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理科系掲示板


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[220]原発が危ないなら管理して動かせば済む話
投稿者:相田英男
投稿日:2023-02-21 22:44:34

相田です。

引用文の著者については、説明の必要はあるまい。いつもの「古賀節」で、反原発をカマしているのだが、今回はつっ込ませてもらう。

まず古賀氏は、「安倍晋三元首相もできなかった「40年ルール」の撤廃」と書いている。ここに、最初の古賀氏の事実誤認がある。「安倍首相でもできなかった」のではない。安倍が重用した、経済産業省出身の周囲のブレーン達が、原発の再稼働を阻止したのだ。経済産業省の官僚達は、原発の再稼働をどうしても東電にやらせたくなくて、それによって、東電をさっさと潰して、電力利権を自分達に取り戻したいのだ。古賀氏も元経済産業省出身の官僚なら、その辺りの経産省の思惑は知っているだろう。知らないのならば、あなたは頭が悪すぎる、か、カンが悪すぎる。それだけだ。

さて古賀氏は、「原発では、「心臓部」にあたる原子炉圧力容器と、これを覆う格納容器は交換できない」と書いている。古賀氏の説明を逆に言えば、だな、圧力容器と格納容器以外の、ほぼ全ての原子炉の部材は交換が可能だ、ということだ。現に蒸気発生器(PWR)とか、シュラウド(BWR)とか、ポンプとか、その他の配管一式全て、などの原発の部品については、実際に現地サイトで新品に交換された実績がある。

確かに、圧力容器は大き過ぎて、交換はできないだろう。だけども、壊れるメカニズムを詳細に解析して、割れにつながる窪みや切り欠きの寸法を、実機で正確に測っている。割れの進展を加速させる中性子照射量は、実機にミニチュアの金属試験片を入れて、定期的に取り出して調査して、照射量のモニターを続けている。要するに、交換できる部品は全て新品に取り替えましょう。交換できない部品は、慎重に調査を継続しながら、運転を続けましょう、というスタンスなのだ。だから継続運転が可能と、規制委員会は判断したのだ。委員の一人を除いて、であるが。

ちなみに、共産党員の金属材料研究者で、井野博満(いのひろみつ)という方がおられる。井野先生は以前から、日本で使われる圧力容器の強度を計算する際の、数式が誤っている、と主張し続けている。本当の処は、材料強度屋でないとわからない。しかし、原子力規制委員会で認めている計算式は、アメリカの原子力規制委員会(NRC)が採用した数式が基本である。そのNRCの数式は、米国機械学会(ASME、アスメ)で長年にわたり議論されて決められた、強度計算式が元になっている筈だ。井野先生も、ASMEの技術者達が、膨大なテストデータを元に定めた強度計算式の、どこに問題があるのかを、はっきりと説明して頂けないか、と、かねがね私は思っている。

さらに古賀氏は「石渡氏は、地震や津波の審査を担当する委員である。彼ほど、日本という地域がいかに危ないのかを、知っている人はいない。だからこそ、老朽原発の運転期間延長に反対を貫いた。そうした専門家の知見を無視して多数決で押し切るなら、規制委の存在意義はない」とまで書いている。

ここにも、古賀氏の事実誤認がある。石渡先生は規制委員会では、地震や津波の審査を担当する委員である。が、石渡氏は岩石研究の専門家であって、地震や津波の研究の専門家ではない。地震や津波の専門家は、石渡先生の他にも大勢いる。ただその方々は規制委員ではない、というだけである。石渡先生が運転期間延長に反対を貫いた理由は、彼が地震の専門家だからではなくて、地団研のメンバーだからだ。科学的な判断に、政治的心情を持ち込む人物だからだ。

ちなみに古賀氏は、引用文の最後でプレートテクトニクスの話を持ち出して、日本の原発の危険性を述べている。トルコのプレートがどうのこうの、とか言って読者を煽っている。しかし私は問うが、古賀氏が専門家として、絶大な信頼を置いている石渡先生は、プレートテクトニクス理論を本当に信じているのだろうか?私には大いに疑問である。御自身が心の奥底で信用していない地震発生のメカニズムを使って、「原発は危ない」と言われたところで、全く説得力がないように思えるが。

プレートテクトニクスを本当に信じているのかどうか、規制委員の石渡先生には白黒はっきりさせて頂きたい。自分自身が信用を置いていない原理を使って、「原発が壊れます、危ないです」と主張されても、「ひとをバカにしとるんか?」という、怒りと情けなさしか、私には感じられない。「地向斜造山論でも地震は起きる」と言われるならば、それでもいい。是非そのように石渡氏には明言して頂きたい。

最後に古賀氏に問いたいが、自分をクビにした経済産業省から、実はパシリに使われているという自覚が、あなたには無いのか?情けないとは思わんか?これまで、安倍元総理を散々非難して、バカにしてきた古賀氏であるが、安倍総理がブレーンにしていた、宿敵である古巣の思惑に、あなたはマンマと乗せられているのではないのか?それとも、最初から古巣とグルでやってるのか?こちらも白黒はっきりさせて欲しいものである。絶対にやらんだろうけどさ。

「国民は、この危機的事態に声を上げなければならない」と、古賀氏は最後に煽る。「原発が動いている関西や九州よりも、関東は電気代が高いのを、なんとかしてくれ」という、関東民の危機的な声など、古賀氏にはどうでもいい訳だ。

(引用始め)

危ない原発ほど延命される愚策 
古賀茂明

危ない原発ばかりが延命されると言えば、そんな馬鹿な、と思う。だが、現にそういうとんでもない法律改正に向けて、岸田文雄首相が原子力規制委員会の山中伸介委員長と二人三脚で、暴走を始めた。安倍晋三元首相もできなかった「40年ルール」の撤廃を目指しているのだ。

 3.11の翌年2012年に原子炉等規制法が改正され、原発の運転期間は原則40年とし、1回に限り20年までの延長を認めた。最長でも60年で廃炉だ。これが「40年ルール」である。政府が現在検討中の法改正案では、まず、原発の運転期間に関する定めを規制委所管の法律から経済産業省所管の法律に移す。原発推進官庁であり福島第一原発の事故を起こした主犯格の同省に任せること自体が驚きだ。さらに、「40年ルール」の骨格を維持すると言いつつ、実際には、規制委による審査などで停止していた期間を除外し、その分を追加的に延長できるようにする。規制委の審査で20年稼働停止していれば、60年を超えて80年まで運転期間延長が認められる。驚愕の改正だ。

 現在、管理体制に不備があったり、活断層の存在が疑われるなどの理由で、規制委の審査を通らない原発がいくつもあるが、この改正により、そういう「危ない原発」ほど長い運転期間が認められることになる。どう考えてもおかしい。

 40年ルールの根底には、どんな設備でも経年劣化により故障や事故が増えるという「常識」がある。原発では、「心臓部」にあたる原子炉圧力容器とこれを覆う格納容器は交換できない。特に、圧力容器は核分裂で生じる強い放射線の中性子線にさらされ金属材料が劣化する。古くなれば危ないと考えるのは当然だ。

 マクロン仏大統領が原発建設を推進していると報じられるが、その理由は、同国の原発の約半数が老朽化による金属劣化や補修予定により稼働が停止し、停電リスクが高まったからだ。原発の老朽化リスクが顕在化しているのがわかる。

 しかし、山中委員長は「原発の寿命は科学的に一律に定まるものではなく、規制委員会として意見を言う立場にない」として、ルール変更を容認した。原発の経年劣化を考えれば、安全性と運転期間が無関係というのはあり得ない。一方、5人の規制委委員の一人石渡明氏は「科学的・技術的な新しい知見に基づくものではなく、安全性を高める方向での変更とは言えない」と述べて反対を貫いた。科学者の矜持を示したのだ。

 大地震に襲われたトルコは複数のプレートの境目にあるが、日本も4つのプレートが境を接する国である。世界の地震発生地点を赤丸で示す気象庁の地図では、日本は真っ赤に染まり空白地点はない。この小国で世界の地震の10分の1が発生しているという。そんな国で原発を運転するのだから、念には念を入れてと考えるのは当然だ。石渡氏は、地震や津波の審査を担当する委員である。彼ほど、日本という地域がいかに危ないのかを知っている人はいない。だからこそ、老朽原発の運転期間延長に反対を貫いた。そうした専門家の知見を無視して多数決で押し切るなら規制委の存在意義はない。

 40年ルール撤廃でより危険な原発の再稼働が促進される。国民は、この危機的事態に声を上げなければならない。

※週刊朝日  2023年3月3日号

(引用終わり)

相田英男 拝



[219]最初から意見が一致するわけないと、わかりきっているだろうが
投稿者:相田英男
投稿日:2023-02-10 00:42:14

相田です。

原子力規制委員会の議論で、委員の1名が反対して合意できなかったそうだ。反対した委員とは、日本地質学会の会長で東北大の先生だという。専門は岩石の分類であり、地震の専門家では全くないのだが、地震・津波分野の審査を自信を持って判断しているという。

まあ、ぶっちゃけて言うとだな、この日本地質学会の会長さんは、地団研(ちだんけん)の重要メンバーなのである。だから、原発の再稼働に反対し続けるのである。

地団研とは、地学団体研究会という組織の略称である。地団研とは単なる学界ではなく、共産主義を信じる地学研究者が集まった組織である。井尻正治(いじりしょうじ)という、ナウマンゾウの発掘で有名な学者がいた。井尻はあの武谷三男、坂田昌一と並ぶ、理科系左翼学者のカリスマの一人であり、井尻をリーダーとして戦後に組織されたのが地団研である。

地団研とは、かつては民科(みんか、民主主義科学者協会の略称)の一部会でもあったが、1955年に民科が分解した後も、独立組織として活動を継続している。

現在の大規模地震の発生メカニズムであるプレートテクトニクス理論を、地団研は執拗に否定し続けている。プレートテクトニクスは、西側国家で提案された帝国主義的な理論であり、旧ソビエトで提唱された地向斜造山論の方が正しい、と、ひたすらに言い張っているのが地団研である。学術議論に政治思想を持ち込むのが地団研である。

そんな組織の重要人物が、規制委員のメンバーにいるのだから、絶対に議論がまとまる筈など無いのである。日本の原発の運転には執拗に反対し続ける地団研であるが、ロシアや中国で稼働する原発には、全く抗議の声を上げないのも地団研である。

これ以上は、もう言わん。
最初から話にならんよ、こんなもん。理屈の話じゃないけんね。

(引用始め)

原発「40年ルール」→60年超案、委員1人が反対 原子力規制委
2/8(水) 18:17配信 毎日新聞

原発の運転期間を原則40年、最長60年とする「40年ルール」を改め60年超の運転を可能にする改正制度の骨子案について、8日の原子力規制委員会の定例会で審議があり、5人の委員のうち石渡明(いしわたり・あきら)委員が反対を表明した。この日、骨子を決める予定だったが、山中伸介委員長は多数決による議決を避けて、来週臨時会を開き改めて議論することにした。

 政府の原発運転延長方針に対応して規制委は、運転開始から30年を超える原発について最大10年ごとに劣化状況や安全性を審査して、以降の運転を認可する新規制制度の骨子案を昨年策定した。この日は、意見公募で1749人・団体から寄せられた意見と、それへの規制委の回答について議論。山中委員長が「骨子案を了承してよろしいか」と意見を求めると、石渡委員が「非常に重要なことで、採決すべきだ」と発言した。

 採決したところ、他の委員が賛成する中、石渡委員は「運転期間(の規制)を法律から落とすことになり、安全側への改変とは言えない」と述べた。また、政府の運転延長案は規制委の審査などで停止した期間分だけ運転期間を延長できる仕組みのため、審査に時間を要するほど古い原発を動かすことになる点が、矛盾を意味する「二律背反になってしまう」などと指摘。骨子案への反対を表明した。石渡委員は東北大教授などを務めた地質学者。2014年9月から委員を務め、地震・津波分野の審査を主に担当している。

 規制委は、8日に骨子を決め、それを基に40年ルールを削除して新規制制度を加えた原子炉等規制法の条文案を作成し、15日の定例会で議論する予定だった。山中委員長は会合後の記者会見で「(石渡委員が)誤解されている部分もある。もう少し議論したい」と述べた。【吉田卓矢】

(引用終わり)

相田英男 拝



[217]いわゆるひとつの古典的な詐欺商売である
投稿者:相田英男
投稿日:2023-02-04 13:27:47

相田です。

細かくコメントを書くとシンドイので、忘備録程度とします。記事の日本語が回りくどすぎて、内容が大変わかりにくい。が、政府が核融合技術を積極的に「後押しする方針を決めた」、という訳でも無いようだ。組織の名称が「核融合産業協議会(仮)」となっている。「産業振興会」ではなく、「産業協議会」である。しかも(仮)までついている。

まあ、うるさく騒ぐ連中がいるから、どの程度の実力か、下調べしながら話だけまずは聞いてやるか、というスタンスらしい。核融合にはこれまで、旧文部省が長い間、ダマされ続けた歴史がある。なので、政府もさすがにすぐさま飛びつくような、間抜けな対応はしないのだろう。

しかしまあ、極めて古典的な詐欺の手法が繰り返されているのに、疑わない連中が大勢いるのよなあ。世代が変わると、痛い思いを経験した担当者達がいなくなるので、同じ失敗を繰り返すのだろう。

話は単純で、核融合技術を産業化するならば、D-T反応による装置で、安価にメンテナンス可能な、超高真空を維持できる、大型リング構造体が作れるかを証明させれば良い。材料は何だ?316ステンレス鋼か?それとも低放射化バナジウム合金か?

あと、D-T反応では絶対に上手くいく訳ないので、D-D反応炉、He3-He3反応炉が、いつ実用化出来るのかを、説明させれば良い。そしたら、「AIを使った最新の電磁場解析手法で、あと30年くらいで見通しが立ちます」とかの、まことしやかなウソを並べるんだろうな。

そこまでしてアブク銭が欲しいのかね?欲しいんだろうな。私もお金は欲しいからね。

(引用始め)

「核融合」産業化へ、公的補助で民間参入後押しも
2/2(木) 10:10配信
「核融合産業協議会(仮)」設立へ

 政府は「核融合産業協議会(仮)」を設立する方針を固めた。国際熱核融合実験炉(イーター)などで培った技術を生かし、核融合産業のサプライチェーン(供給網)構築を目指す。量子科学技術研究開発機構(QST)を中心に民間企業の技術を結集。産学官の連携体制を構築する。公的補助などで民間の参入やスタートアップの育成を後押しする。

 このほど核融合発電の国家戦略の骨子案を取りまとめた。核融合産業の予見性を高めるため、発電実証時期を早期に明確化する。産業ニーズを可視化するため、技術成熟度を記載した核融合発電に関する技術マップなどを作成し、経済安全保障の視点も踏まえて取り組むことなどを盛り込んだ。

 また、産官学の有識者などが参加する核融合エネルギーフォーラムを発展的に改組し、産業化に向けた議論を活発化させる方針。スタートアップを含めた民間企業の保有する技術シーズと産業ニーズのギャップを埋める支援を行う。

 1月30日に開いた有識者会議では、核融合開発を推進するには現在の2倍程度の人員が必要だとする意見が出たほか、核融合炉を運転する人材確保・育成も重要になると指摘があった。こうした意見を踏まえ、3月にも国家戦略を策定する。

 核融合発電は発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない脱炭素エネルギーとして期待される。近年は米国や英国、中国が独自に核融合戦略を打ち出すなど、各国が産業化に力を入れ始めている。

日刊工業新聞

(引用終わり)



[213]歴史から学ぼうとは誰も思わんよな(自戒を込めて言う)
投稿者:相田英男
投稿日:2023-01-24 22:59:01

相田です。

以下に引用する文章の筆者は、原発を積極推進する体制派の技術評論家として、広く知られている。しかし引用文は、筆者の本業の原子力の評論ではない。筆者は東工大の先生なのだが、東工大と東京医科歯科大が合併する件について、考えを述べている。読んでいて私は思う処があった。申し訳ないが、全文引用させてもらう。

引用文には、「英語のサイエンス(science)の原語は、ギリシャ語のscientica で、知識の意味である。(中略)さらに広義には、体系化された知識(knowledge)の集まり全体を意味する。」と、ある。副島先生の読者には自明であるが、この内容は、副島先生が30年以上前から言っている「サイエンスとは学問のことである」の説明と、全く同じである。我々には「今さらなに言ってんの」という感じである。

筆者が文中で、坂田昌一を出して来たのも意外だった。筆者と同窓の京大出身とはいえ、坂田は、筆者達(私も含むのだが)の原子力推進派が忌み嫌う、左翼科学者の筆頭だ。赤色物理学のリーダーそのものだ。最も偉大な共産党員の自然科学者が、坂田だ。筆者は、その坂田を持ち出して、肯定的に持ち上げている。

以前に筆者は、旧日本原子力研究所の化学研究者で、共産党の活動家でもあった中島篤之介(なかじまとくのすけ、公安調査庁がマークしていた重要人物)の名を引用して、「彼ら左翼系活動家のせいで、原子力が推進できない」と批判していた。それを思い返すと、この筆者の文章は、私にはなかなか趣き深い内容である。

坂田、中島共に、かつては日本学術会議の議員であった。共に、学術会議員としての積極的な活動でも知られる。学術会議に関しては、先の菅総理時代の騒動の際には、保守派の論客は総じて、「左翼の巣窟となっている学術会議など即刻廃止せよ」と、息巻いていた。保守派の一人である筆者も、「学術会議など潰してしまえ」と、明言したかどうかは、私には不明だ。が、学術会議を擁護する姿勢では無かった、と、記憶する。

学術会議については、そもそもが、誰もが知らない、もしくは、忘れてしまった事実がある。戦後に日本学術会議が成立する過程で、積極的に設立を推進したのは、左翼ではなく、茅誠司、嵯峨根遼吉、兼重勘九郎などの、東大の体制派の科学者達だったのだ。戦前・戦中に軍部主導で推進された科学(技術)研究のあり方には、数々の問題があった。それが要因のひとつとなり、日本は戦争に負けた。東大の学者達は、皆そのように認識していた。なので、科学者自身の意向に沿った学術行政を行う場として、東大の学者達は、日本学術会議を作ったのだ。ケリーという、アメリカ人物理学者の後押しがあったにせよ、だ。

しかし、学者達自身の直接選挙による会員の選出という、「民主的」なルールが適用された結果、立ち上げに尽力した東大の学者の多くが落選し、左翼学者ばかりが当選する、皮肉な事態となった。そして、今に至っている。その事実を私は否定はしない。

さて、筆者は引用文の中で、文科省の方針が歪んでおり、勤務先の東工大が妙な名称に変わることを嘆いている。しかし、このような科学行政の歪みを正すための場とは、どのような組織であろうか?それこそが、日本学術会議に期待された、重要な役割ではなかったのだろうか?

先の学術会議の会員排除問題では、「政府の方針に逆らう左翼学者共はケシカラン」と、保守派は騒ぎ立てた。そのような風潮が続く結果、政府に従順な、日和見的な学者ばかりが重用される事態になったのではないのか?自身の論文数や給料の心配に汲々となり、「科学者の社会的役割」などについて、眼中にない学者ばかりが残ったのではないのか?

一般庶民に親しみ易い、軽い名前の大学で、何が問題だと言うのか?受験生が増えさえすれば、それで十分であろう。軽い名前の方が「政府にウケが良い」と、大学の幹部達が会議を重ねた末に出した結論だ。これこそが「最早、学術会議などは必要ない」と吹聴する、保守派連中の望んだ世の中だ。甘んじて受け入れるべきだろう。

遡ること80年前に、当時の科学者達は筆者と全く同じことを嘆いていた。それを正すために、学術会議は作られたのだ。その「本来の理念」から、皆が目をそらし続けるから、問題が解決しないのではないか?全く同じ様相が、繰り返して現れることに、何故気付かないのか?別に、科学者達だけの問題では無いのだが。

なので私は、歴史を学ぶことに価値がある、と、強く思う。しかし、「日本の科学が自然死する」などと、見当違いのボケた発言を振りまく「歴史学者」が、賞賛されてはびこっている。そんな世の中では、問題の解決からはホド遠い、と、私も嘆く。

(引用始め)

東工大と東京医科歯科大の統合:新名称「東京科学大」に思う
澤田 哲生
2023.01.21 06:40

キマイラ大学
もしかすると、そういう名称になるかもしれない。しかし、それだけはやめといたほうが良いと思ってきた。東京科学大学のことである。東京工業医科歯科大学の方が、よほどマシではないか。

そもそもが生い立ちの異なる大学を、無理やり繋ぎ合わせたキマイラなのであるから、キマイラらしく〝工業〟と〝医科・歯科〟を素直に接合したほうがマシだろう。キマイラとは、古代ギリシャ神話に登場する合成生物である。例えば、頭部はライオン、胴部は山羊、後尾は蛇というようなものである。〝工業〟と〝医科・歯科〟を併せて科学と称することで、却って矮小化したように感じる。

工業には、細分化された知を集約・統合して、実践的ものづくりによって人々のより良い生活に資するという、崇高な精神がある。医は、ヒトという小宇宙を相手に統合された知がなければ、成り立たない。しかるに〝科学〟とは単なる分科の学問にすぎない。科学という語彙は、西洋由来の概念であるscienceのとんでもない誤訳なのである。

科学とScience
まず日本語の〝科学〟は、分科の学問または科挙の学問の意味である。明治にサイエンス(science)という英語に出会った西周(江戸時代後期から明治時代初期の啓蒙思想家)が、これを〝科学〟と訳してしまったのである。もう取り返しはつかない。短慮という他ない。蒙を啓くべき思想家にあって、実に蒙昧たるべしという他ない。科学=分科の学問とscienceの間には致命的な違いがあるのである。

英語のサイエンス(science)の原語は、ギリシャ語のscientica で、知識の意味である。サイエンスは狭義には、観察や実験によって確かめられた事実であり、検証や追試が可能な自然科学を指すが、それを広げて、科学的方法論に基づいて得られたあらゆる知識を指す。そして、さらに広義には、体系化された知識(knowledge)の集まり全体を意味する。

つまりscienceにおいては、分科の学問を構成する○○科と□□科の境界領域にあって、相互を関係付けている何物かが、より重要な意味を持ってくる——それこそが、この宇宙の根本的な仕組みである、と言って良い。

科学は分科の学問であるから、専門知識を極めることを重視するが、専門知識間の関係性にはマインドが及ばない。当然ながら「理科」も「文科」も、ともにサイエンスの一部分に過ぎないが、本来両者は相補的関係をもって、知識間の関係性にもっと心血をそそぐべきであろう。しかし、「科学」と表意した途端に、そのマインドが致命的に欠落して行ってしまうのである。

明治の頃に『学問のすすめ』という書も出たが、これは分科の学問のすすめのことをいう。つまり、分化された分野に精通した専門家という人材が、当時は必要だったのである。いわゆる専門性を極めることが、善であったのである。近代化を急いだ当時の国情が、背景にあった。

専門バカ
私は約30年前、ドイツから帰国して東工大に職を得たが、当時の部門の長に「専門性を極めろ、さもなければ将来(職のステップアップ)はない」と、諭された。その時大いに違和感を感じた。大学の意義は、専門性を極めることはもちろんだが、むしろその統合がもっと重要なのではないか。オレに専門バカになれというのか・・・と。

2011年の東日本大震災・福島第一原子力発電所事故以降、私はTV新聞WEBなどのメディアに頻出してきた。その都度「専門は何ですか?」と聞かれる。「単なる専門家じゃあないんだけどなあ、そんなに狭い専門分野に閉じ込めたいのぉ?」と内心思いながらも、「原子核工学にでもし、といてください」と答えることにしてきた。

科学帝国主義時代
科学者といえば、まずは物理学者という時代があった。日本でいえば、日本人ノーベル賞第一号(物理学賞)の湯川秀樹。世界でいえば、アルバート・アインシュタイン。当時は万事が物理で解明されるべし、という幻想があった。

そのような風潮をして、哲学者オルテガは「物理帝国主義」と、1923年の彼の哲学講義の中で批判した。昨今の若者は、湯川秀樹といってもピンとこないらしいが、アインシュタインはお笑い芸人の名称でもあるので、その名前ぐらいは知れ渡っているのだろう。

湯川の愛弟子である坂田昌一は、仲間の一団と訪中し毛沢東に謁見した際に、「毛沢東主義(共産主義のひとつ)の理論的正当性は、素粒子物理学によって証明されるでしょう」と息巻いたという説がある——その真偽のほどは定かではないが、弁証法に精通していた坂田らしいエピソードだと思う。

近頃大学の文系の学問分野は、あまり役に立っていないのではないか——今後GX時代に向けて、IT人材が大いに不足するので、大学の文系を〝理転〟すべし、というような馬鹿げた論調が、政府筋から発信されるようになってきていた。

そしてついに先だって、『文部科学省は、デジタルや脱炭素など成長分野の人材を育成する理工農系の学部を増やすため、私立大と公立大を対象に約250学部の新設や理系への学部転換を支援する方針を固めた。今年度創設した3000億円の基金を活用し、今後10年かけ、文系学部の多い私大を理系に学部再編するよう促す構想だ』(読売新聞)と報じられた。気でも狂ったのか!?

これって、科学帝国主義時代の幕開け? 科学専門バカを量産するのか・・。東京科学大学がその急先鋒にならないことを、願うばかりである。

1970年に没した坂田昌一は、当時の明治生まれの知識人らしく、いわゆる文・理に精通していたので、以下の名言を遺している。

「イノベーションは必ず学問の境界領域で起こります」
「創造の領域は境界にあることは間違いありません」

もって瞑すべし。東京科学大学は東京境界領域大学としたほうが、日本のみならず、世界の将来に貢献できるのではないか。

(引用終わり)

相田英男 拝



[211]ニュースタイトルだけで内容がわかるよ
投稿者:相田英男
投稿日:2022-12-17 12:43:24

相田です。

核融合の話である。アメリカのローレンス・リバモア研究所に、国立点火施設「NIF」という実験設備がある。米エネルギー省によると、この設備を使って、核融合の実験で「歴史に残る成果」が達成されたという。アメリカ政府の公式発表のため、それなりのニュースが流されている。

以下の引用は、それを受けた、とあるジャーナリストのコメントである。一般の方々の素朴な感想だろう。私ごとき一技術屋では名前しか知らない研究機関を、数多く訪問して取材されている。それでも、核融合についての認識は、以下のような程度か、こんなものなのだろうな。

あちらこちらで書かれているように、「核融合と核分裂(原子力)とは違う」と思われているらしい。しかし、核融合と原発の核分裂は、同じである。私は断言する。核融合も核分裂も、エネルギーの根本は、物質の質量そのものである。質量を熱エネルギーに変換する事で、高熱を発生させるのだ。その高熱でお湯を沸かして、蒸気タービンを回して、発電するのだ。

エネルギーの根本は物質の質量である。質量自体がエネルギーの源だ。我々の身体も質量を持つ、超巨大なエネルギーの塊である。だから普段の生活で、危なくてしょうがない、などと、心配する必要はないのだが。

エネルギー源の根本は同じだ。違うのは、エネルギーを取り出すプロセスである。核分裂は、ウランなどの重たい原子核をぶち破る事で、質量をエネルギーに換える。対して核融合は、水素などの軽い原子核を溶かしてくっ付ける事で、エネルギーにする。これだけの違いだ。

なので、「核融合は核分裂と異なる仕組みなので、安全な発電方式だ」という説明は、全くのプロパガンダである。核融合炉の危険さは、原発(軽水炉)以上である。

以下の文章にあるようにNIFというのは、192本の巨大レーザー装置を使って、燃料ペレットに高熱を集中させる仕組みである。超強力なレーザーを200機も使って実験するのだ。こんなものが、平和利用のための、クリーンな発電設備である筈が無いだろう。少し頭で考えたら、普通の人でもわかるだろう。

こんな発表は、アメリカの軍産複合体の、めくらましの、公式プロパガンダでしかない。抜け抜けと、よく言えたものだ、と、呆れざるを得ない。核融合炉こそが「ウソ技術」の筆頭である。

(引用始め)

夢の核融合エネルギー
2022.12.17

「地上で太陽を作り出す」

簡単には言葉の意味が理解できないが、米国の国立点火施設「NIF」があるローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)を、最初に訪問したのはもう30年になる。数百メートルにも渡る金属箱のようなものが横たわっていたのを覚えている。レーザーが旅するものだと言われた。当時も今も、全体では野球場くらいの巨大施設だ。

それからさらにその30年前、つまり今日からいうと60年くらい気が長い基礎研究が継続されている。筆者の母校、カリフォルニア大学バークレー校で、「プルトニウム」を発見したグレン・シーボーグ博士の長時間対談をやった頃だ。シーボ―グ博士にも「NIFも取材したら」と言われた。

(中略)

核を利用する兵器には大きく2種類ある。「核分裂」と「核融合」だ。核分裂兵器はプルトニウム(PU)やウラン(U)元素の原子核(陽子・中性子)を利用しており、プルトニウムはナガサキ、ウランはヒロシマで使われた。

核分裂の際、放出される中性子が別の原子核が吸収してさらに分裂、それが継続して分裂がドミノ倒しのように次から次に起きる。分裂がごく限られた時間内に一定の臨界量に達すると、連鎖反応が持続、莫大なエネルギーになり、それが核(分裂)爆弾になる。

原子力発電の場合は、原子炉の中で前述のようにウランが核分裂をする時、臨界状態を制御・維持、その熱で水を沸かして水蒸気を作り、それでタービンを回して発電する。

「核分裂」とは全く違う、もう1つの「核融合」。核融合だけを利用した爆弾は、現時点ではほぼ不可能とされる。重水素と三重水素を、熱で加速して核融合させる。高温・高圧がまずは必要だ。それを作り出すために、上記の核分裂爆弾、原爆を「起爆剤」として使う。
核分裂爆弾と比べると、水爆は1000倍くらいの威力があるという。

「核融合」は「核分裂」と共に、制御は大変、放射性物質の扱いも難しいが、その莫大なエネルギーを上手く使おうという考えは、当然、大昔から存在する。太陽が常に明るく輝いている原動力。主に重水素と3重水素の2つの軽い原子核が、重いヘリウムと中性子に変わる時に出る莫大なエネルギーだ。原子の中心にある原子核が衝突している部分が太陽に似ている。

全て上手くいけば、脱炭素、そして一方の「核分裂」利用の原発の危険性から逃れる可能性がある。日本はEUと組んで、茨木県に実験的な施設を建設、試験運転を始めるという。やはり将来を考えているフランスは、磁力利用の核融合炉で、今回話題を呼んだ米国の高出力レーザー利用とは、全く違う。

これも30年近く前だが、筆者は全米にある「国立研究所」全ての訪問取材をした。ライフワークの原爆関連取材だ。ヒロシマ原爆を作ったロスアラモス、双璧のリバモア(LLNL)、サンデイア、サバンナリヴァー、オークリッジY12、ハンフォード、アルゴンヌ、ブルックヘイブン、フェルミなどなど、フクシマ事故取材もあり、複数回取材した。ロスアラモスでは、内部を深く複数回取材した唯一の日本人ジャーナリストと言われた。国家核安全保障局(NNSA)はその窓口で米エネルギー省内でも、核関連を全て仕切っている。

そこの友人がつい数日前、教えてくれた。半世紀以上、努力している核融合炉NIFの実験で大きな前進があったというものだ。訪問した30年くらい前には、夢物語で、いつ可能になるか、実験が成功するか不明と言われていたが、今回の成功は、小さな一歩、だが同時に大きな一歩とも言える。

実験では、192本の巨大レーザーで凍結水素入りの容器を破壊した。放出したエネルギーと比べて爆破により得られたエネルギーが大きかった。つまり、差引勘定でクリーンエネルギーが生成できた。

しかし実用にはまだまだ大変な道のりがあると、NNSAの友人に言われた。だが貴重な一歩。米国の基礎リサ―チ、基礎研究は日本では想像できないほどのスケールがある。今回の核融合の研究だけでなく他の分野でも、長時間やっても失敗の可能性もあることもやっている。失敗を恐れていては、重要な基礎研究などできないのだ。

野口 修司
国際ジャーナリスト
国際ジャーナリスト(在米40数年)。東京生まれ。UC Berkeley 修士号。安全保障、国際テロ、原爆、原発、日米関係、国際金融を中心に世界30数ケ国・現地取材を行う。ビル・ゲイツ、スノーデン、アサンジへの世界的スクープインタビューも。米国の調査報道記者賞。国際エミー賞審査員2回。

(引用終わり)

相田英男 拝



[209]間抜けに見えるのは気のせいか?
投稿者:相田英男
投稿日:2022-11-19 21:03:33

ぶっちゃけ、どうでもいいのだが、書いておこう。以下の筆者は、私の独断の決めつけによると、統一教会の信者である。文章の内容がモロに、勝共連合の方々の、ステレオタイプの原発推進文章の、そのままである。彼らムーニーの、原発推進賛成の先駆けは、なんと言っても福田信之(ふくだのぶゆき)大先生に由来している。物理学者である福田信之の先生は、あの朝永振一郎と武谷三男である。物凄い優秀な学者だったのだ、福田は。

しかし、福田は大恩人だった筈の武谷三男を、米国フルブライト留学から帰国した後に、統一協会に帰依する事で裏切った。その後の福田は、東京教育大学の筑波への移転騒ぎで、反対派の学生達の無茶苦茶大勢を(総人数は不明らしい)、退学に追い込んだり、中曽根に掛けあって、筑波の田舎に物理実験用の大型加速器を誘致したり、と、良くも悪くも大活躍だった。

一方の武谷は、共産党系の研究者達と連携して、政府が強引に進める(ように見えた)原発建設に、反対する主張を繰り広げた。日本の反原発活動家の、基本的な主張は、武谷が中心となり数名で執筆された、岩波新書の「原子力発電」という本の中で、ほぼ出し尽くされている。武谷以降の活動家は、この本の文章をテンプレートに使って、ただただ繰り返すだけである。「便所のないマンション」という用語も、この本の最後に武谷が書いたのが始まりだ。「便所」の部分が、品の良い「トイレ」に、あとから変えられているが。

でまあ、である。以下の文を読むと、「ああ、福田がいかにも言いそうな内容だ」という感慨のみが、私の脳内に込み上げてくる。原発推進派と反対派の論争を眺めると、結局の処は、福田と武谷の師弟コンビの発言を、それぞれコピーして、ひたすら繰り返すだけであるのに気づく。「みんな、よく頑張るね」と、感心するしかない。

以下の筆者を含めて、統一協会系の原発推進派が、大きく勘違いしている点が、一つある。福島原発事故の後で、原発の再稼働が遅々として進まない最大の理由は、筆者が記すような共産党の反対のせいではない。そうではなくて、死んだ元総理の安倍晋三にある、という事実だ。

安倍が総理の時代に、側近として重用され安倍を支えたのは、経済産業省系の大物官僚たちだった。経済産業省と東電を始めとする電力会社は、実は物凄く仲が悪いのだ。経済産業省の役人達は、太平洋戦争の前から、民間の電力会社を全部潰して、電力ネットワークと利権の全てを、国家で管理する事を目標に掲げている。なので、福島原発事故は、経済産業省の役人達にとって、待ってましたの大チャンスが転がり込んで来たのだ。

安倍晋三が総理だった間は、経済産業省は東電を、ここぞとばかりに弱らせるために、原発再稼働をサボタージュし続けた。だから、総理が変わった今頃になって、新設するとか、40年寿命を撤廃する、などの機運が出て来たのだ。ちなみにだが、40年過ぎてどれだけ使っても、「古いから原発が壊れる」事などないよ。

なので、であるが、「安倍総理は偉かった」と称えながらも、「原発を早く動かせ」という、統一協会系推進派の主張に、私は大きな違和感を感じるのだ。

私が間違っているのなら、誰か言ってくれ。

原発をさっさと動かして、早く電気を起こすべきだ、と、私もかねがね思っているよ。

(引用始め)

原子力を強化せよ(屋山 太郎)

今、世界のエネルギーや原料の供給網に劇的な変化が起きようとしている。例えばドイツは、これまで頼ってきたロシアの天然ガス市場から締め出されようとしている。同じくロシア産天然ガスに頼る日本には、日露友好交渉を行って現状を守れという意見もある。

しかしロシアはガスをドイツ叩きの絶好の材料と見ている。日本叩きにも当然利用するはずだ。日米を含む西側自由主義国対ロシア・中国の関係は、今後の国際秩序の大枠を形成するものだ。エネルギーの供給網も、この枠組みに沿って落ち着いていかざるを得ない。

国際NGO「気候行動ネットワーク」は11月9日、気候変動対策に後ろ向きな国に贈る「化石賞」に日本を選んだと発表した。今年で3回連続の受賞である。化石燃料の関連事業に巨額の公共投資をしたこと、岸田首相がCOP27(国連気候変動枠組み条約会議)への参加を見送ったことなどを理由に挙げた。

「化石賞」の受賞は国際的には恥ずかしいことだが、岸田首相はその恥を一挙に覆そうという提案を発表した。原発運転期間の上限60年の撤廃は、政権が長年温めてきたアイデアだったが、これを実現することになった。

これまで日本の科学技術の世界は、左翼の影響にどっぷり浸ってきた。日本学術会議は設立当初から共産党の影響力にさらされ、80年代には解体論が叫ばれていた。それから少しは浄化されたのかと思っていたら、菅前首相による会員候補6名の任命拒否事件があった。

ごく最近になって日本学術会議は漸く、軍事と民生双方で研究できる「デュアル・ユース(両用)」の科学技術研究を容認する方針を打ち出したが、時すでに遅し。軍事科学技術は諸外国に比べてすでに半世紀遅れた。共産党が特に原子力利用への反対に力を入れてきたのは、反対が中国、ロシアに対する協力に通じたからだ。原子力に関する規制については、あらゆる面に亘って厳格さを要求してきた。

そうした運動の結果、福島第一原発のような事故が起きると、原子炉等規制法は改定され、規制がいたずらに厳しくされた。運転期間の上限を原則40年に定め、規制委員会が認めれば1回に限り最長で20年延長できることになった。しかし福島原発の事故で上限を40年間に決める理由は何なのか。規制でいたずらに押さえつける態度にしか見えない。

米国は稼働開始から40年以降は、安全審査をクリアしさえすれば20年以内の延長が何度でも可能だ。英国・フランスには運転期間の制限はなく、10年毎の安全審査を実施することになっている。日本がこれからやるべきは最長60年の運転期間上限を撤廃する法改正だ。

今年6月時点で、フランスの原子力は全電源の約62%を占めている。米国は15.8%(7月)。日本は3.1%だ(国際エネルギー機関データ)。これからの日本は、原子力エネルギーの割合を圧倒的に増やして主力電源を安定させ、電気料金も世界最低レベルを目指していってもらいたい。

(令和4年11月16日付静岡新聞『論壇』より転載)

(引用終わり)

相田英男 拝



[206]今回はこれでカンベンしてください
投稿者:相田英男
投稿日:2022-09-24 01:23:39

核融合は手の届く所にある 設計、材料、制御…主要な課題に解決の見通し 何としても日本の手でやり遂げ新たな基幹産業に
夕刊フジ 9/22(木) 17:00配信

【官製エネルギー危機】

たゆまぬ技術開発により、太陽のエネルギーを再現する「核融合」は今や夢物語などではなく、手の届く技術になった。設計、材料、制御などの主要な課題はすでに解決の見通しが立っている。
 → 少なくとも、材料の見通しは全く立っとらんぞ。どうやって、高速中性子のカスケード損傷を防ぐのだ?真空容器にクラックが出来て、溶接補修しようとすると、核変換で出来たヘリウムのバブルが、溶接の加熱ですぐに集まって、クラックがどんどん広がるぞ。壊れても補修も出来んとは、どうするつもりなんかね?

いま国際協力で、「核融合実験炉(ITER=イーター)」の建設がフランスで進んでいる。完成は2020年代後半で、35年には、普通にみる火力発電所と同等の出力に達する予定だ。この建設コストは、2・5兆円前後とされている。また実用化の前に、もう1つ、同じぐらい金額をかけて実証炉を造る必要がある。
 →そんな金があるなら、2500億円で最新火力発電所を、10箇所作るべきではないのか?

そんなにかかるのか、という心配はごもっともである。だがこれは、幾つもの方法を試し性能を確認する「実験」をするためのコストだ。
 →実験せんでも、結果は見えとるとやなかとか?

実用段階になれば、発電コストは、既存の原子力発電と比べても全く遜色がないと推計されている。高くつくのは実験段階だけの話だ。実用段階になれば、安価で、CO2(二酸化炭素)を出さず、無尽蔵な発電技術を人類は手にすることになる。
 →壊れたらロクに修理もできない設備を、一体どうやって安価に運用するつもりなのだ?

また核融合炉は原理的に安全だ。既存の原子炉で用いる「核分裂」反応は、起こすのは簡単だが、止めるのに失敗すると、炉心溶融や核爆発といった過酷事故が起き得る。「核融合」はその逆で、起こすのは難しいが、何かあるとすぐ反応が止まってしまうので安全になる。
 →モノは言いようではないが、そもそも今の技術では、ちょっとプラズマの制御が乱れたら、すぐに核融合反応が停止するのではないのか?安全とか、議論する以前の問題ではないのか?

いま温暖化対策として、日本は毎年数兆円といった莫大(ばくだい)な費用をかけている。だがそれよりも、核融合発電に集中投資することで、実現を前倒しすべきではないか。
 →これまでも、どれだけ集中投資しようが、全く前に進まかったのでは無いのか?

なお、新しいアイデアによって小型の核融合炉が可能になり、数年先には実用化できる、といった報道が散見される。だが、残念ながら、それほど事は簡単ではない。
 →ここだけは本当。

核融合には、超電導コイル、プラズマ、廃熱部、ブランケットといった要素技術があり、このすべてを組み合わせると必然的に普通の原子力発電所ぐらいの大型のものになる。新しいアイデアというのは、大抵はこの一部の改善案にとどまっており、大型の核融合炉が不要になるということはない。むしろそれらのアイデアは、大型炉を改良してゆくためにこそ有益になる。
 →こんな開発は、50年も前からずーーーーーーっと、続けて来たのではないのか?原研那珂(JT-60)とか、筑波大(ガンマ10)とか、名大(プラズマ研)とか、京大(ヘリオトロン)とか、核融合科学研究所(LHD、ラージヘリカルデバイス、岐阜県土岐市)とか、阪大(激光)とか、九大(トライアム)とかで。その成果の、一体何が、世の中の役に立っているのだ?わかるように、ハッキリと教えてくれや。

宇宙開発における民間企業「スペースX」の成功は、NASA(米航空宇宙局)のアポロ計画やスペースシャトル計画で開発した技術があったからこそ実現した。核融合開発では、ITERなどの大型の実験炉が、宇宙開発でのアポロ計画にあたる。これは予算規模が大きく時間もかかることから、国家が主導するほかない。
 →とりあえず、これからしばらくは、中国に任せようや。

核融合ができれば、温暖化問題もエネルギー問題もすべて解決する。これは何としても日本の手でやり遂げ、新たな基幹産業としたいものだ。 
 →全くそうは思えんとやけど

(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・杉山大志) 
(矢印書き込み・相田英男)=おわり

相田英男 拝



[204]ついに出た、GE内部の暴露本の決定版。これだけ読めば十分よ
投稿者:相田英男
投稿日:2022-07-24 00:49:05

相田です。

出張に出る際に、書店で見掛けて購入した。帰るまでに読了出来た。電車中で読みながら、途中で皮肉な笑いが幾度となく込み上げて来て、こらえるのに苦労した。

『GE帝国盛衰史 「最強企業」だった組織はどこで間違えたのか』(ダイヤモンド社刊、訳:御立英史、2022年7月12日初版発行)

私には待ちに待った本だった。GEの凋落について、一時期の私は頭が妙にハイになって、この板に何度も英語の記事を挙げていた。しかし、断片的にしかアメリカの事情がわからないので、GEの凋落について整理した文章を、書き始めてもいた。でも、本書が出てしまえば、最早私の出る幕はない。

この本の内容は私にとって非常に重い。「なるほど、そういう事だったのか」と納得する記述が、随所に出て来る。当たり前だが、こんな内容の本を、私が書ける筈がない。

私が社会で職を得て以来、30年以上も考え続けて納得できなかった疑問の答えが、本書には全て書かれてある。私の人生にとっての、最大の経済関係書籍である。

この本の内容について、日本人の「識者」とやらが、あれやこれやとコメントするのだろう。まとめてみんな、お前らは全て、大バカのアホ連中である。お前ら一体、これまでGEについて、どのように語ってきたというのだ?!?「日本メーカーは遅れている。その点GEはさすがだ、素晴らしい」と、ひたすらに繰り返してきたのではないか。その、今までお前らが積み重ねて来た、あまりにも莫大な、白々しいコメントの山脈について、どのように責任を取ってくれるのだ!?!ええ!!、日本経済新聞よ。ついでに。広瀬隆よ。

あのなあ広瀬隆よ。あんたなあ、死ぬ前に本書の感想文を必ず書けよな。俺がしっかりと見届けてやるからな。何なら口述筆記でもいいぜ。今ならスマホに話しかけるだけで、簡単に文章ができるだろうが。

本書の内容は、人間社会の底知れない闇の存在を私に感じさせる。資本主義の本質とは、所詮は、このようなものなのであろうか?偉そうな能書きばかり語っても、全ては、その場しのぎのデマカセに過ぎないのか?

本書の記述からは、答えはYESだ。

本書について、まだまだ言いたい事が続くのだが、キリがないので今日はここまで。

相田英男 拝



[201]言ってる事が支離滅裂である
投稿者:相田英男
投稿日:2022-03-15 21:36:48

相田です

長い引用の前にちょこっとコメントするだけなので、恐縮してはいるのだが、やっぱし「これはないよ」と、読みながら思った。世界中で資源高のインフレが進みつつある。資源輸入国の日本はエネルギー政策の転換を急ぐべきだ。というまでなら、まだ許せる。しかし、その結論が「具体的に政府は、洋上風力など再生可能エネルギーの、利用増加に集中しなければならない」というのは、如何なものか?

洋上の大型風力発電装置に必要な、発電機やら、大型歯車やら、高純度の銅線やらアルミ導線やらの、素材や部品の価格も、これからバンバン高騰するのではないのか?軸受のベアリングも、大型風力発電の場合は特注品になる。自動車のベアリングのように、たくさん作って量産効果で価格が低下する、などというオメデタイ事は、風車の場合は起こり得ない。

ちなみにわかっているだろうが、風車の建設には、500トンと超える重量級のクレーンを現地まで持って行かなければならない。洋上ならば、大柄工事船舶で基礎工事をやってから、海の上に高いクレーンを立てるのだ。インフレが進むこれからの時代に、どれだけコストアップになるのか、少しは考えてはみたのか?

考えても想像は付かんか?

私なら、さっさと原発を再稼働させてバンバン発電させて、十分な電力を先ずは確保するけどね。風力発電システムを日本の会社が作らなくなった本当の理由を、筆者達は知るまい。

その内に書くよ、池田某に先を越される前に(ダメかもしれんが)。

(引用始め)

「日本は電力すら賄えなくなる」未曾有の物価上昇に備えて岸田政権が今すぐやるべきこと
3/15(火) 9:16配信 プレジデントオンライン

■輸入頼みの日本が直面する厳しい現実

 依然として、ウクライナで激しい戦闘が続いている。それによって、世界経済の構造が大きく変わりそうだ。1990年代初頭以降、世界経済は国境の垣根が下がる=グローバル化の流れを歩んできた。それが、ウクライナ危機によって、ロシア対西欧諸国の間で分断=ブロック化が進むことになりそうだ。米英やドイツなどのEU加盟国はロシアへの金融制裁に加え、原油などの輸入を停止あるいは削減する。

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 3月7日には、需給が逼迫(ひっぱく)するとの懸念から原油の先物価格が急騰した。ブロック化へ世界経済のパラダイムが変化することで、自由にモノを貿易することが難しくなる兆候が表れている。

 グローバル化によって、世界に張り巡らされた供給網=サプライチェーンが遮断されはじめた。その結果、経済運営の効率性は低下し、世界的に経済成長率は低下するだろう。ロシアからの資源供給の減少によって、世界全体で構造的に物価も上昇しやすくなる。各国が緩和的な金融政策に頼った経済運営を続けることは難しくなる。

 資源を輸入に頼るわが国は、かなり厳しい状況に直面する恐れがある。わが国は国全体でどのような対応策をとるべきかを真剣に考えなければならない。喫緊の課題は、経済安全保障の観点からエネルギー政策を強化することだ。やや長めの目線で考えると、経済の実力を高めなければならない。そのために、教育の強化や労働市場の改革を進めてより多くの人が新しい取り組みを進めることができる環境を目指さなければならない。そうした取り組みがどう進むかによって、わが国の将来が大きく変わるだろう。

■世界経済はグルーバル化から「ブロック化」へ

 ウクライナ危機の発生によって、世界経済のパラダイムが変化する可能性が高まった。それは、グローバル化からブロック化へのシフトだ。1990年代初頭以降の世界経済では、ポーランドやハンガリーなどの東欧諸国が市場経済に仲間入りした。中国は改革開放路線をあゆみ、外資企業から製造技術を習得し、豊富かつ安価な労働力を武器に“世界の工場”としての地位を確立した。ロシアは天然ガスや原油、希少金属、小麦などの穀物の主要輸出国としての役割を発揮した。それによって、世界経済のグローバル化が加速した。

 その状況下、米国など主要先進国は積極的な金融政策によって経済成長率の向上に取り組んだ。2000年9月の米ITショック(インテルの業績下方修正が米IT関連銘柄の株価を急落させた)や2008年9月のリーマンショックの発生によって一時的に成長率は低下したが、世界経済は基本的には低インフレと、緩やかな成長率の高まりを実現した。その背景には自由貿易の促進や海外直接投資の増加があった。

■「物価が上がりづらい経済構造」で起きたウクライナ危機

 米国の企業は、高付加価値のソフトウエアなどの設計と開発に取り組んだ。製品の生産を新興国の企業が受託した。国際分業は加速し、先進国企業はコストが最も低い場所で高付加価値のモノを生産し、需要が豊富な市場で販売する体制を構築した。世界全体で経済運営の効率性は上昇し、物価が上がりづらい経済構造が整備された。

 その状況下、内需が停滞するわが国では、長い期間にわたって日本銀行が超低金利政策など緩和的な金融政策を継続した。リーマンショック後は世界的に金融緩和策に依存する国が増えた。

 しかし、ウクライナ危機によって欧米各国はプーチン政権下のロシアとの関係を断つ覚悟を強めている。ドイツの防衛予算増額は象徴的だ。西側諸国とロシアの分断は鮮明化するだろう。欧州やわが国は別の国からエネルギー資源などを、より高い価格で輸入しなければならなくなる。グローバルに張り巡らされた供給網が組み直され、そのコスト負担が企業の事業運営の効率性を低下させる。その結果、世界全体でGDP成長率は低下する可能性が高まっている。

■物価上昇は「ロシア原産」以外にも波及する

 世界は、低インフレ環境から構造的な物価上昇へというパラダイムの変化にも直面しつつある。わが国は対応策を急がなければならない。3月7日のアジア時間の金融市場では“ウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)”原油先物価格が1バレル当たり130ドル台に急騰した。その背景には、世界経済に対するロシアからの原油供給が減少し、需要を満たすことが難しくなるとの懸念急増があった。

 今後、ロシアからの原油や天然ガス、木材、穀物、希少金属などの供給は減るだろう。供給が需要を下回り、価格は上昇する。高級食材と異なり、原油は日々の生活に欠かせない。高いからといって購入を我慢するわけにはいかない。また、新しい供給網の確立にはコストと時間がかかる。当面、世界全体で供給制約は深刻化するだろう。企業は増加するコストを販売価格に転嫁せざるをえなくなる。多くのモノの価格が上昇するだろう。

■岸田首相はエネルギー政策転換を急ぐべきだ

 このようにブロック化によって世界経済ではコストプッシュ型のインフレが進みやすくなる。その場合、中央銀行にできることは限られる。通貨の価値を防衛するために利上げなどが行われたとしても、物価上昇率を2%程度に落ち着かせることは難しい。

 場合によっては、経済成長率が低下してマイナス成長が続くと同時に、物価が上昇する展開もあるだろう。グローバル化に支えられた“低インフレと緩やかな成長”から、ブロック化による“構造的物価上昇と成長率低下”に、世界経済のパラダイムがシフトしはじめた可能性がある。

 そうした展開に対応するために、目先、わが国は経済安全保障の観点からエネルギー政策の転換を急がなければならない。エネルギー政策の転換は一朝一夕には進まない。それだけに岸田政権は迅速に対応方針をまとめなければならない。具体的に政府は、洋上風力など再生可能エネルギーの利用増加に集中しなければならない。

 エネルギーの安定供給は、国民が安心して、持続的に経済活動を送るために不可欠だ。また、安全保障体制の強化のために政府は米国との関係を基礎にしつつ、クアッド(日米豪印戦略対話)など多国間の連携も強化しなければならない。

(引用終わり)

真壁 昭夫(まかべ・あきお)
法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。


相田英男 拝



[200]評論家の語る内容の殆どはウソである
投稿者:相田英男
投稿日:2022-03-06 11:51:02

相田です。

エルピーダとは、DRAMという半導体の製造技術を残すために、日立、NEC、三菱電機などが集まって作られた会社なのは、今更私が説明するまでも無い。最近の半導体の価格高騰の中で、エルピーダの破綻の経緯について再び注目されている。その中でも、引用した著者の説明内容は白眉と言える。

政府の資金援助が足りないとか、巨額な設備投資に日本企業は耐えられない、などという、巷に流布される理由とは、実情は全く異なるらしい。全文の引用は避けるが、「坂本幸雄社長は無能である」と断定しているのは重要だ。坂本氏の評価がどうだ、という点ではない。巷で流布されている、経済評論家、技術評論家の考えが、全くもって独りよがりの、信頼の置けない内容である事が、白日の下に晒されている。これが重要だ。

要するに、巷の評論家の殆どは、信用にならんのよ、おそらくはどの分野でも。

(引用始め)

まだそんなことを言っているのか!間違いだらけの「エルピーダ破綻の原因」
3/6(日) 11:01配信 yahooニュース

■ 日経新聞の特集記事の「間違い」

 坂本氏は、(1)「生き残っていれば、世界と戦えた」とか、(2)問題は「資金力だ」と発言したが、全く事実は異なる。調査結果で論じたように、異常なまでの高コスト体質のエルピーダが倒産したのは必然である。「坂本社長のエルピーダ」は淘汰されたのである。資金力の問題ではない。収益率の低さが問題であり、収益を出せない技術にこそ問題があり、そこに経営のメスを入れることができなかったことが致命傷になったのだ。

 日経新聞の(3)「エルピーダの破綻劇は、官民が巨額投資を伴う長期戦に耐えられなくなった構図」というのも間違っている。繰り返すが、過剰技術で過剰品質をつくり、歩留り100%を目的にする、そのエルピーダの企業体質が問題だったのだ。

 東京理科大大学院教授の若林氏の(4)「DRAMの技術や最終製品の動向を、当局や金融機関が十分に捉えられていなかった」や(5)「日米貿易摩擦の記憶が残る日本」などは、全く的外れな指摘だ。もっとエルピーダの技術の実態を見て発言してもらいたい。

 萩生田経産相の(6)「世界の半導体産業の潮流を見極めることができず、適切で十分な政策を講じてこなかった」という発言もどうかしている。昨年(2021年)6月1日の衆議院の意見陳述でも述べたことであるが、経産省は呆れるほど「合弁、国プロ、コンソーシアムをやり続けた」のである(図5)。そして、全部失敗した。「経産省が出てきた時点でアウト」なのである。その反省をなぜしないのか? 

 (7)TSMCの誘致を奇貨として日本での産業基盤を強くするためには「「設備にしても開発にしても『カネ』と『ヒト』だ」という経産省の西川課長、『ヒト』を育成してからTSMCを誘致すべきではないのか?  順序があべこべだろう。そして、(8)「九州では人材育成の準備を急ぐ」というのは、あまりにも泥縄すぎるだろう。

 筆者が日経新聞の特集記事を読んで、うんざりした理由が分かっていただけただろうか? 

■ 「マイクロンになってよかった」という社員たち

 坂本氏、日経新聞の記者、東京理科大大学院教授の若林氏、萩生田経産相、経産省の西川課長には、EE Times Japanの記事「『Micronになってよかった』という言葉の重さ」(2019年7月8日)を、目を見開いて読んでいただきたい。そして、「Micronになってよかった」という言葉の意味をよく考えていただきたい。

 筆者も、2019年に広島で国際学会があった時、旧エルピーダで現マイクロンジャパンの社員たちから、「マイクロンに買収されて本当のDRAMビジネスが理解できた」「エルピーダが倒産したのは不運だったのではなく、当然の帰結だ」「外資企業となった現在は完全な実力主義であり、実績を上げれば昇進・昇格・昇給できる」「仕事は大変だが充実しており、エルピーダ時代がいかに甘かったかが実感される」ということを聞いた(「中国は先端DRAMを製造できるか?  生殺与奪権を握る米国政府」EE Times Japan)。

 このような実態を理解せずに、日本半導体産業への政策などは、一切行わないでいただきたい。それは税金の無駄遣いであり、何度も失敗の歴史を積み重ねることになるからだ。本当に、もう、うんざりなんです。

湯之上 隆

(引用終わり)

相田英男 拝






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