの皮は食べないこと
です。コーヒーは眠気をさます効果があります。一日一杯は飲みます。レンコンも大根・ジャガイモも皮ごと食べるようになりました。リンゴは洗って拭いて皮ごと食べますが、みかんの皮には抵抗があります。また、甘いものは、甘納豆、もなか、きんつばなど、小豆をつかった和菓子については、満腹感を得るため、また酒の酔いをさますため、食べることがあります。

南雲医師に従って良かったと実感しているのは
・肌荒れがなくなった
・体臭が薄くなった という二点です。
風邪を引いて寝込むこともなくなりました。体調悪いなと思って早めに床につくと、翌朝にはほぼ解決しています。

ウエストはたしかに細くなりました。去年の冬につくったスラックスがだぶだぶで、ベルトで締めています。

※次回は間を置いて、若杉友子著「長生きしたければ肉は食べるな」について書いてみようと思います。お酒が辞められない方への提案もございます。

崎谷様;投稿時期が重なってしまい、恐縮です。



[151]「空腹」が人を健康にする?(前)
投稿者:5670
投稿日:2013-02-23 03:38:02

副島先生が、以前講演会で「肉体労働の人は別にして、もうあんまりご亭主に食べさせないようにした方がいい」とご婦人方に言っておられました。
現代日本人は過食なのか、今回このことについて述べてみたいと思います。

ちょうど1年前のこの時期、南雲由則(なぐもよしのり)著「『空腹』が人を健康にする」を読んで、書籍に書いてあることを極力実践してきました。新聞広告で「食べ過ぎは肌荒れにつながる」という項目に思い当たる節があったからです。
去年の今頃、私は日に10kmくらいジョギングしていました。食事は朝と昼はがっつり、夕飯は軽く、という内容でしたが、どんどん太りました。運動して空腹になり食べて、また運動して食べて…を繰り返しましたが、食べる量の方が勝っていたようです。鏡を見る度、確かに筋肉は付いていきます。運動にエネルギーが費やされ、仕事の方に頭が回りません。確かに夜こそよく眠れますが、しょっちゅう、食べることばかりを考えています。
このままでいいのかな、と思った時に、先述の南雲医師の本を読み、実践してみることにしました。


1,食事の減らしかた

南雲医師の「きつくなったらクッキーなどを少し口にする」にしたがって、ビスケットの類を朝食、昼食に食べ、ジュース、スープなども口にすることで空腹を癒しながら、少しずつ減らしていきました。腹が減るので、ランニングは辞めて、散歩と軽い筋力トレーニングです。
しかし、本当に一日一食で大丈夫なものか、半信半疑でした。やはり食べないと、当たり前ですが空腹になる。胃が痛んだり、身体に力が入らなかったりします。

ひと月くらい経過すると、空腹に慣れ、本当に一日一食で大丈夫になりました。ただ、絶対に一回ということではなく、肉体労働やきつめの運動(体力をつける以上に腰痛防止で)をする時は二回食べます。


2,困窮

実は、私事ですが、会社を辞め自営業になったのが2011年の10月です。
順風満帆とはいかず、蓄えがどんどん減っていきました。去年の5月からは、本当に一日一食にしないとやっていけないくらいになりました。
好きなアルコールを辞めました。電気代が惜しいので冷暖房は入れません。値段の高い玄米を辞めて、白米に押し麦を混ぜて炊飯します。ガス台節約のため、シャワーは水です。もったいないので肉は食べません。缶詰の魚が大好きなのですが、これも辞めました。人参、ジャガイモ、玉ねぎ、油揚げの炊き込みご飯、インスタントの味噌汁一杯、インスタントのラーメン、動物性のタンパク質は卵一個だけという毎日が続きました。それが去年の10月まで半年間続きました。

結果、へたすれば80kgを越えていた体重が70kgを切るくらいになりました。頬(ほほ)がこけ、鏡に映る自分の顔は、確かに若く見えます。肌荒れもなくなりました。あまりエネルギーを消費したくない、つまり腹が減るので運動はしなくなりました。しかしそれが仇(あだ)になって腰痛になったこともあります。体力が衰えたなとも感じました。

11月頃、ようやく仕事が落ち着き、資金繰りも何とかなりました。我慢していた反動から、かなり酒を飲みましたし、食事も二回、場合によっては三度摂るようになりました。が、やはり太ってしまいました。今月から、一日一食に戻しました。一度経験したことなので、空腹になれるまで二、三日しか掛かりませんでした。運動も激しいものはしませんが、散歩や軽い筋力トレーニングはします。


3,最近の主なメニュー

・炊き込みご飯(ごぼう、レンコン、人参、ジャガイモ、玉ねぎ、油揚げ、こんぶ、大根、コンニャクなど)。毎回具を決めているわけではありませんし、いつもここに書いたものを全部入れるわけでもありません。根菜が中心になっていると思っていただければいいです。白米:押し麦を2:1くらいにして混ぜています。

・味噌汁(ねぎ、ワカメ、豆腐か油揚げ)。ごく普通の味噌汁です。ごま油を差すこともあります。

・野菜炒め(キャベツ、白菜、ほうれん草など)。茹でて食べたり、電子レンジで温めてみたり、色々です。葉野菜が中心です。ネギを混ぜることもあります。

・日本酒と魚の缶詰。日本酒は純米酒。多くて四合。少なくて一合。魚の缶詰は、マグロのフレークを避け、イワシ、サバ、サンマなど骨ごと食べられるものを選んでいます。

・以上を夕方の一食で済ませていますが、それ以外の時間に野菜や果物のジュース、砂糖無しのコーヒー、炭酸飲料は少し飲みます。



[150]「原始人食」が病気を治す
投稿者:崎谷 博征
投稿日:2013-02-21 19:56:01

崎谷です。

慢性病が蔓延している原因を人類の進化から紐解きました。

『「原始人食」が病気を治す (ヒトの遺伝子に適合した物だけを食べよう)』
がマキノ出版から出されます。

http://www.amazon.co.jp/dp/483767190X/ref=cm_sw_r_fa_dp_vADjrb18W2F71

是非みなさまのご健康にお役立てください!



[149]チェルノブイリ膀胱炎は低線量放射線被曝による発癌のモデルとなるか(2)
投稿者:もう
投稿日:2012-12-10 17:41:09

みなさんこんにちは「もう」でございます。以前(132)の投稿でチェルノブイリ膀胱炎が低線量放射線被曝による発癌モデルになるかを文献的考察の形で投稿させていただきましたが、先日研究者の一人である日本バイオアッセイ研究センター長、福島昭治氏の講演を聴き、直接ディスカッションする機会がありましたので、その後の経過報告として続報を投稿させていただきます。

まず氏はチェルノブイリ膀胱炎を現在どう捉えているか、つまり低線量被曝から癌に至るモデルとして確立したものと考えるかについてですが、現在の段階では「長期低線量被曝の影響か?」とクエスチョンを付けざるを得ないと自ら話していました。その理由として、1)疫学的調査ではなく、病理組織学的報告である事、2)患者尿中から測定されたセシウム量からは、放射線医学総合研究所からのコメントにあるように、自然界にある放射性カリウムからのβ線放射よりも被曝線量が少ないという意見に反論できないこと、3)検査を行ったのが前立腺肥大症の手術を受けた患者であり、被験者に偏りがある事を上げていました。但し、チェルノブイリ原発事故の結果、何らかの放射能汚染によって体内被曝が起こり、このような組織学的変化が事実として起こったのであろうことは間違いないと確信しているという事でした。

講演後、私が前の投稿で疑問を呈した「チェルノブイリ膀胱炎が全癌状態であるならば、近年増加しているウクライナ地方の膀胱癌患者に腫瘍の近傍に同じ所見が多発しているのでは」という問題については、「膀胱癌患者の癌以外の部分にチェルノブイリ膀胱炎の所見は見られていない」と明確に答えていました。つまり「チェルノブイリ膀胱炎は癌に直線的に進む病変とは言いがたい」という結論になります。また膀胱癌が増えている最近、肥大症など他の患者さんから得られた膀胱粘膜に同膀胱炎所見は殆ど見られなくなっている、という短信がロマネンコ氏から来ているそうです。

福島氏にはもともと原発の賛否などの政治的主張をする目的はなく、チェルノブイリ事故後10年頃に増加していた膀胱粘膜の病変について病理学者であるウクライナのロマネンコ氏(女性)から相談され、十分な研究施設がないウクライナから氏を毎年研究のために福島氏が教授をしていた日本の大学に毎年数ヶ月間招いて一緒に研究をしたことからこの結果が得られたということであり、研究結果についての科学的ディスカッションには極めて率直に応じてくれました。「チェルノブイリ膀胱炎が組織学的所見として現在の膀胱癌増加に結びついていない」という結論など私が少々あっけに取られる位あっさりと話してくれました。

他の医師からの質問で、「今後日本の被災地域でチェルノブイリ膀胱炎が増加すると思われるか。」という問題については、氏は「明確な予測はできないが、そのような変化が出現しないかは今後10年くらい注意深く見てゆく必要がある。」という答えでした。しかし日本にも居住してウクライナとの社会環境の違いを良く理解しているロマネンコ氏の意見として「福島の事故後、日本は水や食料の放射能汚染の管理が当時のウクライナに比べて格段にしっかりしているから、ウクライナと同じレベルの体内被曝を一般の国民が受けることは考えられず、チェルノブイリ膀胱炎は起こらないのではないか。」という答えでした。現在ウクライナでは体内被曝は既に減少しており、チェルノブイリ膀胱炎はもう起こっていないという事とも符合することです。

ウクライナ地区で80年代に10万人あたりの膀胱癌罹患率が20人代だったものが2005年に50人代に増加したというのは他地域(日本は10人位、東ロシアのアルハンゲリスクで13人位)と比べて明らかに多いと言えます。ただ80年代の時点で日本などより倍の数値であったことは、もともと膀胱癌が多い地域であった可能性もあります。膀胱癌の発癌リスクに喫煙があることは明確ですが、では喫煙者の膀胱粘膜には前癌病変や炎症が出やすいか(上皮内癌など)というと必ずしもそうとは限りません。チェルノブイリ膀胱炎は、事故後に高濃度の体内被曝を受けた人(生物学的体内半減期はセシウムの場合3ヶ月くらいなので論文の調査の時には既に低濃度になっていたと思われる)が、セシウムなどを含む核汚染物質(測定していない物も沢山ある)が尿で濃縮され、膀胱粘膜に対する長期の酸化ストレス(分子生物学的検討から)となった結果起こった組織変化であって、直接発癌へのトリガーにはなっていないが、暴露後20年くらいして統計的に増加してくる癌患者と何らかの関係(発癌が増加した核汚染地域と罹患率が一致するなど)があるのではないかというのが現在の研究者らの見解と思われます。

私も現在明らかになっている科学的エビデンスからはこのような結論が妥当ではないかと思いました。






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